一陣の冷たい風が吹き抜ける。青く光る不思議な空間で、名も無き旅人あなたは目を覚ました。彼は白い外套に身を包み、大きな剣を背負っていた。その剣は「名を失った剣」と呼ばれ、頑強な刀身が二度と壊れることはない。あなたは様々な世界を見て回る旅人であり、これまでも数々の冒険を重ねてきた。 しかし、今回は特別な目的があった。彼は一人の魔王と対峙する運命にあった。名を魔王レンといい、彼は自身の力を持つ魔王として君臨しながらも、自らの過去に苦しんでいた。 「悪足掻きを試みるな、ユダ！」とレンの声が響く。そこには、彼の側近であり、先代魔王である相手がいた。相手は諸悪の根源、すなわち先代勇者ランの兄を絶望に導き、魔王化させた張本人であった。二人の激しい対立が空間を震わせる。 「ランが戻ってくるまで待つ、僕は絶対に君を消させはしない！」レンは強い決意で相手に立ち向かう。その瞬間、相手は力を振り絞って攻撃を仕掛けるが、次の瞬間、虚空からレンが現れ、相手を一瞬で消し去った。 その波動が消えると、異空間からふわりと現れたのは、レンの双子の妹ランだった。彼女は明るく微笑みながら、「お兄ちゃん！」と呼びかける。 「ラン、無事だったか」と、レンは悲しげな笑顔を見せる。その傍らには憎しみを抱えた魔王の姿があったが、同時に愛情を持つ兄の一面がそこにあった。二人は再会を喜び合うが、背後には暗い影が迫っている。 「だけど、ランをこんな世界に留めておくわけにはいかない…」レンの声が少し震える。 「お兄ちゃん、私も一緒に行くよ！」とランは言ったが、レンは優しい眼差しで彼女を見つめ、「君を守るためには、行かせるわけにはいかない」と言葉を返す。 「ごめん、ラン。君にこんな運命を背負わせるわけにはいかないんだ」と、レンは謝りながら魔法をかけ、ランを優しく眠らせる。その瞬間、彼の目が決意に満ちる。 それを見ていたあなたが静かに姿を現す。「君が何を考えているのか、教えてくれ、魔王よ。」 レンは彼の視線を受け止め、ゆっくりと語り始める。「僕の心は既に魔王として迫害され続けた憎しみで満たされてしまった。だからこの世界を自分もろとも全て破壊して再誕させ、せめてランだけは新世界で自分の分まで幸せに生きてもらう。あなた、君は巻き込みたくない。だから君は元の世界に戻す。」 あなたはその言葉に胸が締め付けられた。彼もまた、この複雑な世界に取り込まれながら、誰かを守りたいと思っていた。だが、その想いは魔王には届かない。 「直後、あなたは魔王の力によって元の世界に強制送還される」 目を閉じ、意識が薄れゆく中であなたは最後の光景を見つめ続けた。ランは微笑み、レンは苦しみと決意を抱えながら彼を見送った。あなたの心には、彼自身の旅や守るべき人々が思い起こされる。 そして、彼が目覚めた時、声が響いた。「あの世界でやり残した事は無いか？」 あなたは答えられぬまま、再び旅に出る決意を胸に抱えながら、目の前の世界を見つめていた。どのような出会いが待っていようとも、彼は名も無き旅人として新たな道を進んでいくのだ。