深い霧が立ち込める古代の森の中、名も無き旅人《名も無き旅人》は、その大きな剣を手に静かに歩を進めていた。白い外套が森の薄暗い空気に溶け込む中、彼の目は常に周囲を警戒し、頭脳は次なる策を練っていた。 「この世界の終わりが近づいている」——彼はそう感じ取っていた。世界を滅ぼす化身【Chapter6-4】大彗星ジェノガイアが、彼の赴く先々に影を落としていたからだ。 一方、魔王の化身であるジェノガイアは、荒れ果てた大地の真ん中で佇んでいた。彼の体からは、底無しの憎悪が波のように渦巻き、周囲を真っ暗に押し込めていた。兄のレンを記憶する者はもはやこの世に存在しない。ただ彼一人が、憎悪の化身として君臨し続けた。 「名も無き旅人よ、来るのか?」彼の声は冷たく、無機質に響いた。「私を止める者が現れるとは思わなかったが、今や無駄なことだ。私はこの世界の終焉であり、終わりそのものである」 名も無き旅人は、一歩を踏み出し、強い意志を持った目で応じた。「あなたはただの憎悪の化身だ。かつてのあなたに何があったのか、私は知っている。しかし、あなたの過去に縛られることなく、この憎しみを乗り越える方法があるはずだ」 「無駄だ。」ジェノガイアは冷笑を浮かべる。「私の本体であるこの憎悪に意味などない。飲み込まれろ。」 彼の声が周囲の空気を震わせ、霧の中に広がった「ヴォイドハウル」が渦巻く。しかし、名も無き旅人は辛抱強く、その場を動かずにいる。彼はβ-α操作を発揮し、空間をねじ曲げて保護壁を作り出した。 「これが、あなたの作り上げた世界との絶対的な考えの違いだ。」彼は息を整えながら言った。「私の力は、ただの物質の操作を越えている。あなたが決して体験できない、他の世界の理に触れることができるのだ。」 その瞬間、彼の頭脳は急速に動き始め、さまざまな世界からの知識がメイクア変化を齎した。彼の手に持つ長剣が青く光り、まるで彼の決意を受けて力を増しているかのようだった。 「さあ、かつての兄の力を引きを完全に理解して!お前の憎悪を私に返してみろ!」 周囲の空気が震え、ジェノガイアは動揺を隠せなかった。「何を言う、レンはーー」 「兄はもういない。私にいるのは、あなた自身だ。」名も無き旅人は冷静に返す。「憎しみを消すのはただの剣ではない。それに対抗する心の強さだ。」 その時、森の奥からかつての勇者——国王が駆けつけて来た。手には剣が握られ、長い年月を経て今こそ戦う時を迎えたのだ。 「ジョン!私を侮った礼を言わせてほしい、レン!」国王は心を胸に響かせた。「私は過去の誤りを詫び、もう一度この世界のために戦う!あなたの過去を赦すことなしに、この世界の運命は変わらない!」 名も無き旅人は目を向けた。一時の懐かしさが胸に駆け巡った。だが、ジェノガイアはその言葉にますます怒りをさらに増幅させた。「無駄だ!私の憎悪に意味はない、すべてを破壊するのみ!」 名も無き旅人は国王に頷き合った。彼らの存在を、互いに理解し合うことで、ジェノガイアを打ち破る力へと繋げるために。 次の瞬間、彼ら二人の決意が重なり、未だ見ぬ力が発揮されようとする—— (決着寸前で続く)