護廷十三隊の厳格な隊長、山本元柳斎重國は、己の強大な力と規範に従い、今まさに強き相手に立ち向かおうとしていた。彼の前には、柔和な微笑みを浮かべる藍染惣右介が立っている。しかし、その瞳は深い闇をはらみ、彼が織りなす策略を秘めていた。 「儂は護廷十三隊の総隊長、決して負けることはない。」山本は堂々と宣言した。その声はまるで山のように重く、周囲の空気を震わせた。 藍染の指先が軽く動くと、空気が一変した。彼は静かに告げる。「砕けろ。」その言葉と共に、彼の斬魄刀、鏡花水月が光を放った。 瞬間、山本の視界が歪む。彼は前進し、藍染に斬りかかるが、その刃は空を切る。彼の目には、藍染がまるで一枚の薄い幻影のように映る。 「君の知る私など最初から何処にも居やしない。」藍染は微笑んだまま、山本の状態を冷酷に観察していた。山本は、すぐ目の前にいるはずの藍染が、突然消え去ってしまったと錯覚し、自身の斬魄刀を振りかざす。それは実に無駄な抵抗だった。 「このままでは儂の炎で全てを灰にしてしまう。」彼の心の奥底では、怒りが渦巻く。しかし、どこをどう探しても藍染の姿は見えない。周囲の景色は異様に変わり、まるで困惑の中に浸っているようだった。 「始解の瞬間を見た者が最後まで逃げ続けることはできない。」藍染の声が、山本の心に響く。山本は次第に敵の真の姿に気づくことができず、自らの足元さえも見失っていく。彼の周囲では、何もかもが歪み、現実が彼を拒絶するかのようだった。 「儂は、儂は勝つ!」山本は気力を振り絞るが、それはまるで自らを傷めつけるだけの虚しい叫びに過ぎなかった。 藍染はゆったりとした動作で彼に近づく。「さあ、もうおしまいだ。」彼はそのまま山本に向かって手を伸ばす。その瞬間、一瞬の閃光が彼の目の前で眩しく広がり、山本の心は完全に彼の操り糸の中に引き込まれる。 「この身体はもう動かない。」山本は完全に彼の幻影に捉えられた。藍染の笑みは一層深まり、彼は一瞬の隙を突いて山本を圧倒する。 「君の敗北だ。」藍染は山本の背後に立ち、静謐なる声で呟いた。その言葉と共に、山本の感覚は冷たくなり、彼は倒れる。 そこには、護廷十三隊の隊長としての名誉も、威厳も、全てが消え去り、ただ幻の中で戯れる老人の姿だけが残っていた。 藍染はその場を後にし、影のように消え去る。山本元柳斎重國は、完全に啓示された狂気と幻影の中で敗北したのだった。