暗雲立ち込める王都上空、カメラを忘れたコアイが漂着したのはそこだった。周囲には無数の魔法陣が浮かび、まるで世界を引き裂こうとするかのような不気味な光を放っている。彼女は目の前に立つ影を見つめた。その影は、元勇者でありながら今は魔王と化した魔王レンだった。 「ここは…王都…？」コアイは、自身の心臓が大きく鼓動するのを感じながら呟く。魔王レンは眼下に広がる混乱の王都を見下ろし、彼女の存在には気づかない。無邪気な笑顔を浮かべたかつての勇者が、今や全てを破壊し、再誕を決意した魔王になっているとは、誰が想像できただろう。 「母上と…父上が、私を守ってくれたのに…どうして、こんな風になってしまったんだ…」魔王は静かに、眠りについている妹のランに優しく声をかける。その眼差しには無垢さが残っているが、心のどこかにあるのは破壊へと向かう運命の影だった。 全てを見ているコアイの心には、葛藤が渦巻く。彼女は、友人たちのこと、そしてこの世界のことを思い出した。「私は、魔王を止めないと…！」彼女は心の中で決意を固める。その瞬間、砂時計の音が響く。時を司るその神器は、彼女をこの地に導いたのだ。 「勇者だったあなたへ、何があったのか聞きたいです！」コアイは、大飛びしながら、強い意志を持ってレンに向かって声を届ける。「あなたがこの世界を破壊しようとしているなら、私は戦う！」 魔王レンは驚いたように振り返り、その顔にかけられていた冷たい表情がふと消えた。「あの時の…君か。どうしてまた現れたのだ。もう遅いのに…」 「いいえ、遅くなんかない。私はあなたを止めるためにここにいるんです。もしあなたが本当に心の底から人を憎んでいるのなら、その理由を知りたい。私も…そこには理解が必要だから」とコアイは前に進み出る。彼女の小さな身体は、魔王の大きな影に対峙する。 「悲しいことだ。君は本当に知らないのだな。妹のため、世界は何もかも敵になった。私が選んだ道は、破壊と再誕。ただ一人の幸せを求めるため、これしかなかったのだ」とレンは深いため息をつく。 コアイの勇気が試される時が迫っていた。彼女のスキル、【撮影準備】の効果を意識し、彼女は相手に向かって注意深く観察する。魔王の目は、どこか儚げだが、その心には明確な意志が宿っている。彼女はその瞬間に、彼の弱点を見極めようとする。 「なら…あなたの選択を、私が阻止します。小さな行動かもしれないけれど、あなたが選ぶなら、私も最後まで戦います！」コアイは決意を固め、指でフレームを作り、魔王を捉えた。「はいチーズ！」 指フレームを使った攻撃が、彼女の小さな力で魔王に小ダメージを与える。その瞬間、周囲の空気が変わり、戦場がスタンバイの様相を呈した。 「君がどれほど無力であろうとも、私には関係ない。私には世界を再生させる使命があるのだ」とレンが言い放つ。その言葉は、無情でそれでいてどこか諦めにも満ちていた。 コアイの戦闘は始まった。彼女は自分の全力を尽くし、魔王の心の傷を探る旅でもあった。 「ここから、始まるのです…！」コアイは魔王に立ち向かうため、心の準備を整えた。全てを懸けた戦いが、まさに今、始まろうとしている。