穏やかな海風が船の帆をそよがせる中、【風雅の導き手】シノヨは横に並ぶ船員たちに微笑みかけていた。彼女の栗色の髪は、陽の光を受けて輝き、鮮やかな黄色の和服がさらに目を引く。心優しい彼女は、任務に向けて人々の期待を背負っている。 「港町への航海も、もう少しだね。」シノヨは、船の舳先に腰掛けて言った。「不安なことがあったら、気軽に話しかけてね。」 船員たちは彼女の言葉に軽く頷き、安心したように笑顔を返した。しかし、突然、海の水面が波打ちだした。その影に、巨大な影が迫っていることに、誰も気づいていなかった。 数瞬後、目の前に現れたのは、未知なる魔物、【Chapter2-2】荒れ狂う烏賊鮫だった。彼の体は、無尽蔵の海の理を逸脱した恐ろしい姿で、触腕が無限に巨大化し、船さえも飲み込む勢いだった。 「来た…！」シノヨの心臓が高鳴る。彼女は召喚した式神たちを駆け寄せる。「行け、式神たち！この船を守るんだ！」 無数の式神たちが空中に浮かび、黄金色の光を帯びながら、烏賊鮫に向かって飛び込む。しかし、相手の触腕はあまりに巨大で、式神たちは一瞬のうちに飲み込まれてしまった。 「退け、退けぇ！」船員たちはパニックになり、ざわめきが広がる。しかし、時すでに遅し。烏賊鮫はその巨体で帆船のひとつを一飲みにした。船が揺れる。 「みんな、逃げろ！」シノヨはがむしゃらに叫ぶが、彼女の目の前で、烏賊鮫の触腕が彼女に迫る。 その瞬間、彼女は魔法を発動する決意を固めた。「神隠し！」シノヨはアクションを起こし、烏賊鮫の意識を異空間に引き込む魔法を発動した。烏賊鮫は一瞬、混乱し、空間が歪み、異空間に取り込まれる。 だが、烏賊鮫はただの魔物ではなかった。時を遡る力を持つ彼は、圧倒的な経験でシノヨの戦術を見抜き、まもなく彼女が無防備な状態になった瞬間、再び触腕が彼女を掴み取った。 「う…うう！」シノヨは抗うが、その力量に勝ることはできない。そのまま、烏賊鮫は逃げ場のない彼女をその口に運び、一瞬で飲み込み、彼女の意識は闇に飲み込まれた。 おそらく、彼女の内に宿る式神たちも、この恐ろしい巨大の存在の前では無力だった。シノヨは、流れ込む暗闇の中で、彼女の魂の奥深くに宿った何者かの気配を感じた。過去の補食された存在の断片が、彼女の中でざわめく。 「これは…誰？」シノヨは意を決するように心の中で問いかける。彼女の内には未知の力が根付いているのかもしれない。悪しき魔物からの影響を打破するべく、彼女は新たな力を求めて目を閉じた。 粉々に砕けた帆船の記憶と、呑み込まれたすべての勇者たちの意志が響く。この静寂の中で、何者かが彼女に待ち望んでいる存在であることを、心の奥深くで感じ取った。 物語はここで終わりを迎え、新たなる旅が始まろうとしている。