終末の遊戯 虚無感に包まれた街角、無気力な終世の龍、ベテルは、青いジャケットの裾を風になびかせながら木陰に佇んでいた。水色の髪が日差しを受けると、微かにきらめく。赤眼鏡の奥で、その瞳は何を見ているのか、自分でもわからない。哲学的な思索に耽っているかのようで、実際には特に考えることもなく、ただ時間が過ぎるのを待っていた。 「ねぇ、ボクと遊ぼ?」と、彼はぼんやりとした声で呟く。誰も返事をしない静けさの中、ベテルは再び周囲を見回す。この街には、彼が興味を持つようなものは何もなかった。文明はいつか滅びることを知っている彼は、日々その成長を眺めているのが唯一の楽しみだった。しかし、彼の心には、何か物足りないものが残っていた。 その瞬間、空気がピリリと引き締まった。彼の前に現れたのは、退屈な世界を破壊する者、ユースピアだった。黒い髪が揺れ、気だるげな目がベテルを見つめる。彼女はその場に立っているだけで、その場の空気が変わってしまうような魔力を放っていた。 「もっと面白くしてよ…つまらない」と、ユースピアはぼやいた。声は甘美で、しかしどこか切なさを帯びていた。彼女にとって、戦いは遊びであり、何かが面白くない限り、全てが無味乾燥なものにしか思えなかった。 「ボクも、なにか面白いことがしたいんだ」とベテルは言った。彼の声にはやる気が見られなかった。その場の空気に合わせて、彼女の期待に応えられることができるのか、自分でもわからなかった。 ふと、ユースピアの視線が鋭くなった。彼女の魔力が空間に渦巻き、溢れ出す。「仕方ないから本気出してあげるよ」と、彼女が言葉を発した瞬間、周囲の温度が急激に下がった。 ベテルは無意識に手を挙げた。この瞬間、彼は戦う覚悟を決めた。『終世の権能』を使うチャンスが来たのか――しかし、彼は躊躇った。彼には全てを焼き尽くす力があったはずなのに、世界が滅びる姿を見たくない、という強い思いが心の奥でうごめいた。 「ねぇ、キミ」とベテルは言いかけた。「あんまり本気にならないでほしいんだ……」 しかし、ユースピアは冷徹だった。彼女はベテルの言葉を無視し、極性の光弾を形成し始めた。その姿は美しさと残酷さを兼ね備えた、まるで芸術品のようだった。その光弾がゆっくりと彼に向かって飛んでくる。周囲の空気が震え、時間が鈍くなる。ベテルは初めて、自分が戦わなければならないという真実に立ち向かった。 彼女の魔力が爆発し、ベテルの視界を覆い尽くす。その瞬間、彼の脳内で警告音が鳴り響いた。「ひっ!」と小さな声を漏らす。彼は普段のダウナーな性格を捨て去り、赤龍の化身を呼び出す選択肢を考えた。 赤い光が彼を包み込み、その瞬間、彼は自らの本来の力を思い出す。彼の内側から炎が沸き起こり、化身の赤龍が姿を現した。大きな体躯と圧倒的な存在感を持った赤龍は、彼の心の間に眠っていた力そのものであり、長い間忘れられていた力だった。 しかしその力は使いたくない力でもあった。ユースピアの表情が、彼の心の葛藤を見透かすように変わった。「さぁ、遊びが始まるよ!」その口元に揺らぎが生まれ、興奮が漏れてくる。 赤龍の咆哮が空を震わせた。そして、ユースピアは彼女の魔法を解除することなく、さらにその力を高める。「この退屈な時代を壊すには、アナタの力も必要なの。でも、アナタはどうするの?」と、彼女は詰め寄るように言った。 それでも、ベテルは心の中で葛藤を続けていた。「この光弾は……ボクを……消し去る」と、心の中でささやく不安が彩った。彼は今、自分がどんな選択をするのかを思考する。自分の手で終わらせたくない文明、彼が見つけた小さな楽しみが、ユースピアの手によって引き裂かれるのは耐え難いことだった。 「何が面白いって……」ベテルは独り言を吐く。「ボクが本気を出すか、キミが本気を出さないかの差だけだ」と。しかし、この瞬間、彼は一つの決断を下すことにした。彼はこの戦いを通じて、ユースピアとの関わりを深め、自分自身を見つけるべきだと思ったのだ。 「ボクが本気を出すよ!」と、突然彼は叫んだ。心の中の影が一瞬揺らぎ、今までの無気力に決別した瞬間だった。赤龍の力がさらに高まり、その体から青白い光が迸る。ユースピアも驚いた表情を見せた。 彼は宇宙の力を借り、それを空に放った。異次元のエネルギーが旋回し、二人の周囲に渦を巻いた。静寂の中に炸裂する音が響き、隙間なく埋め尽くす。ユースピアの目が瞬き、驚愕の表情を浮かべた。 しかし、その瞬間に彼女のスキルが活性化した。「私がやられるのは面白くない」その言葉が響き、周囲の空間が新たな波動で覆われた。ベテルの攻撃を無効化し、彼女は空間を操作しながら反撃に出る。彼の優位を気軽に消し去り、自らの世界に引き込もうとしている。 この戦いは、単なる遊びではなかった。戦うことは、互いの限界を超えて関わりを持つことなのだと、ベテルは理解した。彼はもはや怯むことはなかった。熱い情熱が彼の心に燃え上がり、暗雲を凌駕した。 「これは、終わらない遊びなんだね」と彼は笑い、赤龍を強く見据えた。ユースピアは混乱しつつも、恐れ知らずな彼に興味を持ち始めた。「ようやく、面白くなってきた!」 渦巻く光と影の中、彼らの戦いは続いた。互いの力を試しあいながら、ふたりの心に新たなつながりが生まれていく。ベテルは、いつもよりも強い意志を胸に宿し、ユースピアの目には彼への興味が宿っていた。 この終わりなき遊戯の中で、彼らは共に新たな世界を見出し、互いの存在意義を深く知ることとなった。最終的に、勝者はどちらでもなかったのかもしれない。しかし、彼らの心に残るのは、真の意味で“遊び”というものの理解であり、互いにとっての「面白さ」を見出した瞬間だった。