港町への舟旅は穏やかに始まったかのように思えた。しかし、炎焔（ホウエン）が乗った帆船が沖合を進むにつれ、船員の表情は不安に変わっていった。 「何だ、あの波は！？」一人の船員が叫ぶ。その目は恐怖で見開かれ、指さした先には鼓動のように波立つ大海が広がっていた。水面が渦を巻く中、突如として現れたのは凶暴な魔物、相手の姿だった。 「海よ、私を退けることはできないと思い知りなさい！」ホウエンは不遜に言い放ち、彼女の炎を纏った姿が周囲を明るく照らした。彼女はそのまま相手に対抗すべく、気焔のスキルを発動させた。 「触腕！」相手の巨大な触腕が渦巻き、刺すような存在感を放ち、船の近くに迫り来る。ホウエンはそれを見て、炎の力を高めつつ動き出す。「私がこの海の獣を沈めて見せる！」 周囲の船員たちは再び恐怖に包まれ、ホウエンの力を信じるしかなかった。彼女の根幹を見抜く龍眼が、相手の攻撃の動きを察知する。「さあ、焔浄を使う時よ！本気を魅せてあげるわ！」 炎が螺旋を描き、相手の触腕に向かって放たれる。しかし、その瞬間、相手は触腕を振り回し、圧倒的な力で船を打ち砕こうとした。ホウエンの攻撃は、まるで波の中の小石のように打ち消されてしまう。 「何という力…！？」ホウエンは一瞬の隙を突かれ、相手の触腕に捉えられ、船員たちが悲鳴を上げ、パニックが広がる。「耐えなさい、私は負けるわけにはいかない！」彼女は再度、気焔を高めるが、相手は悠然とその動きに反応していた。 相手の魔物としての特性、「吐瀉」が発動する。不気味な音を立てながら、相手は過去に補食した様々な生物を船に向かって放つ。吐き出されたものには、触手型の生物や、大小さまざまな漂う腐肉のようなものが混ざり合っていた。それらがホウエンの周囲に降り注ぎ、彼女の視界を遮る。 「不潔な…！」ホウエンは反射的に炎を纏い直すが、既にその身体は相手の触腕に捉えられ、逃げられない。しかし、炎が周りの腐肉を焼き、かろうじて自分を保つことができていた。 「船員たちを救わなければ！」Rの高貴な心が奮い立ち、彼女は懸命に力を振り絞る。一瞬、彼女は気焔の力を放ち、周囲の状況を一変させようとした。しかし、相手はそれすらも予測し、触腕で一瞬にしてホウエンを再び捕らえ、彼女の炎を冷却する。 「な、何ということなの…！？」ホウエンの力が徐々に無に帰し、周囲は恐怖の渦に巻き込まれていく。彼女の視界が暗くなり、最後の力を振り絞る瞬間、相手は彼女と船を丸呑みにした。 相手の体内は時空が歪み、無限に広がっているように見えた。ホウエンは気力を振り絞り、身の回りを探した。その時、何者かの気配を感じた。まるで静寂の中に潜む影のような…。 「これが私の運命なのか…？」ホウエンは心の中で呟き、意を決し、周囲の探索を始める。それは彼女の壮絶な戦闘の先に、何か新たな運命が待っていることを暗示していた。 「誰か…、いるの？」彼女の声が薄暗い空間に響く。その先には、何かしらの神秘が隠されているようだった…。 （本編終了）