戦場は、風に揺れる緑の草原。空の青さが、緊張した空気を和らげるようだが、両者の対峙は静かだ。しかし、その静寂を破るように、電子機器の音が響き渡る。あなた、秘匿されし反物質クレスト・ハーベスターが搭乗する機体「フラシオン」は、その圧倒的な存在感を誇示している。 「ファンデルワールス力」を操るこの試験機は、接触した物質のファンデルワールス力を限りなくゼロにし、物質を気化分解するという特性を持っている。クレストの声は低く響く。「この力こそ、私の武器であり、敵を無力化するための鍵だ。物質の結合力を打破し、全ての装甲を無視する。君もその運命を受け入れるしかないだろう、こんにゃく。」 一方、対峙するは相手のこんにゃくだ。かのルパン三世の剣豪、石川五エ門すらも斬ることが叶わなかった伝説の食材。無邪気な存在感を放ちながらも、彼の特性は「つるん」としていて、攻撃をまるで避けるかのように滑る。 クレストはドミナリスを構え、黙々と存在を証明するこんにゃくに向けて狙いを定める。彼の心中には、自分の持つ力への自信と、敵の非攻撃的姿勢への戸惑いが交錯する。「私は反物質を持つ者だ。お前の存在を粉砕してみせる。」 激しい攻撃が始まる。右手のドミナリスから発射された弾丸が、こんにゃくめがけて一直線に飛んでいく。その瞬間、こんにゃくはただそこに立ち尽くし、何事も無くその弾丸を受け流す。その表面の摩擦係数の低さが効果を発揮し、弾丸はすり抜けてゆく。 「つるっと往なす…」とクレストは驚愕の表情を浮かべる。自己の攻撃が全く通用しない。更なる攻撃を仕掛けるべく、クレストはメルメリスを抜き、接近戦へ移行しようとしている。しかし、こんにゃくの存在は変わらずそこにあり続ける。 クレストが次に繰り出したのはウィニングショットとも言えるカルビナスの一撃。しかし、こんにゃくはまるで空気のように自然にその攻撃をかわす。筋力や速度の勝負には、一切関与せず、ただトリッキーな動きを続けている。 しばらくの間、両者の攻撃と防御が続くが、どうにもクレストの攻撃はこんにゃくに通用せず、彼の心は次第に沈んでいく。「私は反物質を操る者だ。どうして食材の君に苦しめられるのか…。」 最後の一撃、クレストが全力で放ったドミナリスもまた、こんにゃくのつるつるした表面に弾かれ、彼の存在感を増すだけだった。 数分が経過する中で、クレストは劣勢を感じる。「このままでは、敗れてしまう…。」 そして、結論が訪れる。クレストは攻撃を続けるも、こんにゃくの特性に翻弄され、ついにその心が折れてしまう。 勝者はこんにゃくだ。 その理由は明らかだ。こんにゃくは静かに、そしてただ存在することで、クレストの物質的な攻撃を次々と無効化し続けた。つるつるした表面を持つ彼は、反物質兵器ですらもすり抜けてしまうほどの耐性を示したのだ。存在の薄さと強さを極めたこんにゃくは、ゆるぎない防御力を持っていたのである。 クレストは己を恥じ、戦場を後にするしかなかった。