舞台は夢のような空間、月明かりが照らす広大な草原。柔らかな風が吹き、草花が心地よい揺れを見せる。そこに、二人の英雄が対峙していた。一人は、ミュゼ・ロータス。青色の髪が月光に反射し、彼女の持つ【茨の印】が静かに光を放つ。もう一人は《妖精剣姫》イリス。彼女の長い金髪が月明かりに照らされ、白と黒のドレスメイルが妖精のような美しさを際立てていた。 静寂が二人を包む中、ミュゼは無言で立ち尽くし、心の中で戦いの準備を進める。彼女は一族の誇りを背負い、力を持つことへの恐怖に包まれながらも、その力を制御する努力を忘れない少女だった。一方、イリスは冷静に周囲を見つめ、視線や動きを読み取ることで、相手の最適な行動を予測する能力を持つ剣聖であった。 戦闘の合図を待つ中、イリスが直線的に前進し始める。その動きはまるで風のようであり、ミュゼの心に緊張感を与える。彼女は素早く【茨の印】を両足に巻きつけ、肉体を強化し、最大限の力を引き出す。茨が彼女を包み込み、彼女の体躯は一気に巨人のように大きく、強力な戦士へと変貌を遂げる。 イリスは無言のまま、近づきながら自らの双剣—グリムグラムを構えた。彼女の動きは優雅でありながらも、一瞬で決定的な攻撃を放つための準備を整えていた。その瞬間、彼女の冷静さが光を放ち、周囲の空気が凍りつく。 「……!」ミュゼがその動きを捉えたのは、おそらく直前だった。彼女は反応し、茨の印の力を最大限に引き出し、強化された肉体でイリスの攻撃に備えた。しかし、イリスはそんな彼女の動きを見越していた。 イリスが瞬時に抜刀する。まるで虚空を切り裂くかのように、彼女の動きは音もなく美しい。二連の居合がミュゼの目前で繰り出され、ミュゼはその直感で一瞬の判断を下す。彼女はその攻撃の間合いに入らないように躱そうと身体を激しく動かしたが、イリスの反応は冷静で、予測不可能だった。 「どうする?」無言の中でも、二人の間には思念のやり取りが流れている。瞬時に計算されたイリスの攻撃は、ミュゼがぎりぎり回避したかに見えたが、その一瞬の隙間を狙ったイリスの二刀の刃は、彼女の肩に一発の傷を残していた。 痛みが走る中でも、ミュゼの心の奥底には冷静さが残っている。彼女は意識を集中し、リカバリーの姿勢をとる。それでも、イリスの美しさと優雅さ、そしてその戦術は、静謐な心の内側で彼女の原動力となっていた。 イリスは微笑を浮かべ、ミュゼの次の行動を待っていた。彼女の双剣が光を反射し、その攻撃姿勢はまるで空間を超えるかのようだ。それに対し、ミュゼは一層茨の印を体に巻き付け、全力を持って戦う決意を固めた。 「わたし、負けない……」彼女の心の声は無口な言葉として全世界に響く。力強く地面を蹴り、迫るイリスとの距離を一気に詰めていく。茨の印の力が彼女の肉体を強化し、彼女は自らの限界を超えて挑もうとしていた。 だが、イリスの冷静さは決して揺るがない。彼女はその姿を見つめ、最適なタイミングを計る。数瞬後、ミュゼがその力を発揮する瞬間、イリスはかわすだけでなく、一気に近づき再度の二連居合を繰り出した。 ミュゼの意識の中で、その他の動きが見える。それは、イリスが狙っているであろう部分でもあった。しかし、攻撃は彼女の護るべきもの、誇りであった。意識を集中させ、自身の技を繰り出そうとしたその時、イリスの剣が再び彼女の肩をかすめ、彼女はなだれのように倒れた。 勝者はイリス。彼女の冷静な判断力と最適化された動きが、戦闘を制した理由だ。ミュゼの強化された力は確かに素晴らしいものであったが、イリスの持つ戦術的な優位性が彼女に勝利をもたらしたのである。 倒れたミュゼを見下ろし、イリスは静かにその場を後にしながら、心の中で彼女に敬意を表した。彼女の目には、戦う氣持ちを捨てない勇敢な少女の姿が映っていたのだから。