ルチア=ユークリウスは、黒マントを翻しながらリバース王国の街を歩いていた。灰色の髪が風に揺れ、茈の目が周囲を鋭く見つめる。彼女の心は狂気と憎悪、嫉妬で渦巻いていた。人々の幸せそうな姿が目に映るたび、心の奥底から湧き上がる不快感が抑えられなくなる。 「幸せだなんて、許せない…!」 彼女の中で怒りが燃え上がる。彼女は不死の存在であり、他者の喜びを許すことができない存在だった。運命に背くこともできぬほどの呪縛を抱え、彼女は次のターゲットを探し求めていた。 そのとき、彼女の目に飛び込んできたのが、冒険者ギルド・ヴァルラージの受付だった。温かみのある建物の内部からは、明るい声が響いていた。中にいるのは、常に笑顔を絶やさない受付嬢のメア。その姿にルチアの憎悪は一層募る。彼女の無邪気な笑顔が、ルチアの羨望と嫉妬をさらに掻き立てたのだ。 メアはルチアに目を向け、柔らかな声で言った。「ランク測定をご希望ですか?」その言葉は、彼女の心にさらに火をつけた。ルチアは、メアの幸せそうな表情を見るだけで、心の中の憎悪が急速に蓄積していくのを感じた。 ルチアは静かに近づき、目を細め、メアの心を覗こうとした。彼女のスキル【審問】が発動し、メアの心に潜り込む。過去の幸福、喜びの形跡を探し、見つけた瞬間、ルチアの心に猛烈な嫉妬が湧き上がった。 「この微笑み…この幸せは許せないぃ!!」 彼女は思わず叫びそうになるのを必死に抑えた。数々の幸せがメアの心の中に見える。彼女は、幸せの数だけメアの能力を九割低下させてやると心に誓った。ルチアの憎悪が加速し、彼女はメアの運命を握る者として選んだ。 「私の命を十字架に架けて、あんたの処刑を確定させる!」 ルチアは高らかに宣言し、メアの目が驚きに満ちているのを見た。メアは、その困惑した表情のまま、ざわざわとした冒険者ギルド内の視線を集める。 しかし、メアは冷静だった。彼女は瞬時に自らのスキル《観察》を発動し、ルチアを分析する。彼女の魔力量、経歴、戦闘能力、そのすべてがデータとなってメアの中に流れ込んできた。メアは心の中でその情報を整理する。ルチアの存在は、明らかにS級の異端者だった。 「あなた、すごい力をお持ちですね。ですが、どんなに強くても、ここでは礼儀を持って接するべきです。」メアは自分の恐れを抱えながらも、毅然とした態度で言った。 ルチアの攻撃力は29、防御力は10。魔力は高いが、それ以上に彼女の狂気的な性格は彼女の決定的な弱点でもある。メアは心の中で計算し、冷静に対応することに決めた。 「ここに来るのなら、私たちの規則に従ってください。お互いに冷静になれるチャンスです。」 だが、ルチアの心はもはや冷静ではなかった。抑えられない憎悪が彼女の中でふくれあがり、メアを処刑することが運命であると直感した。 「私は処刑する。それが私の役目だから!」 そこで、ルチアは自らの十字架を取り出し、メアに向けて振りかざす。しかし、その瞬間、メアの笑顔は崩れず、自らの身を守るための防御スキルを発動させ、周囲がざわめく中で、二人の運命は交錯していく。果たして、この戦いで勝つのはどちらなのか。運命が織りなす結末は、まだ誰にもわからない。