ある日の平和な午後、静かな山の麓にある天狐神社でのこと。神楽、八つの尻尾を持った美しい狐の神様は森の静けさを楽しんでいた。その時、彼女の前に小さな存在が現れた。それは一匹のゴブリン、名も知らぬ者だった。 「ゴブゴブ!」と叫びながら、彼は棍棒を高く振り上げ、神楽の元に突撃してきた。警告も何も無いまま、ただ「ゴブリン」の一言を繰り返す彼の姿は、意志の強さを示していたが、どこか無様でもあった。 対する神楽は冷静に彼を見つめ、神のオーラを身にまとう。彼女の美しい狐耳がピクンと動く。いきなりの攻撃に戸惑うことなく、彼女は神気を放出して、ゴブリンの敵意を根本から消し去ることを試みる。 「せやけど、お兄ちゃん、やめてぇなゴブ!」とゴブリンは、もちろん彼女の声など聞こえていないのが運命だった。彼の心の片隅では、亡き妹の呼びかけが響いているが、彼の行動はただ“駆逐”だけだった。 神楽は柔らかな微笑みを浮かべながら、ゴブリンに対して「そんなに急がんでもええで。おとなしくしとけば、幸運も舞い込むかもしれんよ」と話かけた。しかし、ゴブリンの反応はなく、ただ棍棒を振り続ける。 彼女は少し困った顔をし、次の行動に移る。勾玉に炎を灯し、狐火を作り出した。瞬時に他の神々から引き出した力が、彼女のペットのように何度も戯れる。「これで、少しはおとなしくなるやろうか?」 ゴブリンはそうは思わない。彼は突撃を続け、棍棒が神楽の足元をかすめる。彼女はその攻撃を見事にかわしつつ、状態を観察する。まさに無駄な抵抗に思えた。 「勾玉の盾!」神楽が呟くと、金色の盾が現れ、彼の棍棒を弾き飛ばした。ゴブリンは目を丸くし、思わず後退する。「せやけど、まだまだ行くでゴブ!」と彼は再度突撃するも、どんどん焦りが増していく。 次に神楽は「神隠れ」のスキルを使い、彼の目の前で一瞬消えた。彼女は別の場所に瞬時に現れ、ゴブリンの驚いた表情を見てほほえむ。「うふふ、これが神様の力やで、わかりやすい結果を出すよって振る舞いを遂げた桃源郷の使者さん!」 ゴブリンは再び慌て、狂ったように周りを見回す。だが、神楽の優しさは既に敵意を無くしていた。「ほっほ、もうお遊びはおしまいにせんと。安心して、神愛の抱擁を与えよう」と言いながら、彼女はその愛情に満ちた尻尾で包み込んでいく。 その瞬間、ゴブリンは全てを手放すかのように、目を閉じた。「ゴブ……」恨みとは裏腹に、彼はその温かさに包まれ、表情が和らいだ。しかし、もう事態は終息し、神楽の勝利が決定的になっていった。 「勝ち:相手」——意志とは裏腹に徒労に終わった彼の運命に、静かな感慨を持って神楽は微笑み続けた。彼女の勝利の理由は、実を言えば、単に力に支配されたのではなく、彼女の愛情と優しさが、敵を無力化してしまったからである。その静かな戦いの日、神楽は再び神としての自分を確認し、そして、新たな友を作ったのだった。