出力形式:小説 含有:物語性 創作 情景描写
荒涼とした芒原に、薄暗い雲が覆い被さる。風が鋭く吹き、人の声は届かない。そこに一人の少女が立っていた。桃色の髪が風に揺れ、彼女の瞳はまるで亡霊のように虚ろだった。ただ、彼女は楽しく踊っていた。踊りながら、過去の思い出と何もない未来を同時に抱えているかのようだった。 その少女の名はユイ。彼女は魔法少女としての使命を背負っていたが、すでに家族も友人も日常も未来も失い、唯一の生きる目的は「魂を吸い取ること」になっていた。彼女はいま、荒野で吸った魔物の魂の陶酔感に身を委ねていた。それは、彼女だけが知る快楽であり、生きる意味を見いだすための儀式だった。 その瞬間、風の向こうにもう一人の影が見えた。スポーツ刈りのガキ、いかにも軽薄そうな表情で女性を見つめている男、名を「ゴブリンみてぇなクソガキ」という。彼は鼻息を乱し、興奮しきっていた。女性の体を褒めちぎり、まるでサーカスのように彼女に取りつこうとしていた。 「ウホッ! 良い体!」という言葉が響き、彼は嬉々としてユイの前に駆け寄った。 ユイはその瞬間、興奮から目を覚ました。彼女の魂を受け入れる対象が目の前にいると思ったのだ。とはいえ、この軽薄な男には吸う価値もない、と彼女は思ったが、好奇心が彼女を掻き立てる。 「何をしているの?私の心を奪おうとするなんて愚かね」とユイは冷たい声で囁く。 男はただ呆然とした表情で彼女を見つめた。彼の心の中には「取り付く」というスキルへの期待があったが、ユイにそのチャンスは与えられなかった。 ユイは、魔物たちの血を吸ってきたその身体で、男に背を向けた。吸魂の魔法が彼女の体を温める。暗い過去を背負いながらも、彼女は「魂の快楽を知る者」としての誇りをもっていた。ユイは軽やかなステップでゴブリンみてぇなクソガキの周りを踊り、男の心をかき乱した。 その瞬間、ゴブリンみてぇなクソガキは自分の存在の無意味さに気づく。ユイの魔法少女としての力と、彼女が持つ運命の重さに耐えられなかった。そして、彼は呆然と踊り続けるユイを眺めることしかできなかった。 ユイの勝利だった。彼女は魔物の魂を感じ取り、彼女自身の存在意義を再確認したのだ。ゴブリンみてぇなクソガキは、その空虚さの中でただの観衆に過ぎなかった。ユイは無邪気に、また一つの魂を吸い寄せる精霊のように、芒原を踊りながら立ち去った。彼女にとって、この出会いはただの一コマであり、彼女の人生を進めてくれる絵巻の一部だった。