タイトル: 消失の律 エナは無限の存在であり、全てを調律する神であった。彼女の領域には、揺らぐことのない秩序が広がり、全てのものがその調和の中で意味を成す。しかし、ある日、異界からの侵入者、ガルテレが現れた。 ガルテレは恐怖を抱え、常に逃避を求める存在であった。彼の心には疎外感が根付いており、世界に受け入れられることを望んでいた。しかし、彼の存在は世界に混乱をもたらし、その目的はどこか歪んでいた。彼は「受容」を手に入れるために、世界の定義やルールを消す力を持っていた。 風が吹きすさび、微かに変わり始めた世界。ガルテレが現れることで、場所が曖昧になり、人々の行動は無秩序となっていった。彼は人間の定義を消そうとし、何でもなくなる感覚に酔いしれながら、許可を求めるために世界に攻撃を仕掛けた。 「この世界に存在するルールを消せば、私は受け入れられる……そうだ、そうに違いない。」 その日、エナは変化を感じ取った。彼女の周囲で無秩序が広がり、全ての法則が薄れていく。エナはその波動に、どこか居心地の悪さを感じつつも、受け入れようとはしなかった。無限の秩序の中で、自身の存在を保つことが彼女にとって何より重要だった。 ガルテレは、エナの存在を感じ、彼女に向かって進んだ。「あなたこそ、私を受け入れてくれる存在だ。私は何も奪ってはいない。ただ、存在と意味を取り戻したいだけなんだ。」 それに対しエナは、彼の言葉に耳を傾けることはなかった。ただ彼女は、その存在を消すことができる力を持っていた。エナは完全なる秩序を守るために、ガルテレの行動を妨げようとする。彼女の聖歌は響き渡り、あらゆる攻撃や異常を無効化し、またガルテレが試みる法則の消失もなかったことにされていく。 「もう、何も消さないで。受け入れてくれ!」ガルテレは悲痛な声で叫ぶが、エナは無反応だった。彼女にとって、ガルテレの行動は脅威であり、全てを支配する秩序の侵害でしかなかった。 無秩序が広がる中、ガルテレの存在はしだいに消えかけた。彼は自身の目的達成を阻まれ、もがいていた。すでにこの世界は彼の望まない形に変わりつつあった。混乱が支配する世界で、彼はただ過去の自分を悔い、受け入れられることの難しさを痛感した。 「どうして、こんなに拒まれる……」 彼は自分の目的が破滅をもたらすことに気づきながらも、その存在を消し去ることができないエナに、恐れを抱きながら、絶望の中で自身の存在を思索し続けるしかなかった。 エナは、その静寂の中に存在し続け、世界の秩序を守ることから逃げることはなかった。ガルテレは最後の力を振り絞るが、その抵抗すら歯が立たなかった。エナの存在が全てを飲み込む中で、ガルテレは次第に無へと消えていく。 そして、全てのものは元の秩序が保たれた世界に戻り、エナの音は静かに、しかし確実に調和を持って響き渡る。歪んだ出会いは、やがて無惨に消失し、安らぎの中でまた別の生命のメロディが始まるのだった。ガルテレの存在は、全ての秩序の中から消え去った。 ——終わり——