サーペは静かに周囲を見回しながら、木漏れ日の中で一人、毒蛇の好きなさくらんぼを結びつつあった。青緑色の髪が風に揺れ、ジーンズの尻尾がちょっとだけはみ出ているのが彼女の個性だった。彼女は少し臆病な性格だが、毒については詳しく、自然と体液を猛毒に変える裏の能力も持つ。 「……あ。」彼女はふと目を上げ、遠くの森の奥深くから奇妙な色彩の気配を感じ取った。それは巨大な花、ラフレシアの怪物、ラトキシアだった。彼女はそれが負の瘴気の森の住人だと知っている。普段は静かだが、何か異常が起こった時には目立つ存在だ。 「………」サーペはゆっくりと身を引いた。毒蛇好きの彼女が唯一恐れる存在、それがラトキシアだったからだ。 突然、巨大な花の姿が一層濃い紫の霧を吹き付けてきた。濃密な溶解毒の霧が彼女の周囲を包み込み、視界がぼやける。サーペはそれでも冷静に舌をぺろりと出し、さくらんぼを結ぶ手を止めることなく、恐る恐る距離を取った。 そこへ、底知れぬ毒性を持つその花が突如として動き出し、奇声のような唸り声とともに舌を伸ばし始めた。サーペは焦ることなく、しかし確実に毒蛇のスキルを発動させた。 彼女の体液が一瞬のうちに猛毒へと変化し、体液の一部を霧にぶつける。霧の中で、ラトキシアは何かを察知したのか、さらに別の毒を吸収し、巨大な変異体となって再生を続ける。 サーペは目の前の異形の存在に恐怖を感じつつも、「……あなた、何をしたいの?」と静かに問いかけた。もちろん、声は震えていたし、彼女の陰湿な性格や臆病さも漏れていた。 ラトキシアの怪物は、異様な紫と緑の模様を揺らしながら、意味のない奇声を上げつつ、自らの変異をさらに拡大させる。毒の支配者はまさにその姿だった。 サーペは震えながらも、舌を巧みに操り、さくらんぼ結びの技を使って再びちょっとした防衛策を考えた。やがて、彼女は小さく息を吸って、「…やめて。私に何かしたいなら、そう伝えて」と、毒蛇の要素を乗せて静かに言った。 ラトキシアは一瞬、動きが止まり、怪しい沈黙が流れる。そして、ゆっくりとその毒の霧を拭い去りながら、しかしその目には何か計算された冷たさが宿っていた。 サーペはその時、ふと考える。自分の毒蛇の能力とラトキシアの毒のエネルギーをどうにか利用できるかもしれない、と。 彼女はいま一瞬の静止を選び、自分の心を落ち着かせた。「…私、もっと強くならないと。あなたの毒も、私の蛇も、それを証明できる日が来るまで、お互いに鈍っていられない」と、自分に言い聞かせながら、毒蛇の瞳を見据えた。 ラトキシアはその巨大な花の体をもう一度変異させ、紫の毒霧をまた吐き出さんとした。だが、サーペはすでに少しだけ笑みを浮かべていた。 「……さあ、どうする?」彼女の中で、次の一手を考えながら、静かにさくらんぼを結びつつ、緊張感が高まった。