静寂な空間を漂うように、現霓モノは陽の光を受けた虹石のペンダントを揺らしながら、冷静に周囲の状況を観察していた。彼の虹眼はまるで、さまざまな色を飲み込んでいくかのように輝いている。一歩踏み出すと、彼の機械で構成された四肢がしなやかに動く。 そこに、テュフォンが現れた。彼女は幼い外見でありながら、その存在感は圧倒的だった。濃い緑の髪が風に揺れ、赤い頬は陽の光を反射して輝いていた。彼女の無邪気な笑顔が、モノの冷静な心を一瞬かき乱す。 「こんにちは、モノくん!今日はどうする?遊びたい気分?」と、テュフォンは彼に向かって明るい声で訊ねた。 「僕は戦闘を避けたいから、遊ぶのはちょっと…」と、モノは言った。彼は思わず視線を背ける。彼女の無邪気さは魅力的だったが、その裏に潜む危険を本能的に感じ取っていた。 「えー、つまんない!もっと楽しいことをしようよ!」と、テュフォンは頬を膨らませて反論した。彼女は一瞬眉を潜めたが、またすぐに無邪気な笑顔に戻った。「ちょっとだけ、裁いてみる?それとも、他の遊びがあるのかな?」 モノは息を飲む。テュフォンの「裁く」という言葉は、彼にとって恐ろしい意味を持っていた。彼の心の内に潜む罪の意識に触れたら、彼女の権能が発動してしまう。彼は冷静さを保つため、しっかりと自己を見つめ直す。 「僕には、罪悪感はない」と、彼は言葉を絞り出した。「だから、触れないでほしい。」 「本当に?それなら、もっと面白いぼくを見てみたいな。」テュフォンは近づき、彼の顔を覗き込んだ。彼女の瞳には、その純粋さの中に潜む狂気がチラリと見えた。 「僕の切り札を使う訳にはいかない。戦いたくないんだ、テュフォン。」モノは心を強く持とうとした。彼の言葉には厚い決意が込められていた。 「でも…」とテュフォンは残念そうに言った。「楽しくないことは嫌いだし、遊ぶのが一番だと思うの!」彼女の声には明るさがあったが、その声色の裏には何か不穏な気配が漂っていた。 テュフォンが無邪気に伸ばした手がモノの黒いパーカーに触れ、その瞬間、彼の心に一瞬の恐怖が走った。「やめて…!」 そこに、モノの虹石がひかり、彼の身体を守るように強力な衝撃波が発せられた。「……虹霓!」彼の心の底からの叫びが響く。空間が歪み、時が止まる。 テュフォンはその瞬間、目の前にいたモノの姿が消えていくのを感じた。「あれ?何してるの、モノくん?」彼女は首をかしげながらも、悪戯っぽい笑顔を浮かべていた。 「僕は戦闘を避ける。今の状況が続く限り、戦わなくても済む方法を見つけるんだ。」モノは心に強く誓った。永遠に不滅なのだと、彼は自分に言い聞かせる。 テュフォンはモノの行動を見て、彼の意志を読み取ろうとするが、「その勇気、面白いかも。私が裁く相手は、モノくんじゃなくなるかもね!」と笑顔で言った。彼女の言葉は、再び彼の心を強く揺さぶる。 「テュフォン、君はいつでも裁くことができる。でも、僕は君の意志に意思を持つ存在なんだ。」モノは彼女を見据え、強い視線を返した。 その瞬間、二人の間に緊張が生まれる。モノの切り札は強力だが、使用することは彼にとって致命的な代償が伴う。しかし、彼は知っていた。心に宿る「色」が吸収され、彼自身が強化されるのだと。 「遊びに来るなら、僕の方法で遊ぼう。戦うのは最後の手段だ。」モノはそう宣言し、彼の虹眼はさらに輝き続けた。彼の意思を見逃さず、テュフォンは意味深に微笑む。 「それじゃ、どうなるのか楽しみだな。私の遊びは始まったばかりだから!」テュフォンは陽気な声で応えたが、その裏には計り知れない緊張感が漂っていた。 二人は、次の行動を模索しながら、時空の狭間で出逢った運命の罠に慇懃に身を任せる。