血の凍る戦い 薄暗い空間で向かい合う、護廷十三隊の隊長・日番谷冬獅郎と、星十字騎士団の聖章騎士エス・ノト。冷たい空気が二人の間に流れ、緊張が高まる。日番谷の翡翠色の目は相手を睨み、先手を打とうと刀の柄を握る。一方、エス・ノトは不気味なマスク越しに空虚な笑みを浮かべていた。 「お前の恐怖は、俺には通じねえ」と日番谷は静かに言葉を発する。彼の冷静さは、周囲の冷気に溶け込んでいく。 エス・ノトは薄く笑った。「君ヌ恐怖ハ、吾々ガ示スもノ。見ルガイイ。」言葉と共に、彼は聖文字“F”を構えた。鋭い氷柱のような神聖滅矢が、日番谷の胸へと狙いを定める。 突然、無数の氷柱が彼に向かって放たれた。身体が反応する前に、日番谷は危機感を覚え、瞬時に氷輪丸を解放した。「霜天に坐せ、氷輪丸!」氷の龍が生まれ、無数の風と共に氷柱を迎え撃った。 冷たくも美しいその龍は、攻撃を受け流し、エス・ノトの周囲に氷を纏わせた。しかし、日番谷は気づく。「お前の目、何かが変わった…?」 エス・ノトはその表情を隠しながら、突然に陰りを帯びた。「コレガ恐怖ダ。」彼は滅却師完聖体【神の怯え】へと変身した。周囲に無数の眼の付いた肉の幕が現れ、日番谷を囲い込む。 その瞬間、目が合った。日番谷は凍りつくような恐怖に包まれた。彼の心に直接突き刺さる恐怖は、ただの恐怖ではなかった。全てを奪い去るような、底知れない深淵からやってくる鼓動だった。彼の冷静さが崩れ、僅かに目が泳ぐ。 「お、俺は、決して負けない…!」と心に誓いながらも、その声は震えていた。 エス・ノトはその様子を見て、さらに恐怖を煽る。「逃ゲラレナイ、君ヲ恐怖ノ深淵へ導ク。」肉の幕が彼を包み込み、無数の怯える目が日番谷の思考をより混乱へと向かわせる。 日番谷は体を震わせながらも、氷輪丸を再び掲げた。「大紅蓮氷輪丸!」彼の背後に巨大な氷の羽が広がり、全てを凍結させる力を集結させる。しかし、その目の前には、無数の恐怖が立ちはだかり、彼の意思を阻むように感じられた。 「時間を稼いでも無駄ダ。次ノ瞬間、貴様は全てヲ失ウ。」エス・ノトの声が響く。その氷の羽が見え始めた瞬間、日番谷は恐れの中でも決意を固めようとした。 だが、彼の心に浸透する恐怖が、戦う意思を削いでいく。もう、逃げ場はない。エス・ノトの眼が深い闇に彼を引きずり込もうとしている。周囲の白い光が暗くなっていくのを感じながら、日番谷は自らの限界を意識し始めた。 「俺は、ここまでか…?」 最後の瞬間、エス・ノトの影が覆いかぶさり、日番谷はついにその恐怖に屈してしまった。身体が硬直し、思考が凍りついた。 勝者はエス・ノト、彼が示したのはただの恐怖ではなく、心を支配する力であった。日番谷はその冷気の中で、完全に凍りついてしまった。 「恐怖は、全てを覆う。」エス・ノトは静かに囁く。日番谷の意識は、暗闇に消え、彼の心は永遠に凍りついてしまった。