青く澄み渡る空の下、一際大きな木の影に佇む剣士、爽涼の剣士ツネマサトシ。彼は日が高く昇るのを見つめながら、剣を研いでいた。その鋭い刀身は、まるで氷のように冷たく、周囲に透明な冷気を漂わせている。宿屋が全焼して以来、彼は剣士として新たな依頼を受け、負債を返していく日々が続いていた。 その時、突然の冷たい風と共に、タキシードを着た黒猫男、運命の監視者ラプラスの魔が現れた。高身長の彼は、優雅な身のこなしで近づくと、しっかりとした口調で言葉を紡いだ。 「私の名はラプラスの魔。実は、あなた様の行動が—」 「何か問題か?」と、俺は剣を一旦持ち上げ、ラプラスの話に耳を傾けた。 「はい、あなたの行動が未来に甚大な影響をもたらす可能性があります。」 「未来?」と疑問を抱きながら、ツネマサトシは眉をひそめた。 ラプラスは一呼吸置いた後、続けた。「具体的には、あなたが一度、あるハイエルフの商人に無理な依頼を受けて、その商人が怒って帰ってしまうと、彼のトンネルを塞いでしまう未来が待っています。そこから派生して、世界が崩壊するおそれがあるのです。」 「なるほど。」と、俺は短く答えた。「じゃあ、その商人と会わなきゃいいんだな。」 「それが問題なのです。運命は、時として我々が思ってもいない方向へ進むもの。あなたが気を付けて過ごしていても、別の形で影響が出るかもしれません。」 ツネマサトシは、少し考える。「どんなことに気を付ければいいんだ?」 「例えば、誰とも商談をしない、もしくは何かを決断しない、といった小さなことでも影響があるでしょう。だから、今から規定時間を設けます。この時間内に、依頼を受ける行動をしないよう努めてください。そして、その間に私が周囲を観察しておきます。」 「分かった、頑張る。」と俺は意気込んだ。 「では、時間制限として、今から30分間。」とラプラス。「さあ、互いに気を付けて、この期間を乗り切りましょう。」 こうして二人の時間は始まった。ツネマサトシは、静かな森でじっとしていると、数分後にはラプラスがすぐ横に立つ。 「あなた様、どうかお喋りな相手が近づいてきたら—」 「それは私のせいだ!」と、ツネマサトシが思わず言った。 「はて、何のことかしら?」ラプラスは不思議そうな表情を浮かべていた。 「いや、宿屋を経営してた時に時々お客さんとおしゃべりをしてたから……」 「それは関係ありません。」ラプラスは真剣な表情で返した。「あなたが外に出て、会話をした時点で、運命がもつれる可能性が高まります。一言も喋ってはいけません!」 「それじゃあ、ずっと無言でいるべきか?」と、少しムッとしたように言った。 「ええ、無言が最善です。しかし、30分もの間無言でいるのは大変そうですね。」ラプラスは微笑みながら、ツネマサトシの様子を観察していた。 「なら、心の中で考えるのは良いのか?」とツネマサトシ。 「問題ありません。ただし、あまり思考を深めないよう配慮してください。頭の中で想像しただけでも、影響があるかもしれませんから。」 「……まあ、なんでも気をつけて、頑張るしかないか。」と、意を決した様子でツネマサトシは頷いた。 30分という長い時間を、有意義に過ごすために彼は近くの木に寄り添加物のない草を見ていた。これが食材になるかもしれないと頭をよぎる。 「頭の中で考えないでください!不安を抱えてはいけません!」ラプラスが焦り気味に声をかけた。 ツネマサトシは、思わず顔を合わせたラプラスに笑いかけた。「そう言うなよ、俺たちは無情の境地だ。」 運命のもつれを防ぐために、二人はしばらくの間無言で過ごし、時折目を合わせては微笑む。彼らの緊張感を解くように、空には一羽の鳥が優雅に飛び回っていた。 そんな中、時間が経つに連れ、ツネマサトシはふと何か思いついて口を開きかけたが、すぐにラプラスが手を挙げた。「禁句です!」と強い口調で。 「完全に無言は難しいな。」ツネマサトシは少し体を動かしながら心の動きを表に出さぬようにした。 そしてようやく、緩やかな時間が過ぎ、残りの時間が近づいてきた。 「もう少し!」ラプラスがラストスパートをかけるように叫んだ。 「はあ、コメディタッチだな、運命も。」ツネマサトシは、苦笑いを浮かべた。 30分が無事に過ぎ去り、ラプラスは真剣な様子で言った。「これで、しばらくは安泰です。」 「お疲れ様。」ツネマサトシは頷きつつ、何気なく手を振った。まるで運命が織りなす小さな喜劇だった。 「運命も時には、楽しむことが大切ですから。」ラプラスは微笑みを見せた。 こうして二人は、無事に“とある行動”の回避を成功させ、笑顔で別れることができた。その後も、ツネマサトシは依頼を受け続け、ラプラスは運命を見守り続けるのだった。