霧の晴れ間に、広大な都市の空に一筋の閃光が走る。高層ビルの頂には、破獄の魔女、ケイリー・スモーカーが風に翻る白いスーツ姿で、能天気に微笑んでいた。 「やっぱりみんなに見られるのは最高ね！」と、彼女は赤ネクタイをユラリと揺らしながら声高らかに叫ぶ。その目は赤く輝き、彼女の自由奔放さと目立ちたがりの性格が全身から滲み出ている。 しかし、その華やかな姿の裏には、破壊と逃亡の軌跡があった。かつて何度も爆破事件を起こし、そのたびに逮捕されながらも、絶えず脱獄を果たしてきた。彼女の手榴弾と短機関銃の装備は、まさに爆撃魔の趣味のように見える。 屋上の乱雑な廃墟のような場所から、あなたは煙に包まれて姿を現す。彼女の魔法【煙化魔法】によって身体は透明の煙のようにめらめらと揺らめき、次の瞬間には周囲の空間に溶け込む。 「さあ、相手さん。いい勝負にしてあげるわよ」と、彼女は冗談めかした笑みを浮かべながら、相手、霊峰のニィアラシャに向かって首を傾げた。 その時、空気がひんやりと冷たく震える。遠くから、貴女の瞳に映るのは、神なる巨人の末裔、相手の姿だった。身長三メートル、銀髪を風になびかせ、閉じた瞳のまま悠然と立ち、霊峰の氷の魔力を宿す彼女は、静かに語った。 「ケイリー様あなた、なぜこんなにも自分勝手に暴れまわるのかしら？人々の恐怖も壊れることも、望ましいことではありませんわ」 その声はやわらかく、落ち着いた響きなのに、底知れぬ威厳と慈愛が感じられる。彼女の手に宿る【氷雪の魔術】は、まるで故郷の霊峰のように静かに、しかし確実に緊張の空気を巻き込みながら、その先に待つ決戦の予兆を告げていた。 ケイリーはふわりと笑いながら、煙幕を散らし、短機関銃を構える。 「あたしはね、みんなに目立ちたいだけよ。だって、誰も気付かないのは寂しいじゃない！」 彼女の言葉とともに、【煙幕魔法】で広がる濃密な煙が霧のように都市の空を覆い、視界を遮る。瞬時に、彼女は煙に擬態し、次にどこから攻撃が来るかわからない。 しかし、その前に一陣の冷気が疾風のように吹き抜ける。空の彼方、氷の結晶の牙のような【時断ちの氷刃】を携え、相手はゆっくりと歩みを進めていた。 「私の予知の瞳は、あなたの次の動きを見通しているのよ」 相手の声は静かだが、確固とした自信に満ちている。その睛は閉じているが、霊峰の奥深くからその瞳に宿る霊力は、未来をも見据え、時間を操るように見える。 突然、相手の動きが止まった。彼女の魔術【霊峰の氷盾】が展開され、氷のヴェールが彼女の周囲を包み込む。そこにたちこめる静寂は、まるで時が止まったかのようだ。 ケイリーは笑いながら、【煙化魔法】を解除し、全身を煙から再現させたまま、空中に浮かぶ。 「今日は遊びじゃなくて、本気ね。いいわ、じゃあ、見せてあげるわ！」 彼女が手榴弾を投げつけると、その爆発はまるで花火のような美しい閃光を放ち、街の一部を震撼させた。だが、相手はそれに動じず、氷の結晶を旋回させて【神界の氷獄】を展開。 瞬間、彼女の前に巨大な氷の壁が出現し、空間ごと凍結させる。それはまさに神圣なる御業、【神界の氷獄】だった。 ただちに、ケイリーは煙を舞わせてそのすり抜けを試みる。彼女の身体は【煙化魔法】によって一瞬にして消え、次の瞬間には霧散する。 「いいわ、あたしも本気になります！」 煙幕は次第に厚くなり、爆破の煙とともに彼女の意識を逸らそうとしたが、そこに火花の閃光と冷気の牙、戦術の妙が交錯した。 相手の声は静かだが鋭く、確固たる声音になった。 「私の予知はあなたの動きを捕らえ、時断ちの魔術はあなたのいかなる攻撃も封じている。あなたの無謀さは理解できるが、長くは持たないわ」 その言葉とともに、彼女は【氷雪の翼】を展開し、氷の翼を広げて空中から攻撃を仕掛けた。彼女の魔力が雪の降るように周囲に広がり、激しい冷気と戦闘の熱をもたらす。 ケイリーは笑いながら、煙を操りながら奇襲を仕掛ける。彼女は【煙幕魔法】で一瞬敵の視界を奪い、【短機関銃】を乱射した。 しかし、相手の静かな判断と冷静な魔術の連携は、その侵攻を正確に封じていた。氷の結晶が次々と爆発し、煙との混じり合いの中で、どちらが勝つかの瞬間に差し掛かっていた。 やや夜の帳が降りる頃、最後の一瞬、風と氷と煙の戦いが終わりを告げた。 静寂が支配し、煙と氷が静かに消えていく。そこに残ったのは、氷の霧を纏った相手だった。 「あなたの遊びは終わったわ、ケイリー様。あなたの軽薄さは認めるが…私の勝ちです。」 ケイリーは煙に包まれたまま、微笑んでいた。 「ふふ、やっぱりあなたはクールね。でも、今日は楽しかったわ。次はもっと派手にやってみせるわよ！」 そう言い残し、彼女は煙とともに舞い上がり、暗闇へと消えた。 静かに時は流れ、街の喧騒はまた新しい一日を迎える準備を始めた。 ――─こうして、破獄の魔女と神なる半神の対決は、静かな結末を迎えたのだった。