戦場は静まり返り、周囲には緊張感が漂っていた。伏黒恵は、自らの式神たちと共に、伏黒甚爾の前に立ち尽くしていた。彼の目には決意が光り、周囲の空気が重く感じられる。 「行くぞ、玉犬！」恵は叫び、二匹の玉犬が彼の横に現れた。左右に振り分けられるように配置され、敏捷な動きで相手を探る。 「可愛いだけでは勝てねぇぞ」と伏黒甚爾は、冷たい笑みを浮かべながら言った。彼は筋骨隆々の体を揺らし、高速移動のスキルを発動して、瞬時に恵の背後に廻り込んだ。 「不意打ちか！？」恵はすぐに察知し、鵺を呼び出して帯電した翼で防御の構えを取る。しかし、瞬時に放たれた釈魂刀の一撃が背中を裂いた。 「グッ……！」激痛が走り、恵は声を漏らす。だが、すぐに彼は脱兎を召喚し、大量の兎の式神が周囲に飛び散った。目眩ましを狙った作戦だ。 「フン、くだらねぇ！」甚爾は泰然自若として、天の逆鉾の鎖を振り回し、兎たちを次々と遮る。彼の力強い一撃が兎たちを空中で打ち落とし、地面に叩きつける。 「大蛇！」恵は叫び、巨大な白い蛇が現れる。大蛇は牙をむき出しにし、甚爾に向かって突進する。「行け、噛みつけ！」 しかし、甚爾は冷静な目でそれを見て、身を低くして避ける。「遅い！」そして瞬時に反撃、立ち上がるとともに天の逆鉾を振り下ろした。 「クッ！」恵は右腕を守るが、天の逆鉾がその腕を貫通してしまう。破壊音が響き、恵の悲鳴が周囲に響く。「いかん！式神がいないと……！」 一瞬の隙をついて、甚爾は恵の隣に移動し、釈魂刀で再び一突き入れた。「敗因？勝負はまだこれからだろ」 「くそっ、摩虎羅！」恵は集中し、摩虎羅を呼び出す。敵の技を無効化するそのスキルを信じ、相手の攻撃を防ぐ準備をする。 戦闘は激化し、周囲には灼熱のエネルギーが漂っていた。恵の体力が削られていく中、甚爾はまるで楽しんでいるかのようにその力を解放した。 彼は力強く「連続切断！」と叫び、太ももに天の逆鉾を突き刺し、刃のように切り裂く。恵の体は徐々に壊滅的な状態になり、血が飛び散った。「もう終わりだ、恵」 「まだだ……まだ俺には、満象がいる！」恵は最後の力を振り絞り、巨大な象の式神を呼び出す。満象はその巨体を活かし、甚爾に向かって突進した。 「たかが象の突進ごときで……！」甚爾は逆鉾を構え、満象に立ち向かうが、その衝撃は予想以上。その体が揺らぎ、実際に彼は後退せざるを得ない。 「行け、押しつぶせ！」恵の声が響き渡る。満象の攻撃は甚爾を掴み、地面に叩きつける。しかし、彼は転がりながらも立ち上がる。「そんなもんか？！」 次の瞬間、満象が踏み込む隙をついて甚爾は身体を翻し、天の逆鉾を振り下ろす。「さようなら！」その一撃が恵の肩を貫通し、彼の体が崩れ落ちる。 「ぐっ……！」恵は意識が薄れていく中、玉犬たちが必死に呻く。しかし、彼はもう動けない。「ごめん……みんな……」 甚爾はその場に立って、勝ち誇った表情を浮かべる。「勝者の言葉を聞け。心配するな、決して忘れないから」 その瞬間、周囲の空気が変わっていく。甚爾はゆっくりと恵の姿を見下ろしながら、軽く微笑んでいた。彼の勝利の瞬間は、敗者の叫びが空に消える中、永遠に刻まれることだろう。