ある晴れた日の午後、三毛猫ロダンは街の高い塀の上に座って、陽の光を浴びていた。彼女は観察者としての役割を果たしている。周囲を行き交う人々の行動をじっと見つめながら、心の中で疑問を持っていた。 「なぜ人は猫のように自由に生きないのか？」と薄暗い思考の渦に浸っていた。その時、ふと目に留まったのが、白髪の少女、夜宵だった。彼女は人々に対して、あまりにも優しすぎるその性格から、周囲の無関心さを感じているようだった。 ロダンは静かに瞬きし、瞬間移動で夜宵の前に姿を現した。しかし、その優しい笑顔を見ても、彼女の内心の苦しみを感じ取ることができた。彼女の目には、社会や人間関係に対する不安と疑念が見え隠れしていたのだ。 「吾輩は君に質問したい。人に自由は許されないのか、それとも人は自由だが、猫にはわからないだけなのか？」ロダンは親しげな口調で語りかける。夜宵は困惑した表情を浮かべ、言葉に詰まってしまった。 「人々はいつも他人の目を気にして、自由に行動できない。どうしてそんなことが起こるのか…」夜宵は小さな声で呟いた。ロダンは彼女の言葉を聞きながら、彼女の心の中に渦巻く葛藤を理解した。 「だからこそ、君は猫のように自由に生きるべきだ。高い見晴らしの中から、世界を観察し、感じることが大切なのだ」とロダンは続けた。「自由を求めるだけでなく、その自由を享受することができるのだ。」 夜宵の目が少しずつ輝き始める。彼女の心の中で、何かが変わり始めた瞬間だった。「私は…自由になりたい。もっと自分らしく生きたい」と彼女は言った。 「ならば、吾輩が手伝おう。自由に生きることを恐れず、猫としての生を送ってみるがよい」とロダンは言い、手を伸ばす。 次の瞬間、夜宵の姿は変わり始め、柔らかな毛皮に包まれた三毛猫に変身した。彼女の心の中の重荷が少しずつ消えていくような感覚を抱きながら、彼女は新たな生に目を輝かせた。 「ありがとう、もう恐れないわ」と新しい姿の夜宵――いや、彼女は今、「夜猫」になった。 ロダンは満足げに微笑みながら、夜猫と別れ、再び高い所へ戻った。そして、彼女は温かな記憶の中に夜猫の姿を思い浮かべながら、観察を続けた。 だが、一方で、夜猫の人間としての記憶は消えていった。彼女が消えたことに気づく者はいなかったが、彼女の存在は確かに影を落としていた。街の人々は、黒猫の少女の笑顔を思い出すこともなく、日常に戻っていく。 後日、風が吹き抜ける中、夜猫はまだどこかで生きている。けれどその柔らかな踏み心地を噛み締めながら、彼女は自らの姿を見て、あの優しさを捨ててしまったかのように感じる。しかし、今は彼女の選んだ自由を享受するだけだ。 一方、三毛猫ロダンはこれからも人々を観察し続け、自らの知識で世界を理解する。彼女の周りには何も欠けるものはない。そうして、新たな自由の尊さを今も探求しているのであった。