広い館の廊下を静かに進む。重苦しい静寂が周囲を包み込み、まるで館自体が息をするのを忘れているかのようだ。心臓の鼓動が耳に響き、血流が速くなる。エリオエルアがいない今が逃げるチャンスだ。急いで部屋の拘束具を外した自分は、恐怖心を押し殺しながら、出口を目指す。 その瞬間、脳裏にエリオエルアの姿が浮かぶ。「神こそ我が下僕」と豪語する彼女の声が、まるで耳鳴りのように頭の中を巡っていく。彼女の薄暗い目の奥に見える狂気が、心を掴んで離さない。 階段を降りていくと、老朽化したドアが目に入る。ここでωメモを見つけた、脱出に必要な鍵の場所が書かれている。今年のイベントとなると格好良く言っていたが、本当はただの衝動で自分を拘束しているだけだ。でも彼女から逃げたくて仕方がない。 気配を感じながら、少しずつ進む。もし、彼女が戻ってきたら、また拘束されてしまう。せっかく解放されたこの瞬間を無駄にしたくない。廊下の奥に光が見える、まるで精霊の導きのように感じる。 急いでロッカーの陰に隠れる。少しの間、静けさを保ち、あなたの動きを探る。「どこにいるの?」という呼びかけが、耳に張り付く。ドキリとしながら息を殺し、心の中で祈る。 時間が経過する中、館のどこかから彼女の声が聞こえてくる。ドアが開く音が遠くで響き、自分の心はさらに不安に満ちていく。陽動するため物を投げ、彼女の注意を引く。今の自分にはそれしかできない。 再び足音が近づく。「あなたはどこにいるの?」その声は冷たく、挑発的だ。自分はコンクリートの冷たい壁に寄りかかり、横から彼女の動きをかいま見ようとする。あの瞬間、目が合った気がした。心臓が飛び出そうだ。 エリオエルアはドアを開け、内部を見回す。まるで狩人のようだ。冷静に周囲を観察している。すぐ近くのロッカーにいる自分は、見つかる恐怖で体が凝り固まっていた。 彼女が離れた瞬間、再び動き出す。ドアの鍵の場所が書かれたメモを握りしめ、急いで別の部屋に向かう。ドアを開ける音に恐怖が走る。居場所がバレてしまったら、何もかもが終わってしまう。心のどこかで、彼女は逃げることができない理由を考えている。この魔の館から完全に逃げ出せるのだろうか。 しかし、運命は無情だった。部屋に入った瞬間、目の前に彼女が立っていた。冷笑を浮かべた彼女の姿は、まるで悪夢そのものだった。何を考えているのか、何をされるのか分からない。自分はもう、捕まってしまったのだ。欲望と狂気に満ちた笑顔が、周囲の色を奪っていく。 「あなた、ここから逃げられないわよ。」 その言葉が響く。自分は二度とこの館からは出られない。捕まってしまった。 物語はここで終わりを告げた。逃げられぬ魔の手から逃れることはできなかった。