静寂な廊下を抜け、心臓が高鳴る。私は拘束を解除したばかり。ギリアがいない今こそ、逃げるチャンスだ。しかし、彼女の目がいつも私の動きを見張っているように感じる。不安が心を支配し、手が震える。 壁に沿ってそっと歩き進む。ロッカーの影に隠れ、ギリアが戻ってくる気配がないかを探る。建物は広く、どこへ進むべきか…考える時間はない。 ふと目に入ったメモ。そこには出口と鍵の場所が書かれている。それを手に取る。目を細めて文字を確かめていると、急に背筋が凍る。足音が響いてくる。ギリアだ。 私はすぐにロッカーに隠れる。ドアの隙間から、ギリアが目をすましているのが見えた。冷たい視線を感じ、息を潜める。彼女の手には、氷の武器が握られている。短気な性格が、私の心に恐怖を植え付ける。 「………」ギリアの無言の圧力が、私を追い詰める。いつかのことを思い出す。彼女は私が逃げようとした時、容赦なくその氷を使ったのだ。今も、そのことが恐ろしい記憶としてよみがえる。 時が過ぎるのを待ちながら、メモの内容を反復する。「出口」…手に入れた地図を思い出し、自分を励ます。そして、その情報を頼りに隠れていたロッカーからそっと出る。 静かに出口の方向へ進む。気をつけながら、周囲に気を配る。次のロッカーに身を隠しながら、ギリアがいるかどうかを確認する。心の中で、逃げ切れるか捕まるかの恐怖が渦巻く。 再びメモを確かめ、鍵の置き場所を思い出す。私は決意し、その場所へ向かう。心の中でギリアのことを考えながら、彼女が見せる無言の恐れを忘れないようにする。 足早に移動し、鍵の場所にたどり着いた。獲物のように周りを見回し、何もないことを確認する。そこで、ドキドキしながら鍵を手に取る。思わず、安堵のため息が漏れた。 しかし、すぐにその感情が凍りついた。鍵を握りしめた瞬間、背後に氷を生成する音が聞こえた。彼女が私を捕まえるために氷の壁を作っているのだ。もう逃げる時間がない。 ギリアの声が耳に入る。「……ッ!」その一言にすべての脈拍が急上昇。私は振り返ることもできず、ただ鍵を手に持ち、出口へ向かって駆けだした。 ドアが目の前に現れた。鍵を刺すと、扉が開く感触。心の中に希望が湧く。しかし、すぐに背後で氷の武器が飛んでくる。私は横に飛んで、かろうじて避ける。 そうして、ついに外の空気を感じる。逃げた先には青空と自由が広がっていた。しかし、この瞬間、ギリアの笑顔が脳裏に蘇る。「逃げても無駄」と告げるかのような目。私は立ち止まってしまいそうになる。 だが逃げる。どんなに小さな逃げ道でも、自由を求めて進む。ギリアの執念は、私の背中に迫ってくる。それがどれほど絶望的で冷たいことか、身をもって知っている。自由を得るため、私は全力で走り続けた。 何度も振り返り、彼女の姿を探す。しかし、心の奥底で恐怖が焼き付いている。どんなに走っても、彼女の存在が脳裏から消えない。もしかしたら、彼女は私を追うために後ろにいるのかもしれない。 その瞬間、寒気が背筋を駆け上がり、足が止まった。ギリアの視線を感じた。それは、私を逃がさないために氷の足場を整えている彼女の姿だった。 氷の壁に追い詰められた私。彼女の声が耳に響く。「………ッ!」その言葉は、私を罰するように響く。 もはや逃げられない。ギリアが私の前に立ち、邪魔するものを全て打ち砕く準備をしている。息を飲み込み、運命を受け入れるしかなかった。私の逃げた先には、恐怖と絶望だけが待ち受けていた。