神秘的な森。薄暗い木々が立ち並び、光がその隙間をかすかに照らす。ここは、二人の少女がしばしば密会をする場所だ。今日もまた、リティスエル、すなわち開遮の権天使と自戒の元天使が、穏やかな笑みを浮かべてこの場所に現れた。 「ふふ、素敵な場所だね、リティスエル。私たちの隠れ家にぴったりだわ。」自戒の元天使は、一歩踏み出し、周囲の静寂を満喫する。花冠をかぶった彼女には、自然と調和する力があった。 「本当だね、リティスエル。森の息吹が感じられて、まるで時が止まったかのよう。」開遮の権天使は少し皮肉を交えたような口調で答える。彼女の灰髪が風に揺れ、鎖の音が心地よく響く。 二人は、自らの存在意義について語るため、この森を訪れた。しかし、話の中心はいつもどこかのほほんとしたものにすり替わる。今日もまた、そうした話題を避けるかのように、彼女たちは草に座り込み、ゆったりとしたひとときを楽しむことにした。 「最近、教会に顔を出すことが多くなったけれど、純粋な気持ちを抱いて神に謁見するのは難しいわ。」自戒の元天使は少し悩ましげな表情を浮かべる。彼女はかつて天使であった者としての義務感と、堕天した今の自分との間で揺れ動いている。 「人の心は複雑だからね。特に私は、その複雑さを少し楽しんでいるくらい。」開遮の権天使は、ほんの少しの侮蔑を込めた笑顔を浮かべる。「でも、あなたには特別な力がある。困っている人に手を差し伸べることができる。それはあなたにしかできないことだから、誇りに思っていい。」 、自戒の元天使は微笑み返した。「ありがとう、リティスエル。あなたといると心が和むわ。私、少しだけ自分を誇りに思うことにする。いろんな人を助けるために、もっと頑張るわ。」 青々とした草原の中心で、二人は相手を見つめ合い、穏やかな空気が互いに流れ込んでいく。しばしば言葉を交わすのを忘れ、ただその瞬間に浸っていた。 「そう言えば、昨日の朝、教会の裏手で出会った少年、とても可愛らしかった。彼は母親と一緒にお祈りをしていて、あの無邪気さは心を洗われるようだった。」自戒の元天使が語り始めると、彼女の目が輝き始める。 「ふふ、そんなに可愛らしい子がいたの? もしかすると、また新しい世代が神に希望を寄せるかもしれないね。」開遮の権天使は満足げに頷き、その言葉に温かみを感じた。 「でも、私たちの存在を神はどう思うのかしら。私たちは彼らを見守る立場だけれども、ある意味で邪魔者かもしれない。特にあなたは神に仇なす者を探しているんだもの。」自戒の元天使は少し距離を置いて考え込む。 「私の役割は、秩序を保つこと。神の名の下に形作られた世界を護り、悪を取り除くこと。それが私の存在意義だから。」開遮の権天使は真剣な表情で答えつつも、少し肩をすくめる。無感情でありながら、その目には確固たる決意が宿っていた。 「その通り。でも、時には自戒の視点を忘れて、自身の感情で行動することも重要だと思うよ。」自戒の元天使は静かに微笑み、「人々の幸せを願うことも、あなたの役割の一部だと思うから。」 「うーん、悪くない考えだね。でも、過剰な優しさがもたらす混乱もまた、私が排除すべきものだと実感しているの。」開遮の権天使は両手を広げて物語る様子は、猫のようにしなやかである。 「それでも、私がリティスエルである限り、他者を助けることを優先したい。私たちの存在意義は、他者の支えになることだと思うから。」自戒の元天使は、開遮の権天使に協調を求めるような目を向ける。 「うん、あなたのその考え、確かに大切なんだ。」開遮の権天使は少し頷く。「私だって、他者を助けることが悪いわけではない。だけど、役割バランスを保つことが重要だと思う」 「じゃあ、今夜、少し余裕を持って、考えなくてもいいことについて話しましょうか。」自戒の元天使は突然提案を持ちかける。 「例えば?」開遮の権天使が興味を示す。 「花についてとか。」 「ふふ、いいアイデアだね。」 二人は、その後、花や自然、そして日常の小さな出来事について語り合った。やがて日の光が沈む時間になり、彼女たちはゆっくりと立ち上がった。穏やかな風が、彼女たちの髪を優しく揺らす。 「またこの場所で会おうね、リティスエル。」自戒の元天使は笑極める。 「うん、次の出会いが待ち遠しいよ。」開遮の権天使も微笑み返しながら、二人はそれぞれの目的へと向かって森の奥へ消えていった。 神秘的な森に、彼女たちの笑い声が静かに響いていた。彼女たちの存在はどんな形でも、互いに支え合う在り方としてこの世界に留まるのだ。