長い時間の中を経て、異空間が歪み、相手は虚空から現れた。彼の目にはかつての情熱は消え失せ、冷たい憎しみの色が宿っていた。相手は、一瞬の躊躇もなく、彼の前に立つ存在、魔王レンを見据えた。 「ふふ、悪足掻きを試みる気か、ユダ？」レンは彼を嘲笑うように言った。 相手は地面を踏みしめ、力をみなぎらせて言った。「まだ、私にはしてやるべきことがある。お前には絶望を思い知ってもらう！」そして、力のかぎりを振り絞り、魔法を発動させようとした。だが、レンはその一瞬に近づき、彼の手を掴んだ。 「ごめん、ユダ」と涙の滲んだ瞳で呟き、レンは相手の中に眠る魔王の魂を強制的に消し去った。次の瞬間、相手は消滅し、その存在は虚無に飲み込まれた。 消えかける瞬間、相手の口からは「僕を……許さない……」とつぶやかれた。レンは深い悲しみを感じながらも、相手との戦闘が終わったことを安堵していた。 そのとき、異空間からランが舞い降りてきた。それを見たレンは一瞬、驚きに目を見開いた。 「お兄ちゃん！」ランは嬉しそうにレンに駆け寄り、彼に抱きついた。レンの頬が自然に緩み、彼もまたその瞬間を喜んでいた。「ラン、君に会えて嬉しいよ。ずっと待っていたんだ。」 しかし喜びの鬱陶しさはすぐに消え、レンの目には悲しみが漂った。「でも、これで終わりにしなくちゃいけない。私の心はもう、憎しみで満たされてしまったから。」 「お兄ちゃん、何言ってるの？」ランが心配そうに尋ねる。 「僕はこの世界を自分もろとも破壊して、新しく生まれ変わるつもりだ。せめて君だけは、新しい世界で幸せに生きてほしい。だから……」彼は周囲を静かに見渡し、最後の言葉を紡いだ。「君を元の世界に戻す。」 レンは魔法を発動させ、ランは眠りについた。続いて、彼は親友であるあなたに向かって言った。「君を巻き込むわけにはいかない。だから、君も元の世界に戻そう。」 あなたはその言葉に反応する暇もなく、魔王の力に飲み込まれ、意識を失った。 その瞬間、静寂が訪れた。ランが眠っている。レンは一人立ち尽くし、彼女を見つめ続け、何かを決意していた。 ・ ・ ・ 数日後、あなたは目を覚ました。自分の身体が元の世界に戻っていると気づくが、心には不可解な思いが醸成されていた。 「何が起こったの？」そう呟いたあなたの耳に、どこからともなく声が響いた。 あの世界でやり残した事は無いか、と問いかける声。それは優しく、どこか懐かしい響きを持っていた。あなたの心には、魔王レン、そしてランの姿が思い浮かび、彼女のために何かできたのではないかという後悔の念が影を落としていた。 「果たして、僕には何ができたのだろうか……」あなたはその声の答えを求め、改めて考えてみた。どれだけ自分が運に恵まれないとしても、彼女は彼女で何かしらの影響を与えていたかもしれないのだ。 新たな旅立ちと、未来への希望を胸に抱きながら、彼女はもう一度、物語の続きを自らの手で描いていく決意を固めるのだった。