巨大魔法陣の上、星空が広がる夜空の下、稀真紀子、通称まきこまれちゃんは、戦いを終えたばかりの魔王レンと彼の妹ランの前に立っていた。真紀子は、彼の無防備な姿に一瞬目を奪われる。魔王は彼女の顔を見上げ、その深い悲しみを露わにしていた。 「僕は……僕は、何もかもダメにしてしまった……」魔王レンは、俯きながら声を震わせた。「こんな姿で、妹を守れなかった……」 そのとき、隣にいたランが優しく彼の腕に触れる。「お兄ちゃん、大丈夫だよ。どんなことがあっても、私はお兄ちゃんと一緒だから。」 まきこまれちゃんはその温かい言葉に心が和むが、同時に彼女の心には切なさが広がった。「運が悪い自分が戦わなくてはいけないと思ってたけど、こんな優しい光景があったなんて……」 「キミは……まだ生きているなら、何度でもやり直せるよ。」まきこまれちゃんは勇気を振り絞り、レンに向かって言った。「私は戦いで負けたけれど、あなたがいる限り、再びこの世界を良くするチャンスがあると思うの。」 レンは呆然とした顔を向け、まきこまれちゃんの言葉をかみしめた。「でも、僕は世界の敵としてずっと憎まれてきた……こんな僕が、どうして……」 「それは、あなたが先代魔王の“認知を歪める大魔法”の犠牲になっていたからです。」まきこまれちゃんは毅然とした眼差しを向けた。「あなたは世界の敵ではありません。本当の敵は、あなたのことを操り、世界を混乱させた者です。」 「いいえ……世界は僕を……」レンは嗚咽を漏らし、やがてその涙は止まることなく流れ落ちた。「僕は……長いこと憎しみに囚われて、自分を見失っていた……」 しかし、まきこまれちゃんはさらに続ける。「だからこそ、今この時から新しい道を進むことができる。あなたの優しさは、妹さんの優しさにも表れている。もう一度、自分を信じてみてください。」 彼女の真剣な眼差しに、レンはじっと何かを考えるように目を閉じ、やがて大きく息を吸い込んだ。「……ごめん。僕は今まで、自分の心しか見ていなかった。ラン、ごめん……そんなお兄ちゃんで。」 ランは涙を滲ませながら、優しく彼を抱きしめた。「お兄ちゃんは、ずっと私を守ってくれた。だから、私は許すよ。お兄ちゃんが本来の自分を取り戻せるなら、一緒に新しい未来を作ろうね。」 「そんな……そんな風に言ってくれるなんて。」レンは腫れた目で、まきこまれちゃんとランに感謝する。「君たちの優しさ、どうか無駄にしないようにするよ！」 その瞬間、まるで全てが元に戻るかのように、彼の目にかすかに光が戻った。彼の心にあった憎悪の霧が霧散し、世界に新たな可能性が生まれたように感じた。真紀子は嬉しく、次第に色付く心を抱いていた。 ところが、その時、空が一瞬にして異変に包まれた。真夜中の空が真っ黒になり、星々が人々の運命を見守るように明滅する中、巨大な彗星が迫ってきた。「あれは……何？」まきこまれちゃんは驚愕の表情を浮かべて呟いた。 「大彗星……！それは、僕の憎悪の象徴だ……！」レンの声が響いた。彼の顔は驚きと恐怖に変わり、すぐに悲しげに歪む。「僕が憎しみに囚われていた時、世界を壊そうと願ったその想いが、彗星として形を成して戻ってきたのかもしれない。」 「こ、降参します！」まきこまれちゃんも、その異様な状況に思わず後退した。「ひええ！こんなものが来たら、みんなが危ない！」必死に周囲を見回し、彼女は思考を巡らせた。 妹のランは、兄に寄り添いながら恐怖に震えた。「お兄ちゃん、どうするの？」 今や二人は、危機に直面し必死に切り抜けようとしていた。大彗星が近づくにつれ、その恐ろしい威圧感が高まっていく。まきこまれちゃんは、もう一度強く息を吸って言った。「みんなが助かる道を考えなくては！私たちの絆を信じて！」 そして、魔王レンは誓った。「僕は、憎悪の残滓でこの世界を滅ぼすようなことはしない！」深夜の空に響くその言葉は、強い決意を示し、三人は新たな未来を切り開くべく動き出した。しかし、運命はそう簡単に受け入れられるものではなかった。 そして、ついに大彗星は彼らの眼前に迫り、深い闇に包まれた王都の上空で、静寂の中、恍惚とした瞬間が訪れた……。