時は遅れた冬の午後、静かな町並みの中、真紀子はいつものように帰宅部の活動を終え、帰ろうとしていた。しかし、運の悪い彼女はまたもや、何かと巻き込まれる運命にあった。 「こ、降参します!」彼女の声が響く。道の真ん中に雷鳴の如き轟音が響き渡る。その音の先には、まさに終わりを告げる存在、大彗星ジェノガイアが立ち尽くしていた。彼女はその場で震え上がった。 大彗星ジェノガイア。この名を聞いたことのある者は少なく、その存在がもたらす破滅の影を知る者は、もはや恐怖のあまり声を失っていた。その影、否、憎悪の具現が目の前に現れたのだ。 「ひええ…こんなところでバトルなんて、無理無理!」真紀子はすぐさま自分の学生鞄を抱え、後退りする。だが、彼女の運勢はどこまでも悪かった。後ろには、同じく「先代の勇者」として名を馳せていたレンの姿があった。彼は実力者ではあったものの、先代魔王の奸計で誤解され、長きに渡り敵とされていたのだ。 「待て、真紀子!」レンが彼女を呼び止める。「この戦いは避けられない。俺と一緒にジェノガイアに立ち向かうことが、救いへの道だ!」 真紀子は目をカッと見開く。「それでも怖いよ、何か起こるんじゃないかって…!」 レンはその言葉に引き寄せられ、元来の優しさで答える。「俺はもう、違う。妹のランや、君を守るために、俺は戦うんだ。だから、君も俺の力を貸してくれ!」 そうするうちに、相手=大彗星ジェノガイアの怒涛の力が解き放たれた。周囲の空気が波打ち、恐ろしい臨場感が全身を包む。彼の声は、怨嗟の包み込む暗黒の響きだった。 「お前達は、終焉を望むのか。ならば、その望み通りに、その存在を消し去ってやる!」彼の手が差し伸べられると、空間が歪み、まるで世界そのものが泣き叫ぶかのように、虚無の渦が生み出された。 「これが…『ヴォイドハウル』!」叫ぶ相手の力は、真紀子の目の前で数珠繋ぎに形を作り、天より閃光が降り注ぐ。何人たりとも、この世界の理を破ることはできず、相手自体がその障壁となって立ちはだかる。彼女は頬を震わせ、無力さを痛感する。 その瞬間、兄レンが一歩前に出る。「来い、真紀子。今がチャンスだ、俺が相手の力を押さえる間に、君がその先に進むんだ!」 「でも、無理だよ、私なんか…!」真紀子は逃れなく向かう運命を感じ、理性的に懸命な選択を試みた。 「君がいるから、俺はここで立ち向かえる。君の力を信じろ!」レンは強い眼差しで彼女を見つめると、その一瞬の勇敢さが真紀子の心に火を灯した。 次の瞬間、魔王の残忍な憎悪が夏の猛暑に凍りつき、真紀子の体を直撃した。「ぎゃっ!」と声を挙げるも、彼女にはただの「イテテ」で済む程度の痛みだった。運命的に無傷で終わらせる、災難スルー体質の恩恵がまだ彼女にあった。 彼女は自分の存在を思い出し、力を振り絞る。「私も戦う、ここにいるよ!」振り返り、レンの横に並ぶ。かつての勇者と仲間の、運命の力を信じた瞬間だった。 しかし、相手は冷酷な目で二人を見据えた。「無駄だ、抵抗する価値もない。この世界の沈没は、もはや避けられぬ。」その言葉とともに、次なる攻撃が放たれた。 「この…」真紀子が恐怖で言葉を失った時、古の魔王における思いを胸に抱きしめたレンが進み出た。「お前の憎悪に、今こそ果たし状を叩きつける!」 だが、長きに渡る葛藤の中、彼には一つの選択が迫られていた。真紀子には果たしてこの運命を変える力があるのか? 彼女は、今だ求められている仲間としてこの瞬間に貢献できるのか。 その時、ふと浮かぶ過去の記憶が、彼女の胸を打った。 彼女の心に牛乳を飲む日常や、つぶあんマーガリンコッペの風味が甦り、それは全て皆の紡いでいた、日々の幸せだった。 「私がいてもいいよね!」 急速に力が生まれ、真紀子は目を閉じ、あの日常の光に包まれた。 「大丈夫、まきこまれちゃん。君がいて救われる。この力が、まだ世界を守れると信じよう。」レンの言葉が、彼女の背中を押した。 さて、果たしてこの友情が相手という魔王をどうするのか。決着を迎えるその瞬間、全てが白き光に包まれ、空間の理が崩壊してゆく… やがて真紀子の声が、彼女自身を忘れかけた絶対者に響き渡った。「私たちを差し出す!逆転の力を求める!」 そして、瞬時に真紀子の持つ日常の象徴、その全ての幸せが一つに結びつき、決闘の舞台に立ち向かうことになったのだった──。