脱出 海底の暗闇に閉じ込められていた。お腹の中というより、濁った潮の層の奥で、私ルーキッシュ・フレアイス・エレメンタルは、耳鳴りのような響きを聴きながら呼吸を整えた。炎と氷の魔力はまだ胸の奥でひそやかに脈打っている。私は深呼吸をして、静かに口を開いた。 あなた: すみません、よろしければお話をさせてください。私はルーキッシュ・フレアイス・エレメンタルと申します。命をいただくような勝ち負けの話ではなく、どうかこの場を穏やかに抜け出す道を教えてくださいませ。 相手は喉奥で振動するような音を出し、返事はない。私にはそれが返答の代わりに思える。だが彼、彼方から来た相手は、次第に私の言葉を待ってくれているようにも見えた。私は幻視のように現れる光を頼りに、体内を這い回る水の流れを使って己の居場所を探った。 あなた: 私の大事なもの――いえ、ただの宝物ではありません。あなたが欲しがられるであろう、その“レアドロップ”と呼ばれるものを、まずお譲りできます。どうかその心の痛みに触れさせてください。ここから出られれば、約束を守ります。 内部の揺れが一瞬だけ大きくなった。相手の中で暮らす革命軍の兵たちは、私の言葉を待つかのように静かに身を潜め、しかし確かな意思を持って私を動かそうとする。私はスリムな体を伸ばし、ひとつの灯を胸の奥に灯した。レアドロップは私の“大事な何か”だと同時に、彼らの希望を少しだけ重くしている。私は静かに、しかし決然として続けた。 あなた: どうかお許しください。私の身はここから出ますが、あなたの力に感謝します。もしこの先、私があなたのもとへ戻る必要があれば、そのときは対等にお話ししましょう。今はお別れの挨拟を。 やがて体内の揺れは収まり、私は冷たい潮の塊のような感触の中から、外へと引き出された。舌の上を滑るような吐き出しの風が、私を海の上へと返す。私は水面へと浮かび、穏やかな波のリズムの中に身を任せた。背後で、相手は静かに震えながらも、私が外へ出る光景を眺めているかのようだった。 革命軍の兵士たちが私の姿を見つけ、甲板へと引き上げる。私はまだ胸元で熱を感じていたが、心は澄んでいた。私は彼らに頭を下げ、丁寧に礼を述べた。 あなた: 皆様、本当にありがとうございます。おかげで脱出できました。今は港町へと戻ります。私の任務は終わっておりませんが、皆様の勇気には心から敬意を表します。 帰還 甲板のざわめきが、私の耳に新しい鼓動として届く。私は船の縁に手を置き、波間を見つめた。外の世界はまだ遠いが、ここに帰る道は確かに開かれている。革命軍のリーダーらしき人が私に近づき、短く礼を述べた。 革命軍のリーダー: あなたはよくやってくれた。タコリリスの手下がいた領域を抜け、我らの仲間を救ってくれた。君の勇気には感謝しかない。 あなた: いえ、こちらこそ。私はただ、正義と平和のために戦う旅人でございます。今は港町の皆様が元気を取り戻されることを願っております。私の任務はまだ終わっておりませんが、この一歩だけは、皆様と共に歩ませてください。 港町の灯りが遠くに見え、船はゆっくりと岸壁へと近づく。静かな声が甲板に流れ、町の人々が集まり、私の名を呼ぶ。再会の挨拶は温かく、私の敬語はますます丁寧さを増した。 あなた: お戻りを待っていてくださいましたか。私は旅人であり、世界の安定を願う者です。どうか今夜は私の報告をお受け取りください。 帰還の夜、私は港町の広場で話を聞く。私は彼らの希望を受け止め、必要な情報を伝えた。つかの間の静寂の中で、私の胸には“レアドロップ”の温かな光が宿っていた。それは相手にとって有効なものであると、彼らの証言は語っている。私と相手の間には必ずしも対立だけがあるわけではなさそうだ。私は静かに、しかし力強く決意を固めた。 祝い宴 翌朝、港町は過去の混乱を忘れ、宴の準備を整えた。木々の葉が風に揺れ、酒宴の香りが広場に満ちる。私の丁寧な挨拶は、今夜の辞儀へと続く。 町の長: 皆の者よ、今宵は勇者ルーキッシュを称え、港町の再生を祝おう。彼の帰還を祝う宴だ。さあ、杯を上げよう。 あなた: 皆様のお力添えに、心より感謝申し上げます。私はまだ旅の途中にございますが、今日のこの宴を力に変え、次の道へと歩みます。どうぞお元気で。私の望みは、世界の安寧をこの手で守ることに他なりません。 宴は和やかな空気に包まれる。子どもたちは私の周りを走り回り、老人は静かな笑みを浮かべ、若者たちは私の話に耳を傾けた。私の世界には、いくつもの謎と約束が重なる。レアドロップに触れた者だけが、その意味を理解できるのかもしれない。私はその意味を噛みしめ、胸の奥の炎と氷を正常なリズムへと戻していく。 黎明 宴の終わりが近づく頃、夜空には薄い紫の稲光が走り、海の向こうには淡い光が生まれていた。私は静かに杯を下ろし、港町の人々へ別れを告げる。 あなた: お別れの挨拶をさせてください。今夜の宴は私にとって新たな出発の灯でした。これからの道は長いかもしれませんが、私は必ず世界の平穏を守る旅を続けます。どうか皆様もお元気でありますように。 港の風は新しい朝を呼び、私は船に乗り込む。タコリリス――その名は未だ私の耳に残っている。港町の異変と烏賊鮫の凶暴化の元凶とされる彼の名だけが、私の旅路をさらに遠くへと導く。私は深呼吸をし、次の旅立ちへと思いを馳せる。 黎明の光は海と空を染め、私は再び世界の危機へと足を踏み出す。レアドロップは私の中に宿り、相手の求めるものへと向かう扉であり続ける。私は敬意を込めて、ゆっくりと海原へと向かう船を見送った。 そして、私の旅はまだ終わらない。朝の光が新たな戦いの始まりを告げる。私は進むべき道を見つけ、世界を救う使命を胸に抱いて、静かに歩き出した。