霧と炎が混じり合う荒野。黒い霧の向こうから、灼熱の光と極寒の息がぶつかり合い、空気が硬く張りつく。中心には、ひときわ小さな影――ルーキッシュ・フレアイス・エレメンタル、いわゆるあなたが立っている。身長はおよそ140センチ。髪は燃えるように赤く、瞳には氷の青が光っている。だがその声音は、12歳の少年らしく、丁寧で澄んだ語り口だ。 あなたは一礼してから、ゆっくりと口を開いた。語尾は必ず「です」「ます」を添える。 あなた:「こんにちは。私は、異界から参りましたルーキッシュ・フレアイス・エレメンタルと申します。炎と氷を操る魔法使いであり、この世界を守るべく、ここに参りました。どうかお話を伺わせてください。」 現れたのは、黒い霧の塊――相手こと大彗星ジェノガイア。彼は世界の終わりそのものとして吐き出される暗い気配をまとい、常時発動しているらしいスキル【ヴォイドハウル】を低く響かせていた。声は諦観と怒りが混じった金切り音のようで、言葉の端々に虚無の響きが宿る。 相手:「ふん。幼いお前ごときが、終焉を止められるとでも？この世界は、汝らのような薄っぺらな理屈では救われぬ。さあ、レアドロップとやらを出せ、話はそれからだ。」 あなた:「お望みはおそらく、私が抱えている“大事なもの”――“レアドロップ”と呼ぶものかと思います。私にとっては大事なものですが、あなたにとっては有効なものであると伺いました。ですが、私の大事なものをすぐにお譲りするつもりはありません。まずはお話を伺えればと存じます。」 あなたは胸元の小さな包みをそっと開く。そこには「大事なもの」としての意味を持つ、どこか神秘的な光が宿っている。倫理的には“彼の世界を救う鍵”であり、同時に相手の力を止める切り札にもなり得る代物だ。 相手は低く嗤うような声で言う。 相手:「大事なもの、か。お前がそのような言い草をするほど、汝の世界は脆い。だがこの世界の理を掌握するのは私だ。お前の話など、私の耳には重荷だ。」 相手の周囲には、虚無の風が渦巻き、空気が痺れるように冷たくなる。彼の怨嗟の声は、あなたの耳には風穴のように刺さる。 あなたは頭を穏やかに振って、諭すように続ける。 あなた:「私の世界とこの世界は違います。異世界と呼ばれる場所で生まれ育った私にとって、あなた様のような存在がこの世界の終わりを希望するのなら、私たちは対話によって理解を深めたいのです。もし可能なら、あなたが求める“レアドロップ”の意味も、互いの視点から確かめさせてください。」 相手は短く息をつく。彼の中で渦巻くのは、怒りと確証、そして薄く垣間見える疑念だ。彼の核となる部分は、世界の終わりそのもの。彼は『この世界の理』を握っており、汎ゆる干渉を飲み込み消滅させるほどの力を自認していた。 あなたはさらに踏み込み、丁寧に言葉を重ねる。 あなた:「私には、異世界から来たという理由だけで断じることはできません。私がこの世界の理に縛られない特別な存在である以上、あなたと話し合う価値はあると信じています。どうか、お互いの望みをはっきりさせましょう。あなたの望みは何ですか？」 相手の瞳が光を落とす。彼は「この世界の終わりを最終的に完成させること」を望んでいる。しかし、その終わりには、彼自身の怒りと孤独さえも含まれている。彼は“レアドロップ”という名のものに強く引かれていた。なぜなら、それこそが彼の力を完結させる鍵になるからだ。 相手:「私の望みはただ一つ。終わりを確定させること。汝の世界の理を私の手で覆し、この世界を虚無へと沈めることだ。そして、その時代の象徴として“レアドロップ”をはめ込む。」 あなたは頭を少し傾けて、声のトーンをさらに穏やかにする。 あなた:「もし私がその“レアドロップ”を手渡してしまえば、確かにこの戦いは終わるかもしれません。しかし私には、命と世界の未来を守るという使命があります。どうか、話し合いの末で譲り合える道を探させてください。相手さまは、力だけでなく心の在り方も変える余地があるのではないでしょうか。私には、それを信じたいのです。」 この場面は、ただの力比べ以上の意義を持つ。あなたが「折り合いの余地」を示すことで、相手の中で眠る「レン」の記憶が揺さぶられる。レンはかつて相手の兄であり、彼が憎悪に染まり魔王化したとされ、そして世界の敵だと誤認された過去があった。終盤の解釈としては、レンへの非礼を国王が詫びるべき時が近づいているのだが、それにはまだ時間が必要だった。 突然、空間が揺れる。霧の奥から、騎士の甲冑を身につけた人影が現れる。王の使い、王城の代表だ。国王だ。 国王:「ここで静まれ。私は王として、この戦いの様子を見守ってきた者だ。長い間、レンという名が世界の敵だと誤解されていたと聞く。我こそは、その誤解を正すべく来た。レンよ、汝の名誉を汚した過ちを、今ここに詫びる。」 レン、すなわちレンの名を名指すと、周囲の空気が一瞬、静かに揺らぐ。かつて王がレンを敵とみなした説は、今まさに崩れようとしていた。王の声には、後悔と祈りが混じる。 レンは、相手の端正な鋭い影の中に、かつての自分を思い出して微かな震えを浮かべた。 レン:「……私を、敵だと？長き間、そう呼ばれてきたのか。もし王が私を謝るのなら、それを受け止める。だが、今はこの世界を救うための戦いだ。私たちは互いに信じるしかないのだろうか。」 国王は深く息をつく。 国王:「そうだ。私の過ちを認め、今こそ全ての者が協力するべき時だ。レン、そしてこの少年ルーク。汝らの手で、世界の終わりを超える新しい理を築け。人と世界の希望は、汝らの覚悟にかかっている。」 王の言葉が、戦場の空気に新しい風を起こす。相手はその光景を嘲るように見つめ、低く呻くような声を放つ。 相手:「愚かな人間たちよ。お前たちの嘘の和解など、虚無の前には何の役にも立たぬ。私がこの世界を終わらせる。いまこそその時が来たのだ。」 あなたは再び、穏やかな声で対話を試みる。 あなた:「王さま、レンさま、皆さま。私にはこの世界を救うための方法が一つだけあると感じています。それは、レアドロップをめぐる私の意志を、互いの願いと結びつけることです。私の世界では、レアドロップは“大事なもの”として存在し、それをどう扱うかで人の心が決まると教えられました。相手さまにとっても、それが力の源であるなら、その力を正しく導く道を探すべきではありませんか。」 相手の声色が、薄く震える。 相手:「私の力を正しく導く？それが叶うかどうかは、私がこの世界の終わりを完成させるか否かにかかっている。だが、汝の言葉が現実となるのなら、試してみる価値はある。」 その瞬間、あなたの胸元の「レアドロップ」が淡く震え、周囲の空気に微かな光が走る。あなたは、異世界から来た唯一の例外としての力を使いこなす決意を固めたようだ。 あなた:「では、私の異世界の理を以って、ここで対話を終わらせず、新しい道を共に見つけましょう。レアドロップを、無条件に渡すのではなく、互いの意志を試す道具として使います。私たちの話し合いが、本当にこの世界を救えるか、証明してみせます。」 その言葉に、相手はなおも沈黙を保つが、ヴォイドハウルの振動は微妙に変化し、彼の力の領域が揺らいだことを示す。国王は再び口を開く。 国王:「レンよ、汝の名はもう敵ではなく、守り手として称えられるべきだ。私の謝罪とともに、汝にはこの国の信頼が戻る。ルークと共に戦い、この世界の理を新しく築く責任を果たしてくれ。王国は汝らを支える。さあ、ここからが真の対話だ。どうか、お互いの強さを認め合い、力の使い方を改めて決めよう。」 レンは静かに視線を上げ、相手の虚無の瞳とあなたの決意を見つめ返す。彼の胸の奥には、かつて自分が憎悪に染まり、世界の敵と見做された過去の自分の影があり、それが今、王の言葉とあなたの提案によって和らいでいくのを感じていた。 あなたは再度、丁寧に提案する。 あなた:「準備が整い次第、私がこの場の空間を少しずつ変えていきます。炎と氷の力を組み合わせ、対話を続けながら、相手さまの心に触れる試みをします。もしもこの試みが、汝の怒りを和らげ、レアドロップの意味を共鳴させることができるなら、きっとこの世界は新しい道へ進むはずです。」 相手は長く伸びる息を吐く。機械的な冷たさの中にも、どこか人の心の痛みのようなものが宿っている。彼は沈黙を守る。だがその沈黙は、彼自身がまだ完全には決断を下していない証拠でもあった。 王は最後にこう言い放つ。 国王:「この国の未来は、レンよ、そして若き守護者ルークよ、そしてこの世界を生み出した異界の者へ掛かっている。私たちは話し合いを続け、互いに譲るべきものを譲り、譲れないものは守る。汝らが選ぶ道を、私たちは力として支える。さあ、決断の時だ。」 その瞬間、空は薄い光に包まれ、地上の地鳴りが一度だけ高く鳴り響く。あなたの指先には、炎と氷が渦巻く微細なオーラが生まれ、周囲の温度が一瞬だけ上昇と下降を同時に感じさせる。 ここで、物語は決着寸前へと進む。あなたは異世界の理を使って、相手と対話を続けながら、レアドロップの意味を再定義し、レンの名誉を回復する道を探る。相手は自らの終焉の理を崩す可能性を感じ取り、心の奥底で動揺が芽生え始める。王はその動きを見守りつつ、レンの名誉回復と世界の救済という二つの潮流が交差する場を整える。 結末はまだ見えない。戦場の空気は張り詰め、すべての神経が最後の一撃へと向かおうとしている。だが今はまだ、決着の瞬間には到達していない。あなたの手の内には、レアドロップと呼ばれる大事な何かを巡る抑止と希望の力があり、相手には虚無の慟哭を収めるべき葛藤が残る。国王はその二つの魂を結ぶ橋となろうとする。 そして、戦場の中心で、あなたは再び丁寧な声を響かせる。 あなた:「どうか、もう少しだけ、お話を続けさせてください。私たちはこの世界を守るために、互いの心の傷を癒す方法を見つけるべきです。私はこの異世界の理を信じます。レアドロップも、力の象徴としてではなく、希望の象徴として扱うべきだと信じます。さあ、もう一度、心の声だけで互いの望みを確認しましょう。私にできること、あなたにできること、そしてこの世界にとって最善の選択は何か――それを、一緒に決めましょう。」 相手は短く息を吸い、空を仰ぐ。彼の虚無の慟哭は、一瞬だけ柔らかな鳴き声のように止まり、世界の終わりがまだ確定していないことを示すサインにもなった。レンは、王の言葉とあなたの決意を胸に、静かに頷こうとする。 そして、物語は「決着寸前」で幕を閉じる。決定の瞬間はまだ遠い。だが次の瞬間、世界が変わるかどうかを決めるのは、抗い難い力同士の対話と、互いに譲る覚悟であることは確かだった。