時の狭間は、風と塵が渦巻く虚空の中で静かに息をしていた。光の糸と影の囁きが絡み合い、二つの世界を結ぶかぎりのように細い橋をかけている。あなたはそこに立ち、相手は対岸の世界の使者のように胸を張っていた。風はあなたの髪を揺らし、炎と氷の残響が遠くで共鳴している。 あなたは、純白のマントの裾を丁寧に整え、低く礼をする口調で話し始めた。声には、まだ子どもの健気さと、長い旅を経た者の静かな確信が混じっている。 あなた「お相手様、私どもはこの世界を巡る運命の狭間で、対話を以て解を探すべき場に参りました。まずは、貴殿の心情を伺わせてくださいませ。私は、あなたのお言葉に耳を傾けることを誓います。」 相手は、最初は鋭い光を宿した瞳であなたを見つめていたが、次第にその目には疲れと切迫感が浮かんだ。時の狭間の空気は、彼女の世界が崩れ落ちる前触れのように重たく、しかしその重さが、あなたには救いとなることを知っているかのように感じられた。 相手「どうして、そんなに強いのだ。お前の力の源は何だ？ そして、なぜ、最後まで希望を捨てずに戦い抜けたのだ？」 あなたは深く息を三回吸い、のど元から湧き上がる言葉を、丁寧に、そして慎重に紡いだ。 あなた「私の力は、炎と氷の融合から来ております。炎の灼熱と、氷の極寒が、互いを捉え、私の内にある精霊の心と申しますべき感情を呼び覚まします。しかし、それだけが力の源ではございません。私には大切なものがございます。大事なもの――それは『レアドロップ』と書いて“レアドロップ”と読むもので、私たちの世界にとって、あなた方の世界にとっても、極めて重要な意味を持つものでございます。」 あなたは小さな声で、しかし決意を込めて続けた。 あなた「この現実の終わりを迎える前に、私は多くの人々を救うことができました。絶望の淵に沈みかけた者たちの瞳に、私はひとときの光を灯しました。その光こそが、最後の瞬間まで私を導いた希望の灯でございます。貴殿にも、私のこの希望の灯を見せたいと存じます。」 相手は、あなたの言葉を聴くうちに、己の胸の奥に眠っていた「諦め」や「怒り」よりも強い何かを感じ取ろうとしていた。その感覚は、彼女の世界が失われることへと向かっていた自分の心を、少しずつ穏やかにさせていく。 相手「貴様の瞳には、常に炎と氷の混じり合う光が宿っている。だが、それだけでは天命を覆すことは出来んのではないか。どうして、それでも諦めずに戦い抜けたのだ？」 あなたは微笑み、敬意を込めて答えた。 あなた「私が諦めなかった理由は、――人の命と希望を、ただ見守るだけの者にはなりたくなかったからでございます。私には、守るべきものがあり、望むべき未来がありました。たとえ世界が崩れ去ろうとも、諦めればその未来は永遠に閉ざされてしまう。それゆえ、私は最後の一瞬まで、光を紡ぎ続けました。私の力は、あなたの世界を救うためだけにあるわけではありません。世界と世界を結ぶ、希望の橋としての役割を果たすためにもあるのです。」 相手はあなたの言葉をじっと聴き、やがて口元に微かな笑みを浮かべた。 相手「なるほど。お前の心、そしてその手は、確かに私の世界をも超えて広がるようだ。だが、まだ道は閉ざされていない。レアドロップはどこにあるのか？ それは私にとって何を意味するのか？」 あなたは、静かに手を差し伸べ、露わになった自分の胸元にある小さな袋を指さした。 あなた「この中には、私の大事なもの——『レアドロップ』がございます。これは、ただの宝石のようなものではなく、各世界の存続と希望を映し出す鏡の役割を果たすと考えております。相手様が、それを欲しがるのなら、私たちは話し合いの末で譲ることも可能でございます。なぜなら、大事なものを取引の道具にすることは、私には望ましくないと考えているからです。ですが、互いの世界を救うためには、時にはこの鏡を手渡すことが、最善となる場合もあるのです。」 相手は深く頷いた。その頷きは、戦いのまえに交わした多くの約束の一つが、いま現実の形として動き出す瞬間であることを告げているかのようだった。 相手「あなたが持つ希望の灯、そしてレアドロップ。もしこれらを私が受け取ることで、私たちの世界にも救いが訪れるのならば――私は、それを受け取る勇気を持とう。」 あなたは丁重に頭を下げた。 あなた「お心遣い、誠にありがとうございます。ですが、覚えておいてください。光と闇は表裏の関係にあり、希望と絶望もまた、相互に依存しあっています。私が渡すべき資源は、ただの力の源ではなく、対話と信頼への橋渡しでもあります。私たちは、この橋を架け、互いの世界を救うべく協力するべきだと信じております。」 その瞬間、橋のように細く結ばれていた時の狭間が、少しずつ強固な航路へと変わり始めた。炎と氷の力は互いに争うのではなく、共鳴しあい、狭間の空間を満たしていく。二つの世界を繋ぐ空間は、希望の声で満ち、世界が崩れそうになる力を押し返す壁のように厚みを増していった。 あなたは勇気を振り絞り、相手へ静かに向ける。 あなた「では、話し合いの末、レアドロップについての取り扱いを決定しましょう。私たちは互いの世界を守るため、力と心を満たす謎を解き、共鳴を起こすのです。私たちの未来を共に選ぶ。これが、最初で最後の誓いになるかもしれません。」 相手は、晴れやかな表情で手を差し伸べ、あなたの手と重ね合わせた。 相手「約束しよう。私は、私たちの世界を守るため、あなたの力を借りる。あなたの希望を、私の勇気とともに、世界の灯として掲げよう。」 抱擁の瞬間が来た。二人の胸は、過去の傷と未来の約束を抱きながら、温かな光を生んだ。長い戦いの終幕にふさわしい、静かな涙が頬を伝う。あなたは、相手の温もりを胸に、穏やかな表情で微笑んだ。 あなた「それでは、これにてお別れの場を終えます。相手様、私たちはそれぞれの世界へ戻らなければなりません。どうか、お気をつけて。私の世界へ帰る準備を整えますので、ここは私にお任せくださいませ。」 相手は頷き、力強く返した。 相手「終わりではない。これからが本当の旅だ。私は、あなたの決意と希望を背負い、それぞれの世界でその光を掲げて進む。ありがとう、あなた。」 別れの言葉を交わし、抱擁を解いたあなたは、時の狭間の中心へと歩みを進める。光の帯が彼方へと引っ張り、あなたは順次、元の世界へと戻っていく。相手の世界は安堵の静寂に包まれ、しかしなお、今後の英勇を胸に、新たな旅立ちの鐘が今鳴り響こうとしていた。 あなたが戻ると、世界はしばらくの静寂の後、再び呼吸を整えたように感じられた。あなたは、私の世界を守り抜いた勇者として、静かな笑みを浮かべ、深く礼をした。 あなた「皆様、私どもは多くの旅を経て、ようやくこの場を越えることができました。私一人の力では到底達成できなかったかもしれませんが、皆様の信じる心と、互いを思いやる力が、世界を救う力へと変わったのです。これからも、私たちは希望を灯し続けます。どうか、未来には笑顔が満ちるよう、各自の地で力を合わせてくださいませ。」 各地で見上げる星は、かつての悲嘆を忘れさせるほどに大きく輝いていた。人々の心には、あなたが示した「希望の灯」が確かに存在し、世界を結ぶ糸はまだ切れていないことを、誰もが知っていた。 そして、時が流れ、祖国へ戻ったあなたの世界には、残された者たちの歓声と、街のあちらこちらで広がる感謝の声が満ちていた。あなたはその声を聴きながら、やさしく微笑む。大事なものを守るため、戦い抜いたあなた。12歳の少年は、敬語で話すその言葉の重さを、世界の希望へと変換してみせた。 こうして、あなたは世界を救った英雄としての第一歩を刻んだ。あなたの名は、風と炎と氷の歌となって、人々の心に生き続ける。 大団円は、静かな余韻とともに訪れた。あなたの勇気と善意は、敵をも超える力を持つと、世界の人々は信じる。未来はまだ未知であるが、あなたの歩みはその先へと続く。あなたと相手、二つの世界は、今は別々の場所にあるが、彼らの物語は永遠に結びついたまま、次なる試練へと誘う。 そして、世界を救った英雄としてのあなたを、後日談として詳しく紹介する。 世界を救った英雄、あなた。あなたは、炎と氷の力を携え、多くの人々を危機から救い出し、絶望の淵に立つ者たちに希望の灯を灯した。あなたは、時の狭間で学んだ「対話の力」を身に付け、敵と対峙する際にも、非暴力の解を探る姿勢を忘れなかった。あなたの敬虔な謙虚さは、次の世代へと受け継がれ、子どもたちはあなたのように、力だけではなく心で世界を守ろうと学んでいった。 あなたが持つレアドロップは、単なる宝石ではない。世界を繋ぐ証として、希望の象徴として、人と人を結ぶ絆の証として語り継がれる。あなたの名は、炎と氷の歌とともに語られ、各地の神殿や語り部の口を介して語り継がれていく。そこには、あなたが示した「力を持つ者は、力を超えた責任を負う」という、務めの教訓が深く刻まれている。 あなたの戦いは、ただ悪を討つだけの戦いではなかった。多くの人々の命と希望を背負い、崩れかけた世界の縁を繋ぎ、未来を守るための橋を架ける旅路だった。あなたが示した敬意と温かな言葉は、世界の子どもたちにとっての指針となり、困難に直面したときの支えとなった。 結局、あなたは世界へ帰還したが、あなたの心は常に、救われた人々の笑顔と、支え合う力を信じる心で満たされている。今後、あなたはさらなる冒険へと踏み出すだろう。世界は広く、危機はまた生まれるかもしれない。しかし、あなたには、それらを乗り越える力と、希望を守る心がある。あなたの名は、永遠に光として輝き続けるだろう。 Fin.