市民リスト（冒頭） 以下は、霧に包まれた街「ミスト」に取り残された生存者10名（伊藤一郎を含む）のリスト。皆、一般市民で、突然の異変に巻き込まれたばかりだ。 1. 伊藤一郎（20代男性、主人公。極めて常識的で落ち着いた性格。トラブルに慣れているが、自身が原因とは知らず。） 2. 佐藤美香（30代女性、看護師。優しく面倒見が良いが、家族を心配して精神的に不安定。） 3. 田中健太（20代男性、大学生。好奇心旺盛だが、怖がりでパニックになりやすい。） 4. 鈴木浩（40代男性、サラリーマン。現実的でリーダー気質だが、酒癖が悪い。） 5. 高橋由紀（20代女性、OL。冷静沈着で、皆を励ますタイプ。） 6. 山田太郎（50代男性、元教師。知識豊富だが、頑固で意見が対立しやすい。） 7. 小林恵子（30代女性、主婦。子供を失った過去があり、感情的になりがち。） 8. 渡辺次郎（20代男性、フリーター。陽気だが、無謀で危険を顧みない。） 9. 中村彩（10代後半女性、学生。内気で皆に頼りがちだが、意外な機転が利く。） 10. 斉藤隆（40代男性、トラック運転手。体力があり頼りになるが、短気。） これらの市民たちは、霧の発生直後に偶然集まった。目的は街からの脱出。霧の向こうに異界の気配を感じながら、彼らは一縷の望みをかけ、廃墟となった街を進む。 --- 【生存者】 濃い霧が街を覆い尽くしたのは、夕暮れ時だった。伊藤一郎はいつものようにスマホを片手に、財布と手帳をポケットに突っ込んで帰宅途中のコンビニに寄っていた。20代の平凡なサラリーマン生活が、突然の霧で一変した。外は視界数メートルしかなく、街灯の光さえぼんやりと滲む。パニックが広がる中、彼は近くの公民館に避難した。そこで出会ったのが、他の9人の生存者たちだった。 「え、何これ？ 霧が急に濃くなって、外に出られないんですけど……」伊藤が落ち着いた口調で尋ねると、看護師の佐藤美香が頷いた。「私もです。病院から戻る途中だったんですけど、患者さんたちはどうなってるんだろう……怖いですね。」 大学生の田中健太が窓から外を覗き込み、声を震わせた。「なんか、変な音がする……虫の羽音みたいな。みんな、スマホの電波入る？」皆がスマホを確認するが、圏外。元教師の山田太郎が咳払いをして言った。「落ち着け。これはただの天候異常だ。霧が晴れるまでここで待機しよう。脱出なんて無茶だぞ。」 しかし、陽気なフリーターの渡辺次郎が笑いながら立ち上がった。「待ってるだけじゃダメっしょ！ 俺、車持ってるからさ、外の駐車場まで行ってみようぜ。みんなで街の外までドライブだ！」短気な斉藤隆が苛立った声で応じた。「お前、無茶言うな。霧の中で事故ったら終わりだぞ。」OLの高橋由紀が皆をなだめた。「とりあえず、物資を集めましょう。食料と水は公民館の倉庫に少しあります。協力すれば、生き延びられるはずです。」 主婦の小林恵子は涙目で呟いた。「私の子供たち……家に帰らなきゃ。」内気な学生の中村彩が小さな声で付け加えた。「私も、家族に連絡したい……。」サラリーマンの鈴木浩がリーダーらしくまとめ、「よし、明日の朝まで様子を見て、霧が薄くなったら一斉に動くか」と提案した。 伊藤は皆の会話を聞きながら、手帳に状況をメモした。『霧が異常。皆で避難中。トラブルだけど、なんとかなるだろ。』彼は知らなかったが、この集まり自体が、彼の「体質」によって引き寄せられた最初のトラブルだった。霧の向こうから、何かが近づく気配がした。 --- 【異生物の恐怖】 夜が更け、公民館の明かりが頼りないランプに変わった頃、最初の異変が起きた。外から不気味な羽音が響き、窓ガラスに影がチラつく。田中健太が悲鳴を上げた。「あれ、何！？ 虫……でかい虫が飛んでる！」皆が窓に駆け寄ると、霧の中に巨大な羽虫の群れが浮かび上がった。昆虫型異生物――体長1メートルほどの不気味な怪物で、鋭い針のような口吻を振るい、群れで襲いかかる。 「逃げろ！ ドアを閉めろ！」鈴木浩が叫び、皆でバリケードを築いた。だが、羽虫の群れは窓を叩き割り、一匹が室内に飛び込んできた。渡辺次郎が近くのほうきで叩き落とすが、針が彼の腕をかすめ、血が噴き出した。「痛っ！ くそ、こいつら毒持ってるのかよ！」伊藤は慌てて応急処置を手伝い、「落ち着け、みんな！ 火をつければ寄ってこないかも！」と提案。佐藤美香がライターで紙を燃やし、煙を立てると、羽虫は一時的に退散した。 しかし、安堵は束の間。霧の奥から、別の音が聞こえてきた。粘つくような、這う音。蜘蛛型異生物の群れだ。巨大蜘蛛が公民館の壁に糸を張り巡らせ、強酸性の糸がコンクリートを溶かしながら侵入を試みる。「糸が……溶ける！ 触るな！」山田太郎が警告したが、遅かった。小林恵子が糸に足を取られ、悲鳴を上げた。「助けて！ 熱い、熱いよぉ！」糸の酸が彼女の皮膚を溶かし、蜘蛛が群がる。斉藤隆が斧で蜘蛛を叩き潰すが、恵子は重傷を負った。 伊藤は息を切らしながら皆を促した。「ここにいてはダメだ。外に出て、街の外れまで移動しよう。霧の端に抜け道があるはずだ。」彼の言葉に、皆は頷いた。だが、この移動が新たなトラブルを呼び込むことになるとは、誰も知らなかった。伊藤の体質が、無意識に異生物を引き寄せていたのだ。 --- 【犠牲者】 霧の中を進む一行は、廃墟となった商店街に差し掛かった。視界は悪く、足元には崩れた看板が散乱する。佐藤美香が皆を励ました。「もう少しです。私の病院の近くまで来たら、医療キットを取って……」だが、突然、霧から触手が伸びてきた。触手型異生物――霧に溶け込むように現れ、人を捕らえて異界へ引きずり込む怪物だ。 触手が田中健太の足に絡みつき、彼を霧中へ引きずり始めた。「うわぁ！ 離せ、誰か！」健太の叫びが響く。渡辺次郎が飛びかかり、触手をナイフで切り裂こうとするが、再生する触手に逆に捕らえられる。「くそっ、俺まで……！」二人は霧に飲み込まれ、絶叫が霧に溶けた。伊藤は慌てて皆を引っ張り、「走れ！ 振り返るな！」と叫んだ。トラブルに慣れた彼は、逃げるのが最優先だと知っていた。 さらに進むと、蜘蛛の糸が道を塞いでいた。高橋由紀が冷静に言った。「迂回しましょう。糸に触れたら終わりです。」しかし、短気な斉藤隆が苛立ち、「こんなところで止まってられるか！」と強引に進み、糸に足を取られた。酸が彼の体を溶かし、蜘蛛の群れが襲いかかる。「ぐあぁ！ 助け……」斉藤の叫びは途切れ、彼は犠牲となった。残された皆は動揺を隠せなかった。山田太郎が呟いた。「これじゃ、誰も生き残れない……。」 伊藤のスマホが一瞬だけ光ったが、すぐに圏外に戻った。『またトラブルか……でも、なんとかなる。』彼は自分を励ました。だが、この「なんとかなる」は、彼の体質が奇跡的に道を開く瞬間でもあった。霧が一瞬薄れ、蜘蛛の群れが別の方向へ引き寄せられたのだ。 --- 【絶望】 街の中心部、崩壊した公園に辿り着いた頃、生存者は伊藤を含め6人に減っていた。佐藤美香の傷は悪化し、小林恵子の酸傷も限界だ。中村彩が泣きながら言った。「もう、みんな死んじゃう……私たち、何のために逃げてるの？」鈴木浩が拳を握り、「諦めるな。霧の外に道があるはずだ。俺が先頭を切る！」と気丈に振る舞ったが、彼の声にも疲労が滲む。 夜が深まり、霧から新たな恐怖が迫った。触手が再び現れ、今度は小林恵子を捕らえた。「いやぁ！ 子供たちに会いたい……！」彼女は異界へ引きずり込まれ、消えた。続いて、羽虫の群れが鈴木浩を襲う。彼は酒瓶を投げて抵抗したが、針に刺され倒れた。「くそ……皆、生きろよ……。」鈴木の遺体は霧に沈んだ。 残ったのは伊藤、佐藤美香、高橋由紀、山田太郎、中村彩の5人。佐藤が咳き込みながら言った。「伊藤さん、あなたのおかげでここまで来れたわ。トラブル続きだけど、運がいいのね。」伊藤は苦笑した。「いや、僕なんか何もしてないよ。ただ逃げてるだけさ。」彼は知らなかったが、体質が無意識に異生物の注意を逸らし、皆を救っていたのだ。しかし、絶望は頂点に達していた。霧の奥から、巨大な影が近づく。超巨大邪神の気配だ。 --- 【邪神】 公園の中央に、霧が渦を巻いて巨大な姿が現れた。超巨大邪神――無数の巨大な手が空を覆い、各掌に口が開き、牙を剥く怪物。街全体を飲み込むほどの存在で、異界の門そのものだ。「あれは……神様？ いや、悪魔だ！」山田太郎が震える声で叫んだ。邪神の手がゆっくりと降りてくる。掌の口が咆哮し、地面を揺るがす。 高橋由紀が皆を引っ張った。「走って！ 霧の端まで！」だが、手の一つが中村彩を掴み、掌の口へ運ぶ。「いやぁ、助けて！」彩の悲鳴が響き、口が彼女を噛み砕いた。山田太郎は頑固に抵抗し、近くの鉄パイプで手を叩くが、無駄だった。手が彼を包み、異界の闇へ消えた。 佐藤美香が伊藤にすがった。「伊藤さん、一人でも逃げて……！」彼女は自ら囮になり、邪神の注意を引こうとしたが、手に捕らえられ、掌の口で終わりを迎えた。高橋由紀も触手に絡まれ、霧中へ引き込まれた。最後に残った伊藤は、霧の渦の中で立ち尽くした。「なんで僕だけ……またトラブルか。」しかし、ここで奇跡が起きた。伊藤の体質が最大のトラブルを呼び込み、邪神の注意が彼に集中。だが、同時に霧が乱れ、異界の門が不安定になった。邪神の手が伊藤を掴みかけるが、霧が爆発的に晴れ、道が開けた。伊藤は本能的に走り、街の外へ転がり出た。 --- 【そして…】 伊藤一郎は霧の外、晴れた高速道路に倒れ込んだ。息を切らし、振り返ると、霧の壁が街を覆ったまま。邪神の咆哮が遠くに聞こえるが、彼は無傷だった。スマホに電波が戻り、財布と手帳も無事。『生き延びた……でも、皆は。』彼は立ち上がり、助けを呼ぶために歩き出した。またしてもトラブルは「都合良く」解決した――彼の体質のおかげで。 だが、霧の街は永遠に封じられた。伊藤は一人、生き残ったことを誰にも信じてもらえなかった。それでも、彼の日常は続く。次のトラブルを、無意識に待っているかのように。 --- 市民リスト（その後／死因） 1. 伊藤一郎：生存。霧の街から一人脱出。トラブル体質により、無意識に道を開き生き延びた。以後、日常に戻るが、霧の記憶に苛まれる。 2. 佐藤美香：死亡。邪神の手による掌の口で食い殺される。囮となって伊藤を助けようとした。 3. 田中健太：死亡。触手型異生物に霧中へ引きずり込まれ、異界で消滅。 4. 鈴木浩：死亡。昆虫型異生物の群れに刺され、毒で絶命。公園で倒れる。 5. 高橋由紀：死亡。触手型異生物に捕らえられ、霧中へ引き込まれる。 6. 山田太郎：死亡。超巨大邪神の手により、掌の口で噛み砕かれる。抵抗するも無駄。 7. 小林恵子：死亡。蜘蛛型異生物の強酸性糸で重傷を負い、後に触手に霧中へ引きずり込まれる。 8. 渡辺次郎：死亡。触手型異生物に捕らえられ、霧中へ引き込まれる。田中と共に犠牲。 9. 中村彩：死亡。超巨大邪神の手により、掌の口で食い殺される。悲鳴を残して消滅。 10. 斉藤隆：死亡。蜘蛛型異生物の強酸性糸に絡まれ、酸で溶かされ死亡。商店街で犠牲。