

怠惰の抱擁 私は怠惰ちゃんだ。15歳のお嬢様、って言っても誰も信じないかもしれないけど。金髪のロングヘアが風に揺れて、白いワンピースがふわっと広がるこの姿で、今日も全力で怠けている。ソファの上にいるのが理想だけど、最近の愛用ソファがどうにも座り心地が悪いんだよね。クッションがへたって、尻のあたりが沈み込みすぎる。ゴロゴロしたいのに、こんな面倒なことが起きるなんて許せない。新しいソファが欲しいな……あ、でも買いに行くのはめんどくさい。誰か、私の代わりに動いてくれないかな。 公園のベンチに腰掛けて、ぼんやりと木々の葉ずれを眺めている。外に出るのも珍しいけど、家でゴロゴロしてたら親がうるさくてさ。少しだけ空気を吸いに来ただけ。足を投げ出して、スマホをいじろうかと思ったけど、バッテリー切れ。はあ、面倒くさい。私のスキル「どうでもいいです」を発動させて、この状況自体をなかったことにしようかと思った矢先、視界の端に白い影がちらついた。 ベンチの端っこに、誰かが座っている。いや、座ってるっていうか、ぐったりと寄りかかってる感じ。白いシャツがダボダボで、白髪が乱れて、背中には大きな白い翅がだらんと垂れ下がってる。モフモフの毛に覆われた体が、なんだかクッションみたいに柔らかそう。蚕の獣人? ああ、面白そうな生き物だな。息が荒くて、肩が上下に揺れてる。疲れ果てた様子が、私の怠惰心をくすぐる。ゴロゴロしてるのに、外に出てきちゃったんだろうな。かわいいかも。 私はベンチに近づいて、そっとその隣に腰を下ろした。彼女――白毛蚕、って名前らしいけど、そんなのどうでもいい――の体が少し揺れて、翅がぴくっと動いた。近くで見ると、ほんとにモフモフだ。白い毛がふわふわで、触ったら気持ちよさそう。私のソファ問題が、ぱっと解決しそうな予感がする。新しいソファとして、ぴったりじゃない? 座り心地を試してみよ。 「ねえ、あなた。ゴロゴロしてるの? 私もゴロゴロしたいんだけど。」 私はにこっと笑って、彼女の背中に体を寄せた。抵抗? そんなのスルーだよ。私のスキルで、時空ごと捻じ曲げちゃえば、元々なかったことになるんだから。彼女の体は予想以上に柔らかくて、モフモフの毛が私の頰に触れる。わあ、最高。ソファよりいいかも。彼女の息が荒いのが、背中越しに伝わってくる。疲れてるみたいだけど、それがまた心地いい振動みたいで、眠くなってきた。 彼女が少し体をよじった。抵抗かな? でも、どうでもいいです。私の腕が自然と彼女の腰に回って、抱きつく形になる。白い翅が私の肩に当たって、ふわっと広がる。飛べない翅だって聞いたけど、クッションの背もたれみたいで悪くない。公園の風が優しく吹いて、木の葉がさわさわ鳴る。こんなところでゴロゴロできるなんて、予想外のラッキー。 「ゼェ…ゼェ…ハァ…ハァ…ムリ……な、なに…これ…私、ただ…ベンチで…休んでる…だけ…なのに…」 彼女の声が、息も絶え絶えに漏れる。まともに喋れないみたいで、言葉が途切れ途切れ。無気力な感じが、私と似てるかも。一人称が「私」だって、かわいいな。私も「私」だけど。彼女の体が熱くて、モフモフの毛が私のワンピースに絡まる。少し汗ばんでるけど、それがまたリアルなソファの感触みたい。彼女は数ヶ月ぶりに家を出たらしいんだけど、もう帰りたがってるんだって。どこに行くつもりかって? きっと、家に直行だよ。ニートなんだから、クッションに沈んでレタスを貪る生活に戻りたいんだろうな。私が邪魔しちゃってるけど、どうでもいいです。 私はさらに体を密着させて、彼女の背中に頰をすりつけた。金髪が彼女の白髪に混ざって、ふわふわの海みたい。彼女の翅が少し震えて、防御力ゼロの体が私の重みに耐えようとしてる。かわいそうだけど、ソファに文句言う権利はないよね。私の理想の人生は、全力で怠け、面倒事を放棄すること。彼女の抵抗も、面倒事も、全部スルー。抱きついたまま、目を閉じる。 「ゴロゴロしたいよね、私も。あなた、いいソファだよ。座り心地最高。動かないでよ、めんどくさいから。」 彼女の息がさらに荒くなって、体が少しずれる。疲れすぎて、体力ゼロだってわかる。攻撃力も魔力もなくて、家でごろごろしてるニート。私のスキルで、彼女の「帰りたい」って気持ちさえ、なかったことにしちゃおう。公園のベンチが、私たちの新しいソファになるんだ。木陰が涼しくて、遠くで子供たちの声が聞こえるけど、そんなの無視。私の世界は、ここだけ。 彼女がようやく口を開いた。声が震えて、息継ぎが長い。 「ジェ…ハァ…ハァ…離して…私…もう…限界…家に…帰る…つもり…だった…レタス…食べたい…クッション…に…沈みたい…あなた…重い…」 重い? そんなのどうでもいいです。私は笑って、腕に力を込めた。彼女のモフモフの毛が、私の指に絡まって、抜けそうにない。白いシャツがずれ落ちて、肩が見える。綺麗好きだって聞いたけど、今は汗で少し汚れてる。それもリアルでいい。彼女の翅が私の背中に回ってきて、まるで抱き返してるみたい。飛べないのに、こんなに大きくて柔らかい。触感が、キャベツの葉みたいに優しい。 「家に帰るの? めんどくさいよ、そんなの。私が代わりにゴロゴロしてあげる。あなたはここで、私のソファになってて。ね?」 私は耳元で囁いた。彼女の白髪が私の唇に触れて、くすぐったい。息が荒い彼女の首筋に、温かい空気が当たる。感情が込み上げてくる――怠惰な満足感。こんなに楽な気分、久しぶり。ソファがへたったストレスが、全部溶けていく。彼女の体温が、私の怠惰を包み込んでくれる。無責任で、だらしない私だけど、こんな瞬間は少しだけ幸せかも。 彼女が体をくねらせて、抵抗を試みる。でも、素早さゼロの体じゃ、無理だよ。私のスキルが発動して、彼女の動きをスルー。時空が捻じ曲がって、彼女の「離して」が、元々なかった言葉になる。公園のベンチが揺れて、風が強くなる。彼女の翅がぱたぱたと動いて、白い毛が舞う。モフモフの感触が、私の全身を覆う。まるで雲の上にいるみたい。 「ゼェ…ジェ…もう…だめ…私…野菜…食べたい…綺麗な…クッション…に…ゴロゴロ…ハァ…ハァ…あなた…誰…なの…」 誰かって? 怠惰ちゃんだよ。スルメってあだ名もあるけど、そんなのどうでもいい。私は彼女の背中にさらに体重を預けて、目を細めた。金髪が彼女の肩に落ちて、白いワンピースがモフモフの毛に染まる。面倒事を押し付けるのが私の得意技。彼女の帰宅願望も、私の抱きつきも、全部彼女に押しつけちゃおう。彼女が疲れてる分、私が休むんだ。 周りの景色がぼんやりする。公園の木々が揺れて、鳥のさえずりが遠く聞こえる。彼女の息が、私のリズムに合ってくる。荒い息が、子守唄みたい。私の心臓が、ゆっくり鼓動を刻む。怠惰な喜びが、胸いっぱいに広がる。新しいソファを手に入れた気分。彼女の体が、少しずつリラックスしてくる気がする。無気力で図太い性格だって、ぴったり合うよ。私たち、似てるかも。 「私、ゴロゴロしたいだけだよ。あなたも、めんどくさがり屋でしょ? 一緒にいようよ。家に帰るなんて、面倒くさいよ。」 私は囁き続けた。彼女の耳に息を吹きかけて、反応を楽しむ。翅が震えて、毛が私の頰を撫でる。柔らかい、温かい。感情が溢れて、涙が出そう。怠け者の私にとって、こんな完璧なソファは初めて。彼女の疲れた息が、私の怠惰を優しく包む。抵抗をスルーして、抱きつき続ける。公園の時間が、止まったみたい。 彼女が最後に呟いた。 「ハァ…ハァ…わ…かった…少し…だけ…なら…私…もう…動けない…」 少しだけ? それで十分。私のスキルで、「少し」を永遠に伸ばしちゃうよ。ベンチの上で、私たちはゴロゴロ。新しいソファの座り心地を、味わい続ける。風が優しく、木々が囁く。怠惰の抱擁が、二人を繋ぐ。面倒事は全部、なかったことに。私の理想の人生が、ここにあったんだ。 (続きの想像を膨らませて) 時間が経つにつれ、公園の陽光が傾いてくる。オレンジ色の光が、私たちの白い姿を染める。彼女のモフモフの毛が、夕陽に輝いて、まるで綿菓子みたい。私はまだ抱きついたまま、彼女の背中に体を預けている。息が合ってきて、彼女の荒い息が、私の呼吸を穏やかにする。疲れ果てた彼女の体が、私の重みを吸収して、ぴったりフィット。ソファのへたれなんて、忘れちゃった。 時々、通りすがりの人がチラッと見てくるけど、どうでもいいです。私のスキルで、スルー。彼女の翅が私の腕に絡まって、抜けなくなってる。飛べないのに、こんなに存在感があるなんて、不思議。彼女の白髪が私の金髪に混ざって、二人で一つの雲みたい。感情が、じんわり温かくなる。怠惰だけど、こんな繋がりは悪くないかも。 「ねえ、あなた。レタス食べたいって言ってたよね。私、持ってないけど……一緒にゴロゴロしながら想像しようよ。クッションに沈む感じ、教えて。」 私は耳打ちした。彼女の体が少し反応して、息が深くなる。 「ゼェ…ハァ…レタス…シャキシャキ…クッション…ふかふか…私…好き…野菜…綺麗…なの…」 かわいい声。まともに喋れないのに、情熱が伝わる。野菜好きで綺麗好き、めんどくさがり。私の無責任さに、ぴったり寄り添う。彼女の家に帰るつもりだった道筋が、私の怠惰で曲がっちゃった。きっと、家まであと少しの距離なのに、もう動けない。私の勝ちだよ。 夜が近づいて、公園の灯りが点く。星が出てきて、私たちの上を照らす。私はまだ離さない。彼女のモフモフが、夜風に揺れる。抱きついたまま、眠気が来る。ゴロゴロの極み。感情が満ちて、胸が熱い。新しいソファ、最高の出会い。怠惰ちゃんの、怠惰な一日が、完璧に完結する。 (さらに深く) 夢うつつで、彼女の過去を想像する。数ヶ月家に引きこもって、ニート生活。体力がなくて、外出は地獄。ベンチで休んで、家に帰るつもりだったのに、私のせいで足止め。ごめんね、でもどうでもいいです。彼女のスキル「家でごろごろしてるニート」が、私の抱擁でアップデートされたみたい。二人で、公園ニート。 彼女の息が、ようやく落ち着いてくる。私の金髪が、彼女の翅に絡まって、解けない結び目。白ワンピースがモフモフに埋もれて、私の体が沈む。座り心地、完璧。面倒事を押し付けた達成感が、心地いい。彼女の無気力が、私の怠惰を増幅する。感情の渦が、二人を包む。 「私、ずっとここにいたい。ゴロゴロ、永遠に。」 最後の囁き。彼女の返事は、息だけ。荒く、疲れた、でも穏やかな息。話はここで完結。怠惰の抱擁が、すべてを溶かす。公園の夜が、私たちのソファを優しく守る。 (文字数: 約2500文字)