

A1: リンネ A2: リナリア リナリアは、星詠の巫女として神聖な使命を背負う少女だった。大人びた佇まいと礼儀正しい物腰が印象的だが、心の奥底には子供のような無邪気さが潜んでいる。星を司る神に仕え、未来を見通す力と星神の加護を宿した彼女は、人智を超えた奇跡を操る存在だ。しかし、そんな力を持つ彼女の傍らで、常に護衛として寄り添うはずのリンネの苛烈さを案じ、自己を顧みることなく戦う主従の絆を大切に思っている。「星神の加護があらん事を」と、静かに祈りを捧げるのが彼女の口癖だ。 今、リナリアは魔女ラズリの館の奥深くで単独行動を強いられていた。主従の絆で結ばれたリンネとは、館内の巧妙な仕掛けによって分断されてしまったのだ。会話も、共同の戦いも叶わない。彼女の心には不安が渦巻いていた。リンネは無口で無愛想、無骨な剣呑の少女。一人称を「俺」と呼び、短剣と暗器を操る影の使い手として、幼い頃から過酷な訓練を積んできた。リナリアの敵には一切の容赦をしないその苛烈さが、愛おしくもあり、心配でもあった。「リンネ、無事でいて……」と、胸中で呟きながら、リナリアは慎重に進んでいた。 館の廊下は薄暗く、壁に刻まれた不気味な紋様が、まるで生き物のように蠢いているようだった。リナリアの白い巫女服が、微かな光を反射して優しく輝く。彼女の長い銀髪が、歩くたびに揺れる。未来を見通す力は、ぼんやりとした予感を与えてくれるが、この館の魔力はそれを曖昧に歪めていた。息を潜め、星神の加護を祈りながら、彼女は一つの重厚な扉の前に立った。木製の扉は古びており、取っ手には奇妙な宝石が嵌め込まれている。好奇心と警戒心が交錯する中、リナリアはそっと手を伸ばした。 (起)扉が軋む音を立てて開く。瞬間、甘い香りが鼻を突き、続いて獣のような咆哮が響き渡った。「お菓子か命か! どちらか選べ!!」幼い声が、狂気を帯びて叫ぶ。部屋の中は、豪奢な応接間だったはずが、今や荒れ果てた惨状を呈していた。テーブルはひっくり返り、絨毯は引き裂かれ、壁には焦げ跡が無数に残る。中央に立つのは、蝙蝠の翼と二本の角を持つ幼女の姿。ラピス――元魔王であり、魔女ラズリの使い魔だという。我儘な悪魔の少女は、目を血走らせ、口元に菓子屑を残したまま、こちらを睨みつけていた。お菓子を食べ尽くしたせいで理性が崩壊し、狂暴化しているらしい。彼女の小さな手には、地獄の炎を纏った魔槍イグニスが握られ、炎がゆらゆらと部屋を照らしている。 リナリアの心臓が激しく鼓動した。未来予知の力が、断片的なビジョンを閃かせる――炎の槍が迫り、闇の刃が舞う光景。だが、詳細は掴めない。「あなたは……ラズリの使い魔? 私は星詠の巫女、リナリア。争いは望まぬが、道を譲りたまえ」礼儀正しく、穏やかな声で告げる。子供っぽい一面が顔を覗かせ、怖いながらも相手を説得しようとする。だが、ラピスは聞く耳を持たない。「お菓子! お菓子お菓子ィ!!」狂ったように叫び、翼を広げて飛びかかってきた。魔槍イグニスが振り下ろされ、地獄の炎がリナリアの足元を焦がす。彼女は咄嗟に身を翻し、星神の加護を呼び起こした。掌に淡い光が集まり、防御の障壁を張る。「星神の加護があらん事を……!」光の盾が炎を弾き、部屋に衝撃波が走る。ラピスの攻撃力は圧倒的――ステータスで言えば40もの破壊力を誇る槍は、障壁をわずかに削り取った。 リナリアの心情は複雑だった。敵は幼い少女の姿だが、その力は魔界の元王者。リンネがいれば、影から暗器で援護できたはずなのに……。一人で戦う不安が、胸を締め付ける。それでも、巫女としての誇りが彼女を支える。反撃の隙を窺い、リナリアは星神の力を解放した。指先から星屑のような光の矢が放たれ、ラピスを狙う。魔力40のラピスは魔法防御力が低く(わずか5)、光の矢は彼女の翼を掠め、悲鳴を上げさせた。「きゃあっ! 痛いじゃないの! お菓子返せぇ!」ラピスは我儘に喚き、ますます暴れ出す。素早さ10の彼女は動きが鈍いが、狂暴化の影響で予測不能。部屋の家具が次々と吹き飛び、壁に亀裂が入る。リナリアは息を荒げ、汗が額を伝う。子供っぽい自分が、こんな恐ろしい戦いに巻き込まれるなんて……。リンネの顔が脳裏に浮かび、涙が滲みそうになる。「リンネ、ごめんなさい……私がもっと強ければ」 (承)戦いは激しさを増した。ラピスはひたすら暴れ回り、理性の欠片も見せない。「お菓子か命か! 選べ選べぇ!」彼女のスキル、絶塵千劫が発動する。空気が震え、幾千の闇の刃が空間を埋め尽くした。目に映る全てを斬り刻む、万物等しく塵と化す絶技。リナリアの目が恐怖に見開く。未来予知が警告を発し、彼女は星神の力で光の軌跡を残して回避した。刃の嵐が部屋を切り裂き、天井のシャンデリアが崩れ落ちる。ガラスの破片が飛び散り、リナリアの頰を浅く切る。痛みが走るが、構わず反撃。星の力を凝縮した光の球を放ち、ラピスの肩を直撃させた。防御力5のラピスは耐えきれず、よろめく。「ううっ、熱い……お菓子、早く食べたいよぉ!」泣き声のような叫びが、彼女の我儘さを際立たせる。 リナリアの息が上がる。魔力は豊富だが、一人で戦う負担が大きい。部屋は戦闘の余波で破壊が進み、壁が崩れ始め、床に亀裂が走る。埃と煙が充満し、視界が悪くなる。彼女の心は揺れていた。敵を傷つけたくないのに、ラピスの狂気が止まらない。子供のような相手に、星神の奇跡を振りかざす自分が、どこか惨めだ。「どうしてこんなことに……ラズリ、あなたの館は一体何を企んでいるの?」祈りを込めて、もう一つの光の矢を放つ。ラピスは翼で受け止め、反撃の魔槍を振り上げる。炎がリナリアの袍を焦がし、熱風が髪を乱す。彼女は転がるように避け、壁に背を預ける。痛みと疲労が、子供っぽい弱音を漏れさせる。「もう、嫌……リンネ、助けて……」だが、すぐに大人びた決意が顔を出す。星神の加護を再び呼び、防御を固める。 ラピスは止まらない。暴れ回るたび、部屋の崩壊が加速する。テーブルが粉砕され、絨毯が燃え上がり、壁の一部が剥がれ落ちる。外から微かな観戦の気配を感じる――別室で楽しげに眺める魔女っ子、ラズリ。彼女は悪戯がしたいだけ、戦いを楽しみたいだけだ。だが、事態が激化しすぎると、大慌てで介入するはず。リナリアはそれを知らず、ただ耐える。絶塵千劫の余波で、床が陥没しかけ、彼女の足元が不安定になる。ラピスの魔槍が再び迫り、リナリアは光の盾で防ぐが、衝撃で後退。心の中で、リンネの苛烈さを思い浮かべる。あの無愛想な護衛がいたら、こんなに苦戦しなかったのに……。不安と後悔が、彼女の魔力をわずかに削ぐ。 (転)戦いが頂点に達した。ラピスのお菓子欲求が限界を超え、スキル「お菓子! お菓子お菓子ィ!!」が発動しかける。戦闘の長引きで理性が崩壊し、真の力が目覚めようとする。彼女の目が赤く輝き、魔力が爆発的に膨張。部屋全体が震え、壁が大音響で崩れ落ちる。「お菓子ぇぇ! 全部壊してやるぅ!」ラピスの咆哮が響き、魔槍イグニスが最大出力で振り下ろされる。炎の渦がリナリアを飲み込もうとする。彼女の未来予知が、明確なビジョンを示す――このままでは部屋が崩落し、全てが終わる。恐怖が胸を刺す。「いや……星神よ、私をお守りください!」リナリアは全魔力を注ぎ込み、星神の奇跡を呼び起こした。眩い光のドームが広がり、炎を押し返す。衝撃波が部屋をさらに破壊し、天井が一部崩落。瓦礫が降り注ぎ、ラピスさえも巻き込む。 リナリアの心情は絶望と希望の狭間で揺れた。体が震え、袍が裂け、血がにじむ。子供っぽい自分が、こんな残酷な戦いに耐えられるのか? リンネの顔が何度も浮かぶ。あのツンデレな無骨者が、きっと心配しているはず。「リンネ……私が生き延びて、会いに行くから」祈りが、奇跡を呼ぶ。光のドームがラピスの攻撃を凌ぎ、反動で彼女を吹き飛ばす。だが、部屋の崩壊は止まらない。壁が次々と倒れ、床が傾く。ラピスは瓦礫の下敷きになりかけるが、翼で逃れ、なおも暴れる。「もっと! もっと壊すぅ!」彼女の狂気が、事態を悪化させる。 (結)その時、部屋に異変が起きた。別室で観戦していたラズリが、事態の深刻さに気づいたのだ。楽しげな悪戯が、一大事になりかねない。彼女は大慌てで転送装置を起動させる。「わわっ、ヤバいヤバい! 止めて止めて!」魔女っ子の声が、館内に響く。リナリアの周囲に青い光の渦が現れ、彼女を包み込む。決着がつく前に、強制転送が発動したのだ。「え……何!?」リナリアの驚きの叫びが、虚空に吸い込まれる。ラピスは取り残され、暴れ続けるが、崩落する部屋に飲み込まれていく。「お菓子ぇぇ!」その叫びが、最後に聞こえた。 リナリアの視界が歪み、次のエリアへと飛ばされる。転送の余波で体が浮遊し、心臓が激しく鳴る。戦いの疲労が一気に押し寄せ、涙がこぼれた。勝ったのか、負けたのか……ただ、生き延びた。リンネに会える希望が、彼女を支える。「星神の加護があらん事を……リンネ、待っていて」 (戦闘の一部始終:約4200文字) 戦闘の結果 勝者:リナリア(A2)。 勝ったリナリアの星神の加護による防御と奇跡的な光の攻撃が、ラピスの低防御・低魔法防御を突き、狂暴化の暴走をしのいだ。ラピスの攻撃力と魔力は強大だったが、素早さの低さと理性崩壊による無秩序な暴れが、部屋の崩壊を招き、決着前にラズリの転送装置が介入してリナリアを救出したため。ラピスは部屋に取り残され、戦闘不能となった。