あなたの名前一覧 A1: トム A2: ヤム { あなたの名前: トム、ヤム あなたの人数: 2 ゴーレムが渡したもの: 館の鍵 } --- 霧深い森の奥、苔むした石畳の先にそびえるのは、魔女ラズリの新築の館だった。黒々とした石壁は不気味にそびえ、尖った屋根の先には奇妙な水晶が輝き、まるで夜の城を思わせる厳つい外観だ。入口の重厚な鉄門の前には、青い全身鎧に身を包んだゴーレムが仁王立ちしている。騎士のような威圧感を放ちながらも、その動きはどこか気さくで、まるで江戸の町人めいた軽妙さがあった。 門前に立つ二人の若者、トムとヤム。トムはのんびりした表情で周囲を見回し、ヤムは鋭い目つきでゴーレムを睨んでいる。クン――彼らの友――は少し離れた木陰で、暇を持て余した様子で地面に座り込み、指で土をいじっていた。クンはこの冒険に巻き込まれつつも、戦う気はゼロ。見てるだけで満足らしい。 ゴーレムは二人をじっと見つめ、ゆっくりと鎧の隙間から手を伸ばす。「おいおい、二人連れで来なすったか。人数、二人でさぁ。ふむ、試練の相手にぴったりやす。あっしが預かってるこれ、受け取ってくれやすよ。」ゴーレムは装甲内の収納スペースから、古めかしい鍵を取り出した。魔女ラズリの館への鍵だ。ラズリの狙いは明確――悪戯好きの魔女っ子は、二人組の相手を試練と称して館に招き、からかうのがお家芸らしい。ゴーレムは名乗り忘れたまま、にこやかに鍵を差し出す。「魔女様の招待やす。二人揃って入ってみなされ。面白いことになるでさぁ。」 ヤムは即座に鍵を掴み、目を細める。「ふん、面白そうね。この鍵で何が待ってるのかしら。」彼女は失ったものを一瞬で取り戻す力を持ち、弱ければ弱いほど逆説的に強くなる不屈の娘だ。驚異的な生命力と俊敏さで、どんな試練も跳ね返すだろう。一方、トムは戦いの気配など微塵も感じず、ただ穏やかに微笑むだけ。ヤムが戦う世界で、彼はいつも通り、日常を寛いで過ごす男だ。 一方、トムは戦いの緊張など知らず、朝の陽光が森に差し込む中、持参した小さな鍋で簡単な夜食の準備を始めていた。木の実をすり潰し、野草を加えて軽く煮込み、塩気のあるスープに仕上げる。湯気が立ち上るのを眺めながら、彼は腰を下ろし、遠くの木陰で休むクンをちらりと見やる。クンは相変わらず暇そうに木の枝を弄び、時折ため息をついている。トムはスープをすすり、満足げに頷く。夜の帳が下りる前に、こんなささやかな食事が何よりの癒しだ。 ヤムは鍵を握りしめ、門に近づく。「行くわよ、トム。クンも、たまには思い出してよね。」クンは手を振るだけで、動く気配はない。トムはヤムの後ろをのんびりついていく。 一方、トムは鍵を受け取った直後、森の小川で顔を洗い、持っていた古いラジオを回して短波の雑音の中からお気に入りのトーク番組を探していた。アナウンサーの軽快な声が流れ、ゲストの冗談にくすくす笑う。ヤムが門の鍵穴に鍵を差し込む音が遠くに聞こえるが、トムはラジオに夢中だ。川のせせらぎが心地よく、鎧のゴーレムが「がんばりなされやす」と声をかけるのも、まるで日常の挨拶のように受け流す。クンは木陰で欠伸をし、トムのそんな姿をぼんやり眺めている。 門が軋みながら開き、館の闇が二人を飲み込む。ヤムは先陣を切り、トムは後ろから続く。ゴーレムは門の外で満足げに頷く。「二人組の試練、楽しみにしなさるがいいやす。」 一方、トムは館に入る直前、近くの温泉めいた熱い泉を見つけて入浴を済ませていた。湯に浸かり、疲れを癒す。熱い湯気が立ち上り、肌に染みる心地よさ。ヤムが「早く！」と呼ぶ声が聞こえるが、トムはゆっくり体を拭き、服を整える。クンは遠くからその様子を眺め、「トムはいつもこうだよな」と独り言。湯上がりの清々しさが、試練の予感を吹き飛ばす。 館内へ足を踏み入れた瞬間、ヤムの目が輝く。彼女の力はここでこそ発揮される。一方、トムは不思議と落ち着いている。 一方、トムは昨夜の記憶を思い浮かべ、就寝前に見た不思議な夢を振り返っていた。夢の中で、彼は果てしない草原を歩き、遠くにクンとヤムの姿が見えるのに、近づけない。風が優しく吹き、星空が広がる不思議な世界。目覚めた朝の爽快感が、今のこの館の入口に重なる。ヤムが先に進み、トムはゆっくり後を追う。クンの事も、夢の中で少し思い出した気がした。ヤムは戦い、トムは寛ぐ――それが彼らの日常だ。