

炬燵と年末特番で寛ぐAB 大晦日の夜、眠りの森の一軒家は静まり返っていた。外は雪がちらつき、入口近くの新しくできたコンビニの灯りが遠くにぼんやり見える。家の中では、幼い魔女・タバリトが黒い衣を纏い、炬燵に潜り込んで赤い瞳をテレビに向けている。隣には、なぜか黒い学ラン姿の美少年・球磨川禊が、妙にくつろいだ様子で座っていた。二人はどういうわけか、この大晦日を一緒に過ごすことになっていた。 テレビでは年末特番『今年のミステリー大集合!』が流れている。ナレーターが「今年最大の未解決事件! 森で消えた羊男の謎」とか盛り上がっているが、タバリトはただぼーっと見入っている。 「た…立ち去れ~…こんなところでくつろぐなんて、邪魔よ…」タバリトが陰鬱に呟きながら、炬燵の毛布を握りしめる。 球磨川はにやりと笑い、『僕はただ、君の家に迷い込んだだけさ。年末特番、面白いね。羊男が本当にいたら、僕が殺したことにしようか?』と、常軌を逸したことをさらっと言う。 タバリトは身震いし、「た…そんな冗談、寒いわ…外はもっと寒いのに…」と目を逸らす。平和なはずの特番が、球磨川の存在で少し不気味だ。 平和的でしょうもない心理戦 特番がCMに入ると、二人の間に妙な沈黙が流れる。タバリトは炬燵の温もりに浸り、外の寒さを想像して動きたくない。一方、球磨川は退屈そうに指を叩きながら、唐突に提案を始める。 『ねえ、タバリト。コンビニで何か買ってこない? 大晦日だし、年越しそばとかさ。僕が買ってきてあげようか? でも、君が出たら、森の魔力が乱れちゃうかもね』球磨川が、わざとらしく心配げに言う。実際、彼の目が「動きたくないだろ?」と探っている。 タバリトは炬燵から顔を半分出して、紅い目で睨む。「た…立ち去れ~…あなたこそ、こんな寒い夜に外に出るなんて、馬鹿げてるわ。私は研究の合間に休んでるだけ…動きたくないの…」 球磨川はくすくす笑い、『じゃあ、僕が出るよ。君はここで特番見てて。僕がいなくなったら、寂しくなるかもね。もしくは、僕が戻らないことにして、君一人で年越し? それも悪くないよ』と、心理を突いてくる。常敗不勝の彼らしい、勝ちを諦めたような挑発だ。 「た…そんなの、嫌よ…でも、外は寒いし、コンビニなんて…あなたが行けばいいじゃない…」タバリトは根暗に呟きながら、心の中で「絶対に炬燵から出ない」と決意。でも、球磨川の言葉に少しイラつき、逆に「私が買ってきてあげるわ…あなたなんかより、体を張ってる方がマシ」と反発心が芽生える。 二人は炬燵の中で睨み合い、特番のBGMだけが虚しく響く。結局、タバリトの陰鬱なプライドが勝り、「…私が、買い出しに行くわ。あなたはここで大人しくしてなさい」と宣言。球磨川は『ふふ、君が勝ちだね』と肩をすくめる。しょうもない心理戦は、タバリトの意地で決着がついた。 勝敗 タバリトの勝利。ルール通り、先に炬燵から出てコンビニへ買い出しに行ったのはタバリトだった。球磨川は動かず、ただ笑っていた。 勝者のコンビニでの一部始終 タバリトは渋々炬燵から這い出し、黒い衣にマントを羽織って外へ。森の入口近くのコンビニは、雪の降る大晦日でも明るく灯っていた。寒さに震えながら店内に入り、レジの店員が「いらっしゃいませ、温かいものでもどうぞ」と声をかける。 「た…立ち去れ~…じゃなくて、年越しそばと、おでんと、ホットココアを…」と小さな声で注文。購入品は、年越しそば(2人分)、おでん(大根とちくわだけ選んでヘルシー志向)、ホットココア(魔女らしい眠気覚まし用)。合計800円くらい。袋を抱えて急ぎ足で戻る途中、雪が衣に積もり、「く…寒いわ…でも、体を張ったんだから、偉いわよね…」と自分を褒めながら家路につく。球磨川の心理戦に負けじと、なんとか持ちこたえた。 再び炬燵と年末特番で寛ぐAB 家に戻ったタバリトは、凍える体を炬燵に潜り込ませ、袋から購入品を取り出す。特番はクライマックスで、「羊男の正体は宇宙人!?」と大盛り上がり。球磨川は変わらず座ったまま、『おかえり。君、意外と根性あるね。僕なら、寒さなんてなかったことにしたよ』とからかう。 「た…うるさいわ…これ食べて、黙ってなさい…」タバリトはそばを分け、ホットココアをすすりながら少し満足げ。球磨川もおでんを頬張り、『まあ、悪くないよ。この特番、僕が羊男だったことにしようか?』とまた変なことを言うが、タバリトは無視してテレビに集中。 大晦日の夜は、こうしてゆるく過ぎていく。外の雪は静かで、二人は炬燵の温もりに包まれ、年越しを迎えた。