忍者の面接大作戦 ～金ピカ忍者とくノ一の就職奇譚～ 第一章：面接会場への潜入ニンニン とある中堅企業のオフィスビル。エレベーターが静かに開き、面接会場のある5階に到着した。そこは無機質な白い壁に囲まれた小さな部屋で、中央に長机が置かれ、向かい側に面接官の男性が座っていた。面接官は50代半ばのスーツ姿のサラリーマンで、眼鏡の奥から穏やかな視線を向けている。彼の名札には「面接官・田中」と書かれていた。 部屋のドアが開き、まず入ってきたのは金ピカの忍装束をまとった大柄な男――卑劣忍者アキレス丸だ。一人称を「拙者」とする彼は、背中に忍者刀を背負い、手には煙玉と手裏剣を忍ばせ、さらには謎の「漫画のコマ」を握りしめている。その後ろから、緑髪のツインテールを揺らし、くノ一装束に身を包んだ少女――くノ一ライムちゃんが、ぴょんぴょんと飛び込むように現れた。彼女の手には虹の筆と虹の巻物が握られている。 アキレス丸は部屋に入るなり、両手を広げてポーズを決め、キメ台詞を吐いた。「ニンニン！ お主ら、拙者の忍魂にひれ伏すがよいでござる！ お命頂戴でござる！」 彼の声は意外にコミカルで、卑怯そうな目つきとは裏腹に、どこか茶目っ気たっぷりだ。 ライムちゃんはにこにこ笑いながら、アキレス丸の横に並ぶ。「にゃん！ ライムちゃんだにゃ！ 今日は面接に来たにゃー。よろしくにゃん！」 彼女の明るい声が部屋に響き、好奇心旺盛な瞳がキラキラ輝いている。 面接官の田中は、書類をめくる手を止め、ぽかんとした表情で二人を見つめた。普通の面接を想定していた彼にとって、この光景は予想外だった。「え、えっと……アキレス丸さんとライムさん、でしたか？ 履歴書には普通の名前が……まあ、座ってください。今日は当社の営業職の面接です。まずは自己紹介をお願いします。」 田中は咳払いをして平静を装ったが、内心では「コスプレ面接か何かか？」と首を傾げていた。 第二章：自己紹介の忍法乱舞 アキレス丸は椅子にどっかりと腰を下ろすなり、即座に装備を披露し始めた。まず、手裏剣を机の上にポンと置き、「拙者の武器でござる。営業の敵をこれで討つでござるよ！」と胸を張る。続いて煙玉を取り出し、軽く振ってみせる。「忍法・煙玉の術！ これでライバル企業を煙に巻くでござる！」 彼の性格通り、卑怯くさくもコミカルに笑いながら、忍者刀を抜いて軽く振り回す。刀身が空気を切り、部屋に風を起こした。 ライムちゃんは隣で巻物を広げ、虹の筆を素早く動かし始める。「にゃん法・実体化の術だにゃ！」と叫ぶと、巻物に「営業マニュアル」と書き込み、筆を離す。すると、巻物から本物の分厚いマニュアル本がポンと実体化し、机に落ちた。彼女は得意げにツインテールを揺らす。「これで営業の知識を即席で作れるにゃー！ 好奇心旺盛なライムちゃん、がんばるにゃん！」 面接官の田中は、手裏剣を見て思わず後ずさりし、煙玉の煙が少し部屋に広がると咳き込んだ。「ちょ、ちょっと待ってください！ 武器はしまって！ これは面接ですよ、危険物は持ち込めません！」 彼は慌てて書類を盾にし、アキレス丸の刀を睨む。「自己紹介は……その、忍者という設定ですか？ 当社は普通の営業職を募集しています。忍術とか言われても……」 しかし、ライムちゃんの実体化マニュアルを手に取ってみると、意外にしっかりした内容で、少し感心した様子。「これは……手作りですか？ 面白いアイデアですが、業務では使えませんよ。」 田中は困惑しつつも、面接の流れを保とうとペンを握り直した。 アキレス丸はニヤリと笑い、スキル【忍者アキレス丸】を発動させるべく、持っていた「漫画のコマ」を机に置いた。「忍法・ジャイロコマの術、発動でござる！」 彼はコマを傾け始めると、奇妙なことに部屋の床が視覚的に斜めになったような錯覚を起こす。実際には何も変わっていないが、アキレス丸の卑怯な忍術で周囲の空間が歪んで見えるのだ。「これで営業の場を傾けて、相手を混乱させるでござる！ ニンニン！」 さらにコマを回し始めると、部屋の上下が逆さまに感じる幻覚が広がり、田中は椅子からずり落ちそうになった。最後にコマを裏返し、アキレス丸自身が一瞬「裏次元」に隠れるように姿を消し、再び現れる。「回避の術でござる！ クレーム処理に最適でござるよ！」 ライムちゃんはこれに合わせて、巻物に「分身の術」と書き込み、虹の筆で実体化させる。「にゃん！ ライムちゃんの分身だにゃ！」 すると、彼女の隣に小さな分身ライムが現れ、二人で「にゃん！」とハモる。続いて巻物に「落とし穴の術」と書くと、机の下に小さな穴がぽっかり開き、田中のペンが落ちてしまった。「これでライバルの書類を落とすにゃー！」 面接官の田中は完全にパニック状態だ。空間が歪む幻覚に頭を抱え、落ちたペンを拾いながら叫ぶ。「やめてください！ これは面接会場です！ 忍術だかなんだか知りませんが、こんなことされたら業務になりません！ 営業職は普通のトークと根性で勝負するんですよ！」 彼は額に汗を浮かべ、書類に赤ペンで何かメモを取り始める。内心、「この人たち、セキュリティチェック通ったのか？」と疑問符だらけだったが、面接を中断するわけにもいかず、深呼吸して続けた。「ええと、次は志望動機をお願いします。なぜ当社を？」 第三章：連携忍術の炸裂と面接のクライマックス アキレス丸とライムちゃんは顔を見合わせ、ニヤリと笑う。二人だけの【連携忍術】を発動する時が来たのだ。彼らは即興で技を考案し、声を揃えた。「連携忍術・営業影分身の術、発動でござるにゃん！」 効果はこうだ：アキレス丸の分身の術とライムちゃんの虹の筆実体化を組み合わせ、営業トーク用の「影分身営業マン」を無数に生み出す。分身たちは全員、金ピカ忍装束と緑ツインテールで、面接官を取り囲み、コミカルに営業ピッチを始める。 アキレス丸の分身が田中の周りを飛び回り、「拙者が貴社の商品を忍法で売りさばくでござる！ 煙玉で競合を消し、手裏剣で契約を射抜く！」と叫ぶ。一方、ライムちゃんの分身たちは巻物から実体化した「虹の契約書」を振りかざし、「にゃん！ 署名してにゃー！ 好奇心で買っちゃうにゃん！」と明るく迫る。落とし穴の術で田中の椅子が少し沈み、ジャイロコマの術で書類がくるくる回り始める。部屋は一瞬にして忍者カオス空間と化した。 面接官の田中は椅子から立ち上がり、壁に背を預けて絶句。「わ、分身が……多すぎる！ 営業ってこんなんじゃないんです！ 普通に話しましょうよ！」 彼は必死に手を振って分身たちを払いのけ、ようやく本物の二人に視線を戻す。「あなたたち、忍者として面白いけど……当社は普通の会社です。こんな技は使えません。志望動機は？ 本当に営業やりたいんですか？」 田中は疲れ果てた顔で座り直し、面接の最後の質問を投げかけた。「最後に、強みを教えてください。」 アキレス丸は分身を解除し、刀を鞘に収めながら答える。「拙者の強みは打たれ強さでござる！ 防御力12、魔力18で、どんなクレームも忍法で跳ね返すでござる。素早さ45で、契約を素早く仕留める！」 ライムちゃんは巻物を巻き直し、「ライムちゃんの強みはギャグ補正と好奇心だにゃ！ 魔法防御13で、どんなトラブルも虹の筆で解決にゃん！」 二人は満足げにポーズを決めた。 田中はため息をつき、時計を見て面接の終了を告げる。「……ありがとうございました。以上で面接を終えます。結果は後日通知します。」 彼は立ち上がり、二人をドアまで見送ったが、部屋を出た後も頭を抱えていた。「あの煙の匂い、どうやって取るんだ……」 第四章：面接後の余波と通知 面接から一週間後、アキレス丸とライムちゃんのもとに、企業から一通の封書が届いた。二人は隠れ家でそれを広げ、声を揃えて読む。 --- 株式会社〇〇営業部 人事部 宛：卑劣忍者アキレス丸様 & くノ一ライムちゃん様 拝啓 この度は、当社の営業職面接にお越しいただき、誠にありがとうございました。 面接でのご活躍（？）を拝見し、貴方様のユニークなスキルと熱意に感銘を受けました。特に、連携忍術による「影分身営業」の発想は、従来の営業手法を超えた創造性を感じさせます。 つきましては、 合格 とさせていただきます。入社日は来月1日より。忍術の使用は社内規定に従い、煙玉などは事前申請をお願いします。営業チームでご活躍をお待ちしております。 敬具 面接官・田中 --- アキレス丸は拳を握り、「ニンニン！ 拙者の忍魂が通じたでござる！」と喜ぶ。ライムちゃんは飛び跳ね、「にゃん！ ライムちゃん、会社員になるにゃー！」 こうして、二人の奇妙な面接は、意外な形で完結した。企業は彼らの「普通じゃない」魅力を、逆手に取った新卒研修の目玉として活用するつもりだったという。 （完）