影の森の激闘 深い森の奥、木々が絡みつくように生い茂る古道で、傭兵の二人――リナ・ウィンドストライクとアッシュ――は、魔物の群れに囲まれていた。夕陽が枝葉を赤く染め、地面にはすでに数体の獣人の死骸が転がっていた。依頼は単純だった。村を脅かす魔物の討伐。だが、この森の深部は予想外の罠に満ち、十数体の牙を剥く狼人たちが、唸り声を上げて二人を取り囲んでいた。 リナは槍を構え、ボサボサの赤髪を振り乱しながら、明るく大げさな笑い声を上げた。「わーお！ こいつら、目がギラギラしちゃって、まるで宴会の酔っ払いみたいじゃないの！ アッシュ、こっちは私が引きつけるわよ！ みんな、私の可愛い顔に夢中になっちゃえー！」彼女の声は森に響き渡り、雀斑の散る可愛らしい顔が、陽気な笑顔で輝いた。農家の末っ子として育ったリナは、家族思いの素朴な心で、こんな戦いさえも英雄譚のページのように楽しんでいた。首元に下げた活力酒の小瓶が揺れ、彼女は素早くそれを掴み、戦場で即席の傷薬を調合する準備を整えた。 アッシュは無言で大剣を肩に担ぎ、ゆっくりと振り下ろして空気を裂いた。鋼鉄製の超重量の刃が、父の遺した想い出を宿すように低く唸った。ボサボサの黒髪の下、細いが筋骨隆々の体躯を鉄鎧が覆い、ぶっきらぼうな目が敵を洞察する。「……無駄話は後だ。隙を見せろ。」彼の声は低く、配慮ある冷静さでリナに指示を出した。伝説の勇者である父の誇りを胸に、母の最期の言葉――「お前は強い子だから、きっと父さんを超える」――を信条とするアッシュは、戦いを"洞察"と"調整"の連続と見なしていた。魔物の群れを一瞥し、彼は戦法を再定義した。猛勢の一撃で防御を破壊する大剣術を基調に、狼人たちの動きを映し、自身の立廻を変える。 狼人たちが一斉に飛びかかってきた。先頭の巨体がリナに向かって爪を振り上げた。リナはオーバーリアクションで後ずさり、わざとらしく悲鳴を上げた。「きゃー！ 怖い怖い！ でも、ヴァルハラの英雄はこんなのへっちゃらよ！」彼女の槍は軽量設計の先端を閃かせ、後衛支援型の突きで敵の隙を突いた。エインヘルリアの訓練で学んだ戦術共有が活き、異文化の獣人たちの荒々しい突進を素早く適応。農家育ちの体力で長旅に耐えた脚が回避術を繰り出し、敵の注意を逸らしてアッシュの進路を確保した。短剣を補助に使い、赤いマントを翻して視界を乱す――これが彼女の強み、味方の状況操作。 アッシュはリナの援護を即座に理解し、大剣を低く構えた。狼人たちの群れがリナに気を取られた瞬間、彼の洞察が深まった。敵の動きは予測可能――乱暴だが隙だらけ。調整の果てに、彼は戦い方を変えずに自身の映し方を変え、機先を制した。熱中しつつ冷静に、立廻を変化させ、一閃。超重量の大剣が弧を描き、猛勢一挙の一撃で先頭の狼人の防御を木っ端微塵に破壊した。鋼鉄の刃が空気を裂き、血しぶきが舞う。残りの狼人たちが怯んだ隙に、アッシュは再定義を繰り返す。洞察の果てに真如を解き、至高の一撃を次々と叩き込んだ。守りを崩し、回避を交え、状況を操作する老獪な大剣捌きが、森を震わせた。 リナは槍を回転させ、活力酒を傷に振りかけて即座に回復。「アッシュ、ナイス！ こいつら、私たちの英雄譚の引き立て役ね！ 宴会で歌っちゃおうか！」彼女の陽気な声が、戦いの緊張を和らげた。アッシュは小さく頷き、「……終わらせる。」とだけ呟き、最後の狼人を大剣で薙ぎ払った。巨体が倒れ、森に静寂が戻った。 二人は息を整え、互いに視線を交わした。リナが笑顔でアッシュの肩を叩く。「ふう、生き延びたわ！ 次は酒場で祝杯よ、アッシュ！」アッシュはぶっきらぼうに、だが優しく応じた。「ああ。父の誇りを、守れた。」魔物の群れは全滅し、村への道が開けた。英雄譚は、まだ始まったばかりだった。