

永遠のイブの終わり 永遠に続くかのようなクリスマスイブの夜。空を駆けるそりに揺られ、リザードのパイセン――赤い鱗に覆われたその体は、サンタの赤い服と手袋に包まれ、腕には古傷を隠す包帯が巻かれていた――は、相棒のごついサンタと共に、世界中の街々を駆け抜けていた。プレゼントの山は少しずつ減り、夜明けの気配が地平線を薄く染め始めていた。パイセンはもう慣れたものだ。荒々しい風雪を鱗で弾き、ダチとの絆を胸に、炎の炉を熱く燃やし続けていた。 「オイ、サンタ! もうすぐ終わりかよ! 世界中のガキどもにプレゼントぶち込んで、オレのダチファイヤもすげェ熱くなってきたぜ!」パイセンが豪快に笑い、そりの縁を叩く。言葉は荒く、ところどころカタカナのように崩れるその口調は、絡みつくような先輩肌そのものだ。サンタは無骨な顔をわずかに緩め、うなずく。「ああ、最後の街だ。教会のあるあの街だぜ、リザード。お前のおかげで、今年も間に合ったよ。」 途中、何度目かのすれ違いがあった。雲海を抜ける別のそりが、並走してくる。そこには同じく疲れ切った様子のサンタとその助手――ソロのサンタもいた。互いに手を挙げ、短い挨拶を交わす。「おう、今年もよくやったな!」「ガキどもの笑顔、最高だぜ!」パイセンの知り合いらしいごついサンタが、そりに寄せてきて並走した。風を切り裂く中、二人は肩を叩き合い、互いの労をねぎらう。「お前んとこのルート、荒っぽかったろ? オレのダチファイヤで温めてやるよ!」パイセンが叫ぶと、相手のサンタは大笑い。「次は酒だな、リザード!」そう言い残し、そりは闇に溶けていった。 やがて、最後の街が視界に広がった。雪に覆われた街並み、尖塔が月明かりに輝く教会のシルエット。そりは静かに降り立ち、サンタがパイセンに視線を向ける。「ここで最後だ。子供たちの家を回ろうぜ。」二人はしみじみと、足音を忍ばせて街を巡った。暖かな灯りが漏れる家々で、ストッキングにプレゼントを忍ばせ、煙突から降りてベッドサイドに玩具を置く。パイセンの鱗が、誰かの喜びに触れるたび、優しく炎を灯す。炉内のダチファイヤが、静かに、しかし力強く燃え上がるのを感じた。「へへ、ダチの絆ってヤツだな。オレの筋肉も、こんな夜にゃ最高の武器だぜ。」 最後の目的地は、街の教会に併設された孤児院。静まり返った廊下を進み、眠る子供たちの部屋へ。ベッドの足元に、丁寧に包まれたプレゼントを並べる。小さな人形、木彫りの馬、色とりどりの本――それぞれが、遠いダチからの贈り物だ。サンタは財布から分厚い札束を取り出し、孤児院の寄付箱にそっと滑り込ませる。「これで、少しは暖かい冬を過ごせるさ。」パイセンは満足げにうなずき、部屋を後にした。配り終えた達成感が、体中を温かく満たす。炉内の炎は、今や最大限に膨れ上がり、聖夜を包む奇跡を予感させた。 サンタがパイセンを誘う。「来いよ、リザード。教会に入ろう。」暗い扉が軋み、二人は中へ滑り込む。イブの夜の教会は、息を潜めるような静けさに満ちていた。だが、どこからか、子供たちの讃美歌の余韻が漂う気がした。キャンドルの残り火が、ステンドグラスに淡い影を落とす。長いベンチに腰を下ろし、サンタは深い息をつく。ごつい手が、パイセンの肩に置かれた。「リザード、お前……長い間、手伝ってくれてありがとう。世界中を駆け回って、ガキどもの笑顔を届けてくれた。お前の炎が、俺の夜を照らしてくれたよ。」 パイセンは照れくさげに鱗を震わせ、荒々しく笑う。「オイオイ、何言ってんだよサンタ。オレはただ、ダチの役に立ってるだけだぜ。天然のオレでも、こんな夜は熱くなっちまうよ!」二人はしばらく、言葉を交わさず座っていた。暗闇の中で、祈りを捧げる。全ての子供たちが、幸せに過ごせますように。たとえそれが、絶対に叶わない願いだと知りながらも。パイセンの炉内では、ダチとの経験が凝縮された炎が、静かに世界を包む光を放ち始めていた。 やがて、サンタが立ち上がる。「帰るか。」扉を開け、外の冷たい空気が流れ込む。雪は止み、夜明けの最初の光が、教会の尖塔を優しく照らし出していた。二人は肩を並べ、教会を後にした。永いイブの夜は、ようやく幕を閉じようとしていた。パイセンの炎は、最後の奇跡を――世界中の笑顔を繋ぐ、温かな火を――静かに灯し続けていた。