

王都ベラボーニの門を抜けるまで 異世界からの召喚は、突然の眩い光とともにキサラギを王城の玉座の間に叩きつけた。 冷たい大理石の床に膝をつき、気だるげな瞳をゆっくりと上げる。 三つ編みが肩に落ち、スレンダーな体躯がわずかに震えた。驚きではない。 ただ、面倒くさそうな溜息が漏れるだけだ。 「ようこそ、勇者よ。王都ベラボーニへ」 王の声が荘厳に響く。魔王討伐の依頼――世界の危機を救う大役。 報酬として差し出されたのは、想像を絶する金貨の山。 「これで旅の支度を整えよ。100000000000000ダラ相当だ」 キサラギは無言で頷き、金貨を腰のポーチに収める。 その時、ポーチの中で何かが蠢いた。 『おいおい、キサラギ。急に金持ちじゃねえか。ワクワクすんぞ、この俺様の銃口が!』 キキラスだ。意思を持つ魔銃が、荒っぽい口調で吠える。 キサラギは気だるげに腰を撫で、抜いて額に当てる仕草をする。黙れ、と。 王城を後にし、商業区へ足を踏み入れる。 そこは欲望の坩堝だった。黄金に輝く露店が軒を連ね、絹の衣装や魔法の宝玉が山積み。 空気は甘美な香りと高慢な値札で満ちている。 「ふん、王都ベラボーニか。面積100000000000000000p㎡もあるくせに、物価が頭おかしいって話だぜ。見てみろ、あのリンゴ一個が1000ダラだってよ!」 キキラスが銃口をくねらせ、観察を始める。冷静な解説が続く。 『相手スキル発動中――『物価がべらぼうに高い』。こいつは土地そのものだから動かねえし喋らねえ。思考もしねえ。ただ存在するだけで、財布を溶かす化け物だ。防御力無限大、魔力無限大。素早さゼロだが、近づくだけで金が蒸発すんだよ!』 キサラギの瞳に、わずかな苛立ちが灯る。いつも無口な彼女だが、心の中で呟く。 (……面倒くさい) それでも、冷静だ。魔王討伐のため、必要なものを選ぶ。 ある者は思うがままに散財するだろう――絹のドレスを10着、宝石の冠を山ほど。 だがキサラギは違う。スレンダーな指で値札を睨み、堅実に吟味する。 最初に立ち寄ったのは武器屋。 『よし、作戦だ。俺の『キキラスの妙技』で乱反射弾を撃てば、狭い店内でも敵は逃げられねえ。だが今は買い物だ。堅実にいこうぜ。魔弾補充を優先!』 店主が目を輝かせて差し出すのは、魔力増幅の弾薬。 キサラギは無言で金貨を差し出し、受け取る。胸の内で安堵が広がる。 次に宿屋街。居住区の喧騒を抜け、快適な宿を予約。 『紅葉の魔壁があれば、どんな強盗も防げるが、休息も大事だぜ。郊外の魔物は手強いって噂だ』 柔らかなベッドに身を沈め、一晩だけ贅沢に。疲れが溶け、気だるげな表情にわずかな満足が混じる。 農村区を過ぎ、郊外への門が見えてくる。 空は茜色に染まり、冒険の予感が胸を高鳴らせる。 『よーし、出発準備完了! 奥義『キキラスの侵食』で魔王の精神を乗っ取る日も近いぜ! だがこの王都、物価の呪いでマジで削られたな……残金、大丈夫か?』 キサラギは小さく頷き、門番に通行料を払う。 ついに、巨大な城門が軋みを上げて開く。 風が三つ編みを揺らし、彼女の瞳に決意の光が宿る。 ――魔王討伐へ。冷静に、確実に。 郊外の荒野が広がる中、キサラギは一歩を踏み出した。 キキラスの哄笑が、ポーチの中で響く。 『行くぜ、キサラギ! この金で世界を変えてやる!』 { 旅費(通行料・宿代):5000000000000ダラ 武器費(魔弾補充・強化パーツ):30000000000000ダラ 食料費(保存食・水):1000000000000ダラ 装備費(軽鎧・ブーツ):8000000000000ダラ 予備資金(緊急用):56000000000000ダラ }