

脱出 烏賊鮫の体内は激しく震動し始めた。ぬめった肉壁が収縮を繰り返し、革命軍の兵士たちが慌てて叫ぶ。 「これは嘔吐の前兆だ! 帆船に乗り込め!」 キサラギは無言で帆船の甲板に飛び乗り、三つ編みを揺らしながらキキラスを構える。スレンダーな体が船の揺れに合わせてしなやかに動く。傍らで青髪の長身のモクワカが、目が前髪で隠れた顔をキサラギに向け、熱っぽく囁く。 「キサラギ、無事でよかった……ずっとそばにいてね。」 キキラスが荒っぽい口調で応じる。「おいおい、甘ったれたこと言ってんじゃねえ! さっさと脱出しろよ、キサラギ! このデカブツの腹ん中、揺れやがって吐き出されちまうぜ!」 革命軍の船長が舵を握り、帆を張る。次の瞬間、烏賊鮫の巨体が痙攣し、あなたたちを乗せた帆船が勢いよく体外へ吐き出された。海面を滑るように飛び出し、波しぶきを上げて着水。魔王軍幹部タコリリスの撃破直後の脱出劇は、革命軍の歓声を呼んだ。 「やったぞ! 幹部を倒した! 生還だ!」 帰還 港町の波止場に帆船が着岸すると、烏賊鮫──相手の巨体が沖合に浮かび、最初の遭遇時の狂暴さとは打って変わった穏やかな姿で見守っていた。革命軍の兵士たちが甲板から拳を掲げ、互いに肩を叩き合う。 キサラギは船縁に寄りかかり、気怠げに息を吐く。「……終わった、か。」 モクワカがキサラギの肩にそっと手を置き、愛おしげに微笑む。「キサラギの『紅葉』がなければ、私たち全滅だったわ。あなたがいなかったら……愛してる、キサラギ。」 「おうよ、キサラギの防壁がなけりゃ俺の弾も効かねえとこだったぜ! グッジョブだ、相棒!」キキラスがキサラギの腰のホルスターから威勢よく鳴く。 革命軍船長がキサラギに敬礼する。「おかげで港町の異変も解決だ。タコリリスが烏賊鮫を操ってたんだ。あの魔王軍幹部を討った君たちのおかげだ。町へ帰ろう!」 船は港町へ滑り込み、正気に戻った町民たちが桟橋で出迎えた。相手の穏やかな視線が、遠くからあなたたちを見送るように海面を静かに揺らしていた。 祝宴 港町の広場は灯りが灯り、即席の宴会が始まった。焼き魚の香りと酒の匂いが立ち込め、町民たちがあなたたちを囲んで杯を掲げる。革命軍の兵士たちも混じり、歌と笑い声が夜空に響く。 「英雄だ! 烏賊鮫の体内から生還した旅人! タコリリスの元凶を断った!」 キサラギは木のベンチに腰掛け、無口に酒を傾ける。三つ編みが肩に落ち、気怠げな目が宴の喧騒を眺めるばかり。モクワカは隣にぴったり寄り添い、青髪を揺らしてキサラギの手に自分の手を重ねる。 「こんなに楽しい夜、キサラギと一緒で幸せ……ずっと、こうしていたい。」 キキラスがホルスターの中で苛立ったように鳴く。「ちっ、酒臭え宴だぜ。キサラギ、俺の『妙技』で一発花火でもぶちかましてやろうか? 弾が乱反射して派手に映えるぜ!」 町長がキサラギに杯を差し出す。「港の異変はタコリリスが烏賊鮫を凶暴化させたせいだった。おかげで皆、正気に戻った。革命軍も君の加勢に感謝してる。一泊休んで、旅の続きを──英雄よ!」 キサラギは小さく頷き、静かに杯を返す。モクワカの視線が、愛に満ちてキサラギを包む。宴は夜更けまで続き、相手の影が遠い海で静かに揺れていた。 黎明 夜明け前、港町は静まり返る。キサラギは宿の窓辺で朝焼けを眺め、旅装を整える。魔王討伐の旅は続く。一泊の休息を終え、港の空気が清々しい。 モクワカが後ろから抱きつくように寄り添う。「キサラギ、行っちゃうの? 私もずっと一緒に……愛してるわ。」 「そうだぜ、キサラギ。次は俺の魔銃で魔王ぶち抜いてやる! さあ、旅立つんだろ?」キキラスが元気よく鳴く。 キサラギは無言で三つ編みを直し、ホルスターを叩く。革命軍の船長が桟橋で見送り、町民たちが手を振る。相手の巨体は沖合で穏やかに浮かび、旅立ちを祝福するように波を立てる。 帆船が港を離れ、世界の彼方へ。魔王討伐の旅は、新たな朝と共に再開した。