

烏賊鮫の腹中にて 粘つく闇に包まれた異界。巨大な烏賊鮫の体内は、ぬめぬめとした肉壁が脈動し、遠くで消化液の気泡が爆ぜる不気味な空間だった。青髪の少女冒険者、BlueKnightは、先ほどこの魔物に飲み込まれたばかり。黒い角とトゲトゲしい尻尾が、彼女の出自を物語る。フードを被り直し、業物の剣を構えようとしたその時――。 「こちらへ! 危ない!」 光輝く黄金帯が虚空を裂き、襲い来る影を絡め取った。革命軍リーダー、ヤマトットだ。古代文明の甲冑を纏った魔人の姿で、革命軍のキャンプを臨時の拠点に変えていた。粗末な焚き火が揺らめき、数名の同志が武器を手に警戒する中、ヤマトットはBlueKnightを素早く引き寄せ、革鎧の彼女を保護した。 「ふう……助かりました。あなたは……?」 BlueKnightが赤い瞳を瞬かせ、善良な笑みを浮かべる。ヤマトットは甲冑の隙間から鋭い視線を返し、力強く頷いた。 「革命軍のヤマトットだ。この烏賊鮫の腹の中で、魔王軍の残党と交戦中だ。お前は……外の世界から召喚された旅人か? 魔王討伐の依頼を受けた者だな。歓迎する。まずは休め、ここが我らの砦だ」 BlueKnightはポーチから回復の薬草を取り出し、同志たちに配りながら座った。ヤマトットは焚き火を指さし、淡々と語り始める。 「この魔物の体内は、時間さえ味方につければ生き延びられる。肉壁の分泌液は飲めば滋養になるし、骨や貝殻は武器の材料だ。魔王軍の連中も飲み込まれ、混乱している隙に叩く。だが油断は禁物――お前の力、貸してくれ」 「もちろんです。私、BlueKnightと申します。助けが必要なら、全力でお手伝いしますよ。……それに、こんな場所でもお茶目な工夫がいっぱいですね。この焚き火、どうやって灯したんですか?」 彼女の探究心が弾け、ヤマトットは珍しく口元を緩めた。「魔物の粘液と閃光石だ。革命とはそういうものさ」 だが、平穏は束の間。突然、肉壁が震え、魔王軍の咆哮が響き渡った。十数体の魔獣と鎧兵が、消化液の川を越えて襲い来る! 「来やがったな! 全員、陣形を組め!」 ヤマトットが叫び、天の羽衣を展開。黄金の帯が敵の攻撃を吸収し、カウンターで数体を拘束した。BlueKnightは即座に立ち上がり、魔法剣を生成。青白い光の剣が飛翔し、敵陣を切り裂く。 「私も行きます! 【魔法剣】――飛んで、斬って!」 剣が弧を描き、魔獣の首を飛ばす。ヤマトットは退魔刀コウィンを封印したまま、羽衣で敵を封じつつ接近戦を繰り広げた。「いい腕だ、旅人! 左翼を頼む!」 「了解です! 【ドラゴンテイル】!」 BlueKnightの尻尾が龍気を纏い、トゲトゲの鞭のように魔兵を薙ぎ払う。革命軍の同志たちも奮戦し、ポーチから取り出した爆炎の瓶を投げて援護。激戦の末、魔王軍は半壊し、残党は烏賊鮫の奥深くへ撤退していった。 「ふう……撤退しましたね。皆さん、ご無事ですか?」 息を切らすBlueKnightに、ヤマトットが肩を叩く。「見事だ。おかげで持ちこたえた。魔王軍の本隊が近い……総力戦の準備だ。一泊休んで体力を回復しろ。明日、この腹中を抜け、魔王に挑む」 夜が更け、キャンプに静寂が戻る。二人は焚き火を囲み、粗末な料理を分け合いながら語らった。BlueKnightの得意料理――ポーチのスパイスで味付けした魔物の肉――が、同志たちの疲れを癒す。 「あなたのリーダーシップ、素晴らしいです。私もこの旅で、もっと強くなりたい……」 「革命は一人では成せん。お前のような旅人が味方なら、勝機はある」 烏賊鮫の体内で、運命の夜が明ける。二人は総力戦に備え、静かに目を閉じた。