

月光が淡く港町・ムーンライトを照らす夜、常夜の闇が街を覆っていた。朝が訪れぬこの地に、リカントロープは召喚の命により足を踏み入れた。黒髪黒目の巨躯、2メートルの筋肉質な体躯が影に溶け込むように佇む。神代の古兵たる彼は、魔王討伐の依頼を胸に、静かに町を進む。 リカントロープの予知めく直感が、微かな危機を告げていた。町民たちは広場や路地で踊り狂い、正気を失った目で虚空を掴むように手を振る。家屋の灯りは揺らめき、港の帆船が静かに揺れているのが見えた。 リカントロープは寡黙に路地を抜け、広場へ出る。そこでは数人の町民が輪になって跳ね回っていた。 「余も老けて参りましたァン! 月よ、牙を研げ!」 「やば苦無?(忍者) いあ、パスタぁ… ピーピーピー!」 町民の一人がリカントロープに気づき、よろめきながら近づいてくる。リカントロープは冷静に構え、影が微かに反射の光を帯びた。 「私に何か用か。」 リカントロープの落ち着いた声に、町民は一瞬正気を取り戻したように目を細める。だが、次の瞬間、再び狂気の渦に飲まれる。 「もあい! ご祝儀を、跋扈します! 機械音が踊れぇ!」 リカントロープは静かに首を振る。元凶が不明ゆえ、仮初の正気も束の間だ。彼は町民を避け、港へと向かった。港には数隻の帆船が停泊し、大陸からの定期便が往来の灯りを灯している。船員の一人が甲板で煙草をふかし、疲れた目で町を見下ろしていた。 リカントロープが桟橋に近づくと、船員が声を掛けた。 「おい、旅人か? この町はもう終わりだ。朝が来なくなって以来、奴らが狂っちまった。定期便で逃げるなら今だぜ。大陸に戻る船が出る。」 リカントロープは敬意を込めて頷く。 「船員殿。事情は承知した。この町の異変、魔王の影か……。ひとまず海に出る。乗せてもらえるか。」 船員は肩をすくめ、縄梯子を下ろした。 「金さえ払えばな。さっさと上がれ。この闇が深まる前に。」 リカントロープは影を従え、帆船に足を踏み入れる。船はゆっくりと港を離れ、月光の下、海原へと漕ぎ出した。町・ムーンライトの狂気の踊りは、遠くに霞む影となった。リカントロープの瞳に、予知の光が宿る。元凶は未だ見えぬが、帷の守護者は夜を渡る覚悟を新たにした。