あなたはこの迷いの森の主との決戦に向けて歩みを進める。 辺りはいつの間にか静けさに包まれ、耳を澄ましても鳥や虫の声すら聞こえない。木々の合間を駆け抜ける風と、葉の触れ合う音。 それらが木霊する森の中は神秘的でありながら、嵐の前の静けさに近い強烈なまでの胸騒ぎをあなたに与えている。 「遂に迎えた正念場。森を進むあなたに立ちはだかる迷いの森の主“バンダースナッチ”」 開けた場所に出たあなたへ声をかけたのは“白服”だ。 切り株に腰かけた彼女はあなたを見るや否や、スッと切り株の上に立ち上がると芝居がかった仕草でお辞儀をする。 「さあさあ、これより始まるは迷いの森での最終決戦。上を見よ、安眠を妨げられ、怒り燻ぶる顎を滾らせた主が降臨するぞ!」 白服の指し示した方を見れば、雲一つない大空に現れた影。 雄大に空を飛ぶ黒き翼。 鞭の様にしなる尻尾。 周囲を睥睨する赤眼。 怒りに燻ぶる顎からは焔が漏れ、鋭く尖った炎牙を剥き、森の主は地上へと降り立つ。 バンダースナッチ、ワンダーランド“迷いの森の主”、その見た目はワイバーンに近いものの低級の竜と称するには似つかわしくない覇気を纏っている。 睨みつけるバンダースナッチを尻目に白服はサッと飛び上がると、生み出した魔法の椅子に深く腰掛ける。 ジロリとあなたを見つめながら戦闘を見物する白服は、胸の内で躍らせる歓喜の余りにワンダーランドの迷いの森に伝わる詩を自然と口ずさむ。 ♫決戦の刻、両者揃い。 この場にて雌雄を決す。 一閃の後、両者奮い。 この場にて勇姿を示さん。 黒き翼の羽ばたきで巻き起こる嵐の襲撃。 耐えよ堪えよ来訪者。 その暴風は汝を試す、森の主の洗礼ぞ♪ 白服の美しい声が響く中、あなたとバンダースナッチとの決戦の火ぶたが落とされた。 ※以下は勝利時(或いは戦闘が面倒な場合)にのみスクロールしてください。 暴風なる黒翼の羽ばたきを越え、炯炯なる赤き眼光から身をかわし、しなる尻尾の一撃を飛び越え、猛りと狂いに燃え燻ぶる顎の一撃をくぐりぬけ。 さあ、しかと目に焼き付けよ、森の主よ。 あなたの繰り出す一撃が森の主から命を刻み刈り取らん! 取り戻した静けさの中で倒れ伏すバンダースナッチ。勝ち取った勝利、されどその余韻に浸るにはまだ早い。 あなたはフッと顔を上げて、森の向こうに見える赤い城を睨む。城下に広がる街並みからも分かる通り、ワンダーランドを救う冒険はまだまだ終わりではない。 むしろ、やっとここから本番だ。 「その通り、道はまだまだ長いよ来訪者」 バンダースナッチとの一戦を見物していた白服が告げる。 相変わらず意図の掴めぬ相手だ。韋編悪党や女王側の陣営でない事は確かだが、しかし別段こちらを手助けする素振りも無い。 無論ただの観客、ただの野次馬、と決定づけるには時期尚早か。 「さて、次からは女王が住まう城の下に広がる街へと突入だ。気を引き締めよう来訪者」 こちらが怪しんでいる事など気にも留めない白服。 迷いの森の道中と同じ様にこの先も彼女はあなたの戦いぶりを見物するのだろう。 体中に纏わりつくジットリとした視線を浴びながら、あなたは迷いの森を抜けていく。 ・森を抜けたあなたは、遠くから鳴り響く汽笛の音に気づく。 [https://ai-battler.com/battle/a53af349-501b-4311-83b6-1bbe4a3e377f]