「……いいんだね?」 とある研究室 白衣を身に纏う科学者と、病衣を身に纏う少女が対峙していた 「延命装置がついているとはいえ、これは兵器だ。これを取ったが最後、君に平穏な日々が訪れることはなくなり、戦い続けなければならない宿命を背負うことになる」 少女が伸ばしかけていた腕が止まる 「君の境遇は分かっている。重篤な病を患いながらもそこまで真っ直ぐに育ったのは、周囲の人間が君に多大な愛情を注いでいたからなのだろう」 「……うん」 「彼らは君が最期まで心穏やかであることを望んでいる。その気持ちを裏切ることになるかもしれないんだよ?」 少女は腕を下ろし、胸の前できつく拳を握りしめる 「……分かってます。この命は、家族が私を守ってくれたから在ることを」 「……」 「だからこそ、私はそれを手にしたい」 少女は決意めいた表情で、科学者の持つデバイスを見る 「なるほど。裏切ってでも命を永らえさせたいという訳か」 「違う」 間髪入れず否定した少女に、科学者は目を細める 「死ぬのは確かに怖い。死んでしまったら、家族が悲しむことも分かってる。でも……!」 どこか遠くで爆発音が聞こえる パラパラと天井から土埃が落ちる 「守られてばかりの私じゃない……私も家族を、他の誰かも守れる人間だって、証明したい……!」 「……それが、君の戦う理由かな?」 科学者はやれやれといった感じでデバイスをしまう すかさず少女は抗議の意を示す 「なんで……?充分じゃないって言うの……!?」 「いいや。充分だ」 科学者は自身のベルトを外し、少女に渡す 「さっき見せたのは偽物。生半可な決意だと、壊されるか最悪敵の手に渡ってしまうからね。奪われないようにこうして持ってたわけ」 ベルトは変形し、銀色に輝くデバイスになる 「……ありがとう」 「うむ、使い方は……「変身!」 『機甲アーダ起動。新たな生体デバイスを確認……承認。メインシステム、戦闘モードに移行』 少女の体を白銀の機械装甲が身を包む そのまま飛行ユニットを広げる 「ちょ、ちょっと待っ……」 『目標補足。オーバーギア、実行!』 「行ってきます、博士」 そのまま天井を突き破り、空へと飛んでいく 「はあ……全く」 科学者はため息をつき、彼女の行った先を見る そこには輝く光の軌跡が見えた 「……まるで流星のようだ。『ステラ』……その名の通り、君は私たちの希望の星になってくれるかもしれないね」