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【穢れた色】(抹消された記憶)

彼女は平穏な村で産まれた。 最初は、赤ん坊の頃は特に変哲もない、ただの可愛い女の子だった。 変化が現れたのは四歳の頃だった。 背中に黒い翼が生えたのだ。 その村に伝わる、伝承通りの黒い翼が。 彼女はその翼を隠そうと、必死に画策を繰り返した。 でも、遂には両親にバレてしまった。 両親は腰を抜かし、父は実の娘に歯向かい、母は「こんな悪魔の子、産むんじゃなかった」と号泣している。 彼女は暴力を振るわれ、信頼していたはずの両親との縁は完全に途切れ一人、村を歩き回っていた。 「一日だけでいいんです。私を匿ってください。」 しかし、彼女の言葉は誰にも届かず、誰にも聞かれなかった。 それどころか、その姿だけを重要視され、村の人々から拒絶された。 最後の頼み、村長の元に私は訪れた。 あの優しい村長なら、私を匿ってくれるだろう。と儚い希望を抱き、扉を開けた。 しかし、村長はその姿を見るやいなや、私を拘束し、村の中心に貼り付けにした。 荒縄が身体を縛り付けて、痛く苦しい。荒縄に血が滲む。 苦痛だ。屈辱だ。 私は人間なのに。人間の権利がある筈なのに。 権利なんて非力な物は蔑ろにされ、私は遂には焼かれようとしている。 憎い。村の人々が、両親が、人間が。 私の身体は黒い闇に包まれ、留まることを知らない闇は村の人々を飲み尽くした。 気がつけば、闇は消えて去っており、目の前には黒いクレヨンの様な物があった。 私はそのクレヨンで顔を塗りつぶした。 両親からかわいいかわいいと愛でられ続けた顔なんて要らない。 私は涙を流した。