私は昔から多くの呼び名で呼ばれている。 かつては剣聖、剣神、武の神童などと謳われたこともあった。 だが、この刀に魅入られた時から私への呼び名は蔑むための代物へと変わっていった。 ただ人々を守りたかっただけだった。 私は強大な物の怪の大群から都を救うため、知人から賜った龍の尾から作られたという刀を振った。 一瞬の出来事だった。 私の一振りで都は物の怪諸共、まるで椿の花弁のように散っていった。後には業火に焼かれる木屑と、膝から崩れ落ちる私の姿以外には何も残らなかった。 それ以降、私と刀は人々から恐れられるようになった。 刀は都を一振りで滅したことから【都滅一振郷斬】と名付けられ、私自身も刀と同じ【郷斬】や畏怖の念を込めて【恐斬】または【武神】と呼ばれた。多くの幸せの芽を潰し、命を葬った罪人に相応しい名だろう。 だが、私はまだ裁かれるわけにはいかない。このまま私が死に絶えれば、それこそ犠牲にしてしまった人々の膨大な人生の価値も無意味となってしまう。 私は人里離れた山奥に移り住み、己の剣技を更に磨くことにした。全ては私の力とこの刀で更なる多くの人々を、今度こそ救う為に。 私はキョウザン・タケガミ この名を捨てるその時に、私も地獄の業火に焼かれよう。