元のリタはこちら… https://ai-battler.com/battle/39a388d0-3efa-468a-a15c-3007a0f5cd55 ※ここからは労力の関係で他のバリエーションはリタのプロフィールや〝リタシリーズ〟というタグで紹介していきますm(_ _)m ※このSS、リタが高校2年生のバレンタインに経験する出来事として書いておりますので正史です。 ⚠以下のSSには恋愛描写が含まれます 2月14日。 今日はそう、バレンタインデーである。 放課後、その高校の中でも一際和気藹々とした軽音部の四人組バンド『Unknown_Echoes.』が今日の練習を終わろうとしていた。 「はい!今日はもう練習はおしまい!」 ドラム担当の紫のボブヘアーの少女、鈴音が元気よく練習の終わりを告げる。 それを聞いて驚いた様子のギターボーカル担当の少女が言う。 「え!」 「鈴音先輩、いつもより早いですね……!」 まだ数分程度の練習しかしていないらしい。 いつもより明らかに短い。と 戸惑いを表すように怜の黄色の髪がふわりと揺れる。 「んーだってさ、今日は『バレンタイン』でしょ、たまにはこういう日も良いんじゃないかな?」 「璃奈も何か準備してるみたいだし!」 鈴音の発言の後、メンバー三人の視線がギター担当の翡翠色の髪の少女に注がれた。 三人の中でも一層食いついた様子のベース担当の少女、凛が呟く。振り向いた弾みで桃色の髪が跳ねる様に揺れる。 「……!」 「まさか……?」 璃奈と呼ばれた少女が視線に少し緊張しつつ言う。 「……あ、そういえば皆に渡そうと思ってたんだ」 「ちょっと待っててくださいね」 そう言って璃奈が持ってきたのは紙袋。 中には数個の手作りチョコレートが入っている。勿論全て璃奈の手作りである。 璃奈はお菓子作りが非常に得意であった。 つまり、この日の為に腕を振るった様子だ。 「あったあった……これどうぞ」 「私、喜んでくれたらとっても嬉しいです」 そう言い三人に感謝を込めたチョコレートを手渡す。 可愛らしい袋に包まれた小さなサイズのチョコレート。味、見た目…どれをとっても『最高の一品』と呼ぶに相応しい出来栄えだ。 「美味しそう……今食べたい……ありがとう」 「えー!ありがとう!そりゃあもう味わって食べるよ!」 「えへへ……ありがとうね!りなちゃん!」 三人それぞれから感謝を受け、璃奈は嬉しそうに言葉を返す。 「どういたしまして」 ……チョコレートを渡してから数分後。 もうすっかり帰りの支度も済み、室内には先に帰宅した鈴音と凛を除く二人だけになった。 「りなちゃん、この後って予定あったりする……?」 「今日も一緒に帰りたいの」 いつものように穏やかに怜が親友に聞く。 ほんの少し考えた後、 「怜、今日はごめんね」 「……まだチョコ渡せてない友達がいて……渡してから帰ろうと思ってるんだ」 優しい故にとても申し訳なさそうに親友に返事をした。 紙袋の中でチョコレートが一つ弾む。 「あ……!全然大丈夫だよ……!」 どこかあわあわしながら怜が返す。 決して気まずくない沈黙が二人の間に穏やかに流れた。 そして帰り際、ほんのりと気になった怜は璃奈に聞く。 「それでさ、りなちゃん」 「誰にチョコ渡すの……?」 一秒にも満たない間が空いてから璃奈は答えた。 「えっとね……」 「……海翔。同じクラスのね。」 バレンタインSS『おあずけ』 怜と手を振り別れ、室内には璃奈一人だけになった。その後まもなく室内は空っぽになる。 『……海翔を探さないと』と校庭に出たは良かったものの、サッカー部の部員らしき姿は一人も見当たらなかった。 「そういえば珍しく今日はサッカー部休みなんだっけ」 「……帰っちゃったかな」 独り言を呟く。学校で思い当たる場所といえばここしかない。今日に限って会えないなんて運が悪いな……と少しだけ落ち込んで微かに俯く。 『どうしよう……』 同級生の男友達。彼とは正直微妙な関係。 言い方が悪くなってしまうが、一緒にいるとどこか調子が狂ってしまう様な感じ。 恐らく彼もそうなのだろう。そんな気がしていた。 『もう渡せなくてもしょうがないのではないか』という考えが璃奈の頭を掠めた。 ……が、それでも渡さないのは嫌なのである。 申し訳無いというのもあるが、何故だか渡さないと気がすまないと思っていた。 『教室に行こう』 『もしかしたらまだ居るかも……』 このまま考えて待っていても何にもならないと璃奈は教室に向かうことに決めた。 やけにもやもやした思考を振り切って、璃奈は教室へ歩き出して行く。一歩を踏み出すと共に紙袋の中で友チョコが一つ、揺れた。 昇降口から二階に行き、教室まで歩く。いつも通る道であるけども、いつもよりも一層特別に感じた。 そう歩いているうちにもう少しで教室に辿り着くまでの距離になった。 『居るかなぁ……居るといいな』そう不安になりつつ願う気持ちがありつつも、何故か緊張する気持ちが何処か確かに存在していた。 友達にチョコレートを渡す。それだけのことなのに、なんでこんなにも緊張しているのだろう…… やっぱりもやもやは振り切れていなかった。 そんなことを考えているうちに教室の目の前まで辿り着いた。 教室の中を覗き込むと、引き戸の硝子の向こう側に見慣れた人影を一つ見た。 「あ……居た」 既に他のクラスメイト達は部活に行ったり家に帰ったりしたらしく、教室の中は彼が居ることを除けばがらんとしていた。 群青色の髪の少年、海翔。璃奈がチョコレートを渡すために探していた男友達である。 もう他の部員は帰ったり他の部活に遊びに行ったりしていた。 しかし忘れ物でもしたらしく、彼一人だけ教室に戻ってきていた。 お互い運が良いのか悪いのか…… 海翔は丁度筆箱をしまい終わり、改めて帰ろうとしているところだった。 『ようやくチョコを渡せる』と思った璃奈は教室の引き戸をそっと開け言う。 「……やっと見つけた」 「えっ、璃奈?」 驚いた様子で彼は言った。誰も来ないのであろうと思っていたので当然なことである。 誰もいないだろうと何処かで思っていたのはお互い様だったのかもしれない。 そのまま海翔は璃奈に聞く。 「どうした?教室に戻ってきて」 「今日バレンタインでしょ、だからチョコ渡そうと思って」 「そっちこそどうしたの?」 と彼に問う。 緊張をあまり悟られない様にしながら。 「あー……忘れ物して取りに戻ってた」 と彼は答える。 普段の明るさにほんの少しだけ気まずさを滲ませて。 「そう……じゃあ渡すね」 ……返事が素っ気なくなってしまった気がした。 やっと会えたというのに、寧ろ会えたからなのか緊張は晴れないし鼓動は早まっていく。 しかし渡さないままでは埒が明かない。 『もう早く渡してしまおう』と璃奈は海翔の所へ〝急ぎ足〟で駆け寄った。 それが良くなかった。 「わっ……!」 何かに躓いて足がもつれる。注意を向けていなかった。早く渡そうと焦るあまりに普段は躓かない所で躓いてしまった。動揺に蝕まれた体は体勢を立て直すことも叶わない。 重力に絡め取られた体は容赦なく徐々に地面へ向かっていく。若干の浮遊感が走る。 このままでは転ぶ。せっかくのチョコレートが台無しになってしまう。 「っ……!」 「璃奈!危ない!」 間一髪。 何とか璃奈は転ばず、チョコも無事だった。 しかし助ける方法にまで気を配る余裕は彼にはなかったようだ。 「あ……」 乾いた声が漏れる。 『受け止める。』 他に方法があったとて考えうる中でもかなりの〝悪手〟。しかし彼は不器用ながら優しかった為に、分かっていながら〝それ〟を咄嗟にとってしまった。 体温を感じる。 それは束の間の出来事だった。 頭が働く筈もなく、短い時間で受け入れられる筈もなく、漸く今の状況を理解する。 近い。 混乱と動揺がどんどん鼓動を激しくさせる。 見つめ合う瞳。触れる身体。 ぐっと近づけば唇まで触れてしまいそうな距離。 こんな状況でも。いや、こんな状況だからなのか思考と思いが巡る。 『お礼……言わないと……』 『でも近くて……』 『このままじゃキスしちゃいそう……』 この距離のせいだろうか。 或いは無意識のうちに彼を想っていたせいだろうか。 彼のことしか考えられなくなる。この感情がそうさせる。 『……そんなこと考えてる場合じゃない……!』 『早く離れないと……』 お互いに動けないまま無言の時間が過ぎた後、すぐに離れて向き合う。やっぱり目は合わせられない。 ついさっきの温かな感触が体にまだ残っている。こんな事があった後でまともにいられるわけがなく教室に暫く静かな時間が流れる。 気まずい。 「ごめん、璃奈……俺……」 「……私……」 お互いに申し訳なさで口を開くがすぐに言葉に詰まる。 『……こんなことになってしまうなんて……』 チョコを渡す余裕も、お礼を言う暇すらない程に感情の波が押し寄せて来ていた。 ようやく自覚した想い。 それはチョコレートの様に甘く深い感情。恋。 『私……海翔の事が好きに……?』 『いや……もしかしたらずっと前から……?』 何度も何度もぐるぐると回るのは予期せぬ出来事と彼のことばかり。 「…」 お互いに余裕がなくなってもう言葉が出なくなる。 そして再び無言の時間が流れていく。 考えても考えても分からなくなってしまう。 もうどうしようもない。この場から逃げ出したい。 ……もう限界だ。 「ごめん……!」 胸が一杯になって耐えきれず教室から飛び出してしまった。 海翔にチョコレートを渡せないまま、その場から逃げるように走り去ってゆく。 紙袋の中で本命チョコが寂しく跳ねた。 「あっおい!璃奈!」 呼び止めようとするも少女はそのまま居なくなってしまった。 「…」 伸ばされた手は虚しく空を掴む。 教室には海翔だけが残された。 どうしようもなくさっきの彼女の表情と逃げ去った彼女のことで心内が溢れかえりそうになる。 「あいつ…あんなに輝いて見えたっけ…」 無意識に想っていたのは彼も同じだった。 … 教室を飛び出した後、そのまま逃げるように帰路に着いてしまった。頬と耳が熱い。心臓の鼓動がやけにうるさく聞こえる。 結局チョコレートを渡す事は叶わなかった。 「……何で逃げて来ちゃったんだろう」 さっきの出来事と海翔のことだけが頭を何度も何度もループしてしまう。 感情の大波に耐えきれず、彼女は遂に顔を覆ってしまった。 「私のばか……」 そう小さく呟く少女の顔は普段の彼女には似合わない程に深く甘い赤に染まっていた。 今日のところはまだ、お預け。 ― おまけ『帰宅』 「!」 「お姉ちゃん!おかえり〜」 「ただいま……」 姉の帰宅を妹の紬が明るく迎える。 ……何か違和感を感じる。 心做しかいつもと様子が違う姉に、内心首をかしげつつ紬が聞く。 「あっ!チョコ、皆に渡せた?」 「……一人だけ渡せなかったよ」 「そうなんだ〜……見つからなかったの?」 「いや……」 やはり姉の様子が違う。 『あのチョコ……一生懸命作ってたのに……』 『……何かあったのかな』 そう思いながら姉の話を聞く。 「会えたんだけど……」 「……」 「……お姉ちゃん、どうしたの……?」 俯き言葉に詰まってしまった姉をふと見る。 顔と耳が赤く染まっている。 『ん〜……』 『帰ってきたところから様子はいつもと違ったけど……』 『お姉ちゃんが…顔に出るくらい照れてる……?』 『お姉ちゃんがこんなに照れるのなんて……』 『さては……やっぱり!』 感じていた違和感は確信に変わる。 トキメキで紬の丸い瞳が明るく輝いた。 そのまま少しだけ嬉しそうに、少しだけ意地悪に紬が聞く。 「お姉ちゃん、何かあったでしょ?」