険しい山岳地帯。 そそり立つ岩壁の高所に、一機の機体が静かに鎮座していた。 その傍らには、一人の男。彼は双眼鏡を手に、前方に広がる荒野を見つめる。 「……来たか」 荒野の彼方、砂塵を巻き上げながら十二機の機体が進軍していた。 それは、この地を支配する正規軍。 十数年前、大規模な反乱によって政権を掌握した彼らは、その権力を盾に多くの市民を虐げてきた。 さらに、自らを“貴族”と名乗り、民を奴隷のごとく扱っている。 「そろそろか……」 男は静かに立ち上がると、機体へと乗り込んだ。 その機体には、無数の傷跡――戦いの爪痕が刻まれている。 起動音が鳴り響く。 次の瞬間、機体は絶壁を一気に駆け下りた。 ――――――――――――― いつもと変わらぬ1日 近隣の村々を回り、徴収金を集める。 腹が減れば食事を奪い、気に入った女がいれば酒を注がせる。 貴族である自分たちをもてなすのは、奴隷どもの仕事であり、義務なのだ。 「隊長、今日の村はどこも不作でしたね」 「ああ、最近奴ら、どうも怠けてやがる。明日あたり、喝を入れてやらんとな」 「もしかして、また“あのゲーム”ですか!? 俺、あれ大好きなんですよ!」 「俺も俺も! この前なんか、逃げ切れるわけないのにガキを抱えて走ってる女が――」 笑いが響く。 仲間たちと交わす、何気ない日常の会話。 そう、今日はいつもと変わらぬ一日――だったはずだ。 ――突如、轟音が響く。 「ん? な――」 空から何かが落ちてくる。 それは、黒き死神。 ズシャァァァン!!! 突如降り立った機体が、隊長の機体を踏み潰した。 「た、隊長……!?」 誰かの震える声。 炎が舞い上がる。 それが、地獄の幕開けだった。 「ち、ちくしょう……やっちまえ!!」 混乱と恐怖を振り払うように、俺たちは一斉に武器を構えた。 ――ドォォォン!! 砲弾とミサイルの嵐が、標的へと降り注ぐ。 だが―― 「……なっ!? かわした!?」 奴は流れるように身を捻り、弾丸の雨を躱していく。 通常の機動ではありえない。 人間の動きではない。 「化け物が……なら、接近戦だ!!」 敵モブAが叫び、巨大なブレードを構えて突進する。 「喰らええぇぇ!!」 刹那―― ギィン!! 金属が悲鳴を上げる。 剣と剣が交錯し――その瞬間、敵モブAの機体は静かに崩れ落ちた。 「な……!?」 切断された機体が、スローモーションのように回転しながら大地に沈む。 「くそっ……!」 俺は息を呑み、戦況を見つめた。 勝てない。 そんな言葉が脳裏をよぎる。 「この……野郎ッ!!」 敵モブBが叫び、銃弾を乱射しながら突進する。 奴はそれを待っていたかのように、一閃。 機体はまるで糸を切られた人形のように、その場で崩れ落ちた。 「バケモノが……!」 誰かが叫ぶが、すでに戦意は失われていた。 「取り囲め! 四方から挟み撃ちに――」 その言葉が終わる前に、奴の姿が消えた。 「どこだ!? どこに――」 「上だ……!」 見上げた空に、黒い影。 奴は刃を逆手に持ち、重力と推進力を乗せた一撃を叩き込む。 ズバァァン!! 敵モブCの機体が、一撃で地に沈む。 そして―― 俺の番だった。 「ま、待ってくれ! 俺は――」 斬撃。 視界が揺れる。 警告灯が点滅し、機体が傾ぐ。 「やめ――」 意識が闇に沈む。 ――――――――――――― 静寂が訪れた。 炎上する機体の残骸、瓦礫と化した戦場。 生き残りはいない。 静かに機体の刃を払う。 血のように赤く染まった光が、夜闇に沈む。 ……この戦場も、俺にとってはただの通過点。 復讐でもなければ、大義のためでもない。 俺はただ戦う。戦場がある限り、そこに立ち続ける。 時代はとうに変わり、俺の居場所も帰る場所もなくなった。 だが、それでいい。 俺が消えたことで、祖国は滅んだ。 俺が生きていたとしても、きっと変わらなかった。 ならば、俺はただ戦い続けることでしか、自分を許せない。 戦場を駆けることでしか、存在を示せない そして、それが、俺の在るべき姿なのである 続く… 資料を確認する https://ai-battler.com/battle/069be551-6055-46c2-969d-83a3cd7d873a 《 所有ACHIEVEMENT 》 [ レイヴン ]...NESTの"真実"と対面する 【 ORIGINAL Rank.21 】