ログイン

【Have to live/Not alive】クロワール

元DARPA(米国国防省,国防高等研究計画局)ポータル研究部門所属 小型機械化モジュール技術の専攻博士号を所持するフランス系アメリカ人女性 彼女はポータルという異界へ繋がる未知のエネルギーゲートを研究する部門に所属していた。 彼女がその技術が見込まれ部門に配属されたのは、ポータル内部への進入がある程度なされた頃であった。 その卓越したサイボーグ化技術を期待され、ポータル内部進入班の極地適応手術等を行っていた。 術式は成功し、クロワールの技術によってサイボーグ化した進入班たちは今まで進む事の出来なかった異界の奥地まで進み新しいサンプルを手に入れることができた。 そして終末は訪れた。 異界の奥地で手に入れたサンプルは人間をミュータント化させる能力を持った意思のある粘菌であった。粘菌は研究所の厳重な保管庫の中から脱出。研究所のポータル研究員をミュータント化させポータルを暴走させた。 暴走したポータルから異界の植生や化け物があふれ出し研究所は壊滅的な被害を受けた。 化け物は地上に溢れ、生き残った人間もミュータント化していった。問題の爆心地たる研究所は脱出することすら難儀した。 最初は生身で行動した。左腕がミュータントに切り裂かれ汚染された。生き残るためにはサイボーグ化が必要だった。幸いにも自動オペレーションシステムと機材は知見がたまっていた。手術は成功し左腕は機械化した。最初の腕はただの義手だった。 ミュータント共は日増しに進化するようで、どんどん強大になっていった。次は両足失い機械化した。次は目を。次は右腕を。肺を。消化器を。顔面を。心臓を。内臓のすべてを…… 気が付けば脳髄以外はすべて機械に置き換わり、軍事用に開発していた内蔵武器で戦うようになっていた。 研究仲間はとうの昔に全員死んだ。化け物になった親友はこの手で殺した。いつの間にか周りに人間はいなく、ここにあるのは冷たい機械の身体だけだった。 気が付くと知らないうちに背中から鎖と錨が生えていた。 並行世界同期型自己保存プロトコル『アンカー』。何が目的か自分を生かすためのプログラム。プログラムの癖からいって自分が作ったと思われるが、こんな超常のもの作れる環境も作った覚えもなかった。腕がもげても身体が半分になっても、無かったことになる。すさまじい生存戦略機。 だがこんなものを使って何を為せというのか。州は化け物で埋まってしまった。州への核攻撃も行われたが生き残った化け物がさらなる化け物になっただけだった。アンカーによって核爆発を凌いだ自分もいい加減化け物だ。 合衆国ももう終わりだろう。だが死ぬことも狂うことも出来なくなった自分は、なんとなし研究所の跡地に戻った。 そこにはポータルがあった。核爆発の影響だろうか不安定だったポータルは安定しているようだった。なぜかポータルの操作方法もわかる。生きることしか目的がなくなっていた彼女はポータルに飛び込むことにした。その先にある世界に新しい、生きる以外の目的が出来ることを祈って。何はともあれ自分は生きることしかできないのだから。 ########################### 【Have to live/Not alive】クロワールとは主人公……ではない 主人公たるクロワールは多次元世界に別に存在している。 主人公クロワールこそアンカーを開発し12の階乗世界にばら撒いた張本人である。 【Have to live/Not alive】クロワールはたまたまアンカーを配られた存在。親機から見た子機であり、親機の生存のための保険の一つである。その保険にタダ乗りできているので恩恵はあるのだが、そこには死の安らぎもない、狂って楽になる事もできない、あるのは永劫の闘争である。 子機クロワールはいつか親機クロワールに会うことはできるのか。それはここで語る事ではないだろう。