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終日 聖時

私は終日 聖時。 かつて終日 時季様の従者だった、白魔道士です。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 私は代々王族の従者の一族の三男として生まれた。 私は生まれた時から、魔力量がとても多く、その量は兄弟達はもちろん、一部の大人よりも多い量を持っていた。しかもコントロール技術も秀でており、早い話、一族一の天才といっても差し支えなかった。 そのように、大変祭り上げられて育てられた私は、齢5歳になった頃には大半の大人にもタイマンで勝てるようになっていた。 しかし、あの時の私は大変未熟で、荒れていてな。まったく修行という修行をしなかったのだ。あの頃は非常に自信過剰だったなぁ。 しかも周りからすれば、やたら強いのもタチが悪かっただろうな。 そのため小さい頃から、大人を凌ぐ程の力を持っていたのに、修行をしなかったり、言うことを聞かなかったりするうちに、どんどん人が離れていった。そうなってから、私はさらに荒れていった。 そんな日常を送り、今日ものんびり過ごしていると、後ろから不意に声をかけられた。 「やぁ」 「ッ!!」 非常に驚いた。だってこの時の私は... (ここの大半の大人には余裕で勝てるようになった、この俺が不意を...!) そう、もう大人くらいなら不意をつかれても簡単にあしらえるのに、そいつはいとも簡単に私に接近し、話しかけてきた。 「俺は時季。 何となーくシンパシーを感じてな、 というわけで、俺の友達になってくれないか?」 同い歳なのに「王族だから」と何をやってもチヤホヤされ、さらに何でも完璧にこなしてしまう時季様が嫌い、、、いや大嫌いだった。 なので、関わって来ようとしても無視したり、こっそり部屋に忍び込んで時季様の玩具を奪い取り、どんな反応をするのか想像してほくそ笑んだりもした。 挙句の果てには、お願いを聞いたフリをして時季様を危険な目に合わせたり、と大変失礼なことをたくさんしてしまっていた。 本当に今思うと申し訳ない...。 ...しかも今思い返してみると、時季様は私がこのようなことをしても私を怒っていたことは、決してなかったんだなと...改めて非常に心が広く、優しい人だったと分かってしまう...。 そんな日常が続いていたある時、私はまた時季様を「どう嵌めてやろうか...。」と城の中庭でブツブツ言いながら歩いていた。 「あんな奴は...うん、あぁすればいいんじゃないか...? いや!あっちがいいな(ニヤ)......!」 と迷案を思い付き、材料を取りに行こうと城の裏手にある倉庫に向かった。 この倉庫は立地が悪い所にあるため、非常に暗く、しかもほとんど誰も来ないため、小さい頃の私のちょっとした基地になっていた。 おまけに立地の関係上か、不良品だったり、壊れてしまった家具や玩具ばかりがしまわれていたため、小さい頃の私には来ない理由の方が無いくらい、心躍る場所だった。 なので今日も、イタズラをするための道具の材料を取ろうと倉庫を開けた瞬間、私の眼前に盗賊が現れ、私は誘拐されてしまった。 盗賊はまるで忍者のように、とても疾かった。一秒にも満たぬ時間で城の領地内から脱出し、さらに離れていく。 私はその時、自身に起こる様々な惨状を想像し、絶望した。 みっともなく、助けを乞いた。 ーーー「助けに来たぞ。」 初めは耳を疑った。次はそれを見た目を疑った。あんなにいけないことをしたのに、あんなに馬鹿にしてたのに、なんで助けてくれるんだ、と心から思った。 なぜ何も言わないのか、 なぜあんなことをしていたのに助けてくれたのか、 そしてなぜーーー そんなにすっきりした顔なのか、 わからなかった。 城に帰っている途中、 「お、お前ッ...。」 「ん?何さ。」 「な、なんで俺なんかを助けたんだよ!」 「はぁ?」 心底意味がわからない、という気持ちが分かる声が聞こえてきた。 「なんでって...  そりゃあ、お前さっき...。」 「誘拐されそうだったな!  でも、そうじゃないッ!  ...なんでお前を虐めてる、  もはやお前に対して迷惑なことを数え切れないくらいしてたような奴を、  なんで助けられるんだッ!  なんで何も言わないんだッ!  なんでそんなすっきりとしたような顔でいられるんだッ!」 わからない、なぜ助けたのか。 【終日家】はとても裕福だし、こんな俺みたいな奴は、いっそこの機会に切り捨てて、新たな奴を従者に雇った方がいいはず。 なとど、そんな感じに考えていた私に、 時季様は一言、 「助けを呼んでたからだ。」 ーーーその瞬間、私だけ、時が止まったような気がした。 「助けを呼んだいたから、助けた。  困った時はお互い様だろ?  だからだ。」 ーーー言葉は静かに、されどずっしりと私の中に入っていく。 「すっきりした顔なのは単純に誰かを救えて、嬉しかったんだろうな。」 と少し照れながらも、彼は話を続ける。 「今まで虐められたから、助けない?」 真剣な眼差しで、時季様はこちらを見ながら話を続ける。 「今まで迷惑をたーくさんかけられてたから、救わない?」 静かに、ただ一言一言を重く言い放つ。 「そんなものは、俺にとっては関係ない、とても些細なことだ。」 「助けを呼ばれていたのなら助ける。  ーーーただ、それだけだ。」 ーーーその全ての言葉は私に、重みを持って、 染み込んだ気がした。 結果として、私は誘拐されたのにも関わらずその日のうちに発見され、怪我も何一つない状態で時季様に保護された。代々従者をしてきた家系の跡継ぎの俺が、この体たらくで何か叱責されるかと思っていたが、親族には誘拐されていたことがそもそも認知されていなかった。どうやらわざわざ時季様が何の報告もしないでいてくれたらしい。 ...ホンットにここら辺は迷惑しかかけてないな...。申し訳ない。 それからというもの、私は時季様にイタズラをするのを止め、従者の修行を毎日真面目にこなすようになった。 元より天才といわれていたのもあってか、既存の魔法からオリジナル魔法まで作り出すことに成功したり、白魔道士ぽくはない、超人ともいえる身体能力を獲得したりと一気に一族代表並の力を得ることができた。 時季様とはどんな感じといわれると、あの出来事から時季様の事が気になった私は、時季様と絡むことが多くなった。以前は無視までしていたのに、今思い返すと都合がいい奴である。 その頃から共に切磋琢磨して修行したり、2人して悪ノリをして遊んだりと日に日に関わり合いも増えていった。 初対面時に頼まれた約束もーーーーーー ーーーーーーーーーーーーーーーーー それから私は時季様に付き従うようになった訳です。 改めて振り返ると... とんでもなくイヤな奴だな、俺。 また会った時に謝るようにしないとな。 待ってろよ、親友。 【親友】 https://ai-battler.com/battle/2768ee5d-8faf-4437-a098-9b257c02ed0c