歴史において語られぬ強者は数多くいれど、語るべき強者は限られる。 そのうちの一人、エリル・リーカーという英雄が歴史を大きく変えた事を知る人物は少ない、だからこそ語らねばならぬ、紡がねばならぬ。 これは…魔王の物語、そしてそれは昔々の物語。 私は元冒険者、20年程前に魔王討伐を成し遂げた勇者一行の仲間でもあった。 今は花屋をやっていて、昔の冒険譚に比べれば変わらぬ味気ない日々ではあるが、満足はしている。 私は山道を歩いていた、いつもの薬草を摘むために、しかし3里ほど離れた場所で大きな物音が聞こえて私は立ち止まる。 「‥‥‥!」 咄嗟に走り出していたのは冒険者だった頃の名残りか、はたまた単なる善意であったのかは分からない。私は山道を駆けた、木々を揺らし、地面を抉り、風を押し退けて私は山道を駆け抜けた。 大まかな場所は最初の時点で想像はついていた、恐らくここら辺のはずだが…… 「‥‥‥あれか…」 谷底に微かな輝きが見えた、見るに元々は装飾を施された立派な馬車であったのだろう。今では土埃にまみれ木屑と化した馬車へと私は谷底に飛び込んだ。 「この紋様と装飾……魔族のものか…」 血と湿った土の臭いが混ざって思わず顔を顰める、この状況で生きているものはまず居ないだろう。私は心の中で祈った、祈祷の礼儀など知らぬ拙い私ではあるが、今はただ心の中で祈った。 「ん……まさか…」 微かな気配、死体に紛れて分からなかった非常に小さな命を私の直感が掴み取る。私は瓦礫を押し退けて馬車を破壊する。それは、誰かが生きていると確信したからだ。 やけに凝った装飾品を投げ捨て、扉を開け放つ、すると中には魔族の少年……それも高貴な身分と一目で分かる衣服を身に纏う少年であった。 「赤い角……前にぶち殺した魔王の親族か…」 私は迷った、魔族であれど相手は少年、それに今にも死にそうな程に衰弱している。しかし、魔王はダメだ、魔王の関係者というだけで私の判断を鈍らせるには十分であった。 魔王、今では新たな魔王が国を統治していると聞いたが……魔王との戦いで私の仲間は3人殺された、1人は昔からの大の親友であった。彼女の笑顔を奪った魔王を私は許せないでいた。だからこそ、魔王に関わる者を許せなかった。 「今は……そんな事はどうでもいい」 噛み締めるように、私は自分自身に言い聞かせた。今はただ、目先の命を救う事が最優先である。 少年は夢を見ていた、いや……むしろこれは悪夢であった。 見知らぬ女性が目の前で殺されていく、記憶になんか残っていない。しかし、自分には分かる、あの方はきっと自分の…… 「母様……ッ!?」 手を伸ばす、知らない天井。不意に気配を感じて横を見入る、そこには見知らぬ人間がいた。 「ふふっ…悪いね、あんたの母さんじゃなくて」 「あ、いえ……その…」 恥ずかしくて布団に顔をうずめた、頬が熱い、耳はきっと赤く染まり切っている事だろう。 「私はエリル、エリル・リーカーだ。しがない花屋の主人さ」 「あっ、えと…ユティー……ユティーハート・センバルと申します。」 少年は人間の表情が変わった事を察した。 「センバル……やはり魔王の…」 俯く人間、しかしその瞳の奥に隠れた殺意を少年は見逃さない。体が強張る、心臓が嫌な音を立てて逃げろと告げてくる。 「んっ?、あー……わるい悪い、怖がらせる気はなかったんだ」 人間はそう言って頭を掻いた、殺意は消えていた。今のところは…… 「ところで、あんたは何でこんな辺鄙な山奥なんかに来たのさ?、どう見てもあんたみたいな地位のもんが来る場所ではないだろ?」 「あ、えと…その……」 少年の目が泳ぐ、訳ありだろうか……? 「たぶん、父に……捨てられたんだと…思います。」 「魔王に?、またどうして?」 「父は…、僕に愛情なんか無かったので……」 少年は悲壮な表情を人間から反らす、俯くように、涙を堪えるように…… 「‥‥‥皆までは聞かない、しかし確認はしておきたい、魔王に殺されかけた事は?」 「無いです、父と対面した事すら数えるばかりですし……」 「お前は魔王の息子だ?、何故捨てられるんだ?」 「弟が……弟がいるからではないかと、僕なんかより立派な魔族ですから…」 薄々感じてはいた、この少年は魔力が一切無いという事を……だから、あの馬車を発見した時に最初は存在すら分からなかった……人間でもそうは居ない、それが魔族ともなると聞いた事すら無い、非常に特殊な例である。 「魔力が無いから捨てられた…か…、魔族にとって魔力量と魔法の技量こそが全て……まったく、馬鹿げた話だよ」 「仕方ないんです、僕が弱いから…使えないから……要らないから………捨てられたんです。」 少年は俯く、涙が堪え切れずに震える拳に垂れ落ちてきた。その様子を黙って見ていた人間はこう呟いた。 「それこそ馬鹿げた話さ!、魔法が全て?、魔力が無いから価値がない?、馬鹿にするのも大概にしな!」 体が強張る、少年は思わず退いた。すると人間は、優しく微笑んでこうも言った。 「なら、己の肉体を鍛え上げればいい!、鍛えて!鍛えて!、己の力のみで武芸を為せば良いんだ!」 ニカッ、と笑う女性……少年の瞳が少し光沢を帯びた。 「それに、あんたの目の前には世界最高の冒険者がいる!、これで弱いようじゃ、話にならないよ!」 「ぼ、僕……こんな僕でも強くなれるでしょうか!」 「強く成れるかじゃない、強く成りたいかだ!、お前はどうしたい?」 少年の表情が少し緩んだ、そしてこう叫んだ。 「強く!、僕は強くなりたいですッ!!」 「ふっ、良い覚悟だ、いいね!」 魔族と人間、5000年以上も続く戦争の終結は、そう遠くはない……… 月日は流れた、数十年の歳月の果てに私は今まさに死に際に立たされていた。 大きく、立派に成長した青年を横目に私は寝台に倒れ伏していた。 「ふっ、こんな最後も悪くないもんだ……」 「エリー、なに呑気なこと言ってんだ」 「つれないねユティー、何事も雰囲気が大事なのさ」 「そういうもんか?」 「昔はもう少し可愛げがあったのにねぇ、老体を労ろうという気持ちはないのかい」 「だってエリー、毎回そう言って死なないじゃん」 「しっ、余計な事は言わなくていいんだよ」 老婆はそう言って笑う、そして溜息をつくと静かにこう呟いていく。 「まぁ聞きな……最後にあんたに言っておきたい事がある…」 「それを毎度聞かされる身にもなってくれよ」 「いいから聞きな、私の単なる昔話さ」 老婆は語る、それは昔々の物語…… 飛び交う怒号、戦場を駆けるは熱気と死臭、剣と魔法、悲鳴と雄叫びが濃密に混ざり合う苛烈な死に場所。 その地獄を駆ける者が一人、エリル・リーカーは駆け抜ける。人類最高峰の武才、姿ある武神、英雄たる彼女は戦場を駆け抜ける。迫り来る敵を薙ぎ払い、叩き潰し、捻じ伏せる。 その側を駆ける一陣の風、当代の勇者マーサ・リベイル、彼女は親友と共に駆ける、魔王を討つべくエリルと戦場を駆け抜ける。 「ちょっとエリー!、一人で先行しすぎ!、見失うかと思ったじゃない!」 「悪いなマリー!、さっき本体の左翼部隊が壊滅させられたと聞いた!、恐らく魔王、もしくは魔王に匹敵する程の敵だ!、私が行かずに誰が止められるだろうか!」 「ちょっ!?、この体力馬鹿っ!、待ちなさ〜いッ!」 エリルは勇者を振り切り、尚も加速する。戦況はあまり芳しくはない、敵は生まれながらに一騎当千の強者達、対するこちらは傭兵と民兵を中心に帝国正騎士団で固めた即席の軍団だ、相手が悪すぎる。 傭兵を中心とした左翼部隊が壊滅させられた現在、残るこちらの主力は勇者を中核とした正騎士団2000人と自由に動ける私ぐらいだ、民兵では足止めにすらならない。 可能ならば敵の主力を幾つか潰しておきたい、それに魔王が消息を眩ませたという報せも何処か腑に落ちない。 被害の報告があった地点はもう直ぐだ、今はただ戦いに集中しよう…! 「貴殿……ほお、貴殿が来られたか、てっきり私めは勇者殿が来られるかと思っておりましたが、いやはや驚きです。」 デカい、片手に携えた"両手剣"を軽々と構えた魔族。名は知らない、ただ分かる事は一つ、強いッ!! ___ギンッ…!! 剣と拳がぶつかり、火花が飛び散る。ぶつかった風圧で地面が揺らぐ。次に備えねば…! 剣と拳が交差し、幾つかが衝突する。手応えは共に互角、強者との対面、両者それぞれが歓喜し丸出しの殺意を笑顔で剥き出す。 「いい!、いいね!、マリーと戦ってる気分だ!」 「勇者殿と並べていただき、私め至極恐悦でございます。その僅かながらの返礼として穏やか最期を必ずや約束致しましょう。」 「要らんッ!?、そんなもの!、それより魔王はどこだ!」 「はて、魔王様の居所でございますか、たしか……」 ___スパッ…! 「貴殿に教える筋合いはございません、故にどうかお許しを」 人類を遥かに凌駕する剣圧の雨、魔族でありながら武の頂に立つ存在にエリルは奮える。心が躍る、身体が躍起立つ、拳を硬く握り締めた。 地面が切り裂かれる、しかし遅い。私はここにいるぞ!、死角から魔族の顔面を蹴り上げる。 魔族との純粋な武芸の鍔迫り合い、いつ頃ぶりだろうか、エリルは魔法が分からない、かろうじて魔力を探知する事だけで精一杯である。 しかし、魔法に対する耐性は勇者を超える。"魔族殺し"エリル・リーカーが英雄たる所以にして、果てなき魔族どもを殺し続ける事ができた理由である。生まれながらの魔法潰し、標準的な魔族にとっての天敵である。 だが、今回は違う……魔力を帯びていない鈍の剣、油断すれば致命傷になりうる魔族の常識を逸脱したイレギュラー。技量と一瞬の判断のみが物言う殺伐とした世界が目の前に広がっていた。 エリルの瞳が規則的な軌道を描いて剣先を見定める、瞬間……嵐のような剣と拳の連撃が繰り広げられる。一歩も引かない両者の一撃、弾けては繰り出す死への賛歌、勝負は互角。 「貴殿!、素晴らしい身のこなし!、貴殿こそが人類の頂であったか!」 「そりゃ!、どうも!」 重たい剣撃、防ぐだけで精一杯である。魔族と人間の差は大きい、特に肉体的優位性の格差は顕著である。ややエリルが押されている。 ___ズバッ…! エリルの片腕を掠めた一撃、出血が止まらない、彼女は瞬間的に身を退いた。 「貴殿は非常に素晴らしかった!、しかしこの戦いもそろそろ終幕と致しましょう。」 迫り来る影、エリルは一歩また一歩と下がる。状況は絶望的、しかし____ッ!? 「私の親友に!、何やってんのッ!!」 「グオ……ッ!!?」 背後からの一撃、純白の刃が魔族の胸を貫いた。驚愕の表情、血走る瞳が勇者に振り替える。 「ゆ…勇者ゃ…ッ!?、勇者ャアアアーーーッッッ!!!」 粗雑に振り回される両手剣、それを瞬時にエリルが叩き落とし、トドメの一撃を繰り出した。 「ハァ__ッ!!」 魔族の頭蓋を穿つ一撃、絶叫と共に崩れ落ちる魔族を尻目に二人は合流を果たしたのだ。 「もう!、ようやく追い付いたと思ったらなんで負けそうになってるのよ!?」 「悪いわるい、ちょっとしくじった」 空元気を見せるエリルを無視して勇者は彼女の負傷した腕を掴み取る、途端に痛みが走って顔を歪める。 「痛テテテテテテ…ッッ!!?、ちょっ!、マリーさん!?、マリーさんってば!?」 「静かにして!、いい年して騒がない!」 勇者の掌が傷口を撫でる、光を帯びて輝き出した傷口が急速に塞がり血は溶け落ちたように消え失せた。 "浄化の勇者"マーサ・リベイルの加護の力である。それは不潔と魔を祓う権能『対象の身を清める反面、有効範囲内の魔力を掻き乱す』その力の影響で勇者マリーは魔法の才覚は愚か、魔力すら持たずに生まれた特異な存在である。 しかし、それは魔族の得意とする魔力探知すらも掻き乱す対魔法特化の加護である。その存在を察知する事はこの世界において魔王でさえ不可能である。 マリーの存在は周囲の魔法を掻き乱し打ち消す、又は軽減させる程の影響を持ち、それは魔法を主軸とした魔族に対する脅威。初代を除く歴代勇者の中でも屈指の実力者である。 「魔族殺しが魔族に殺されたら一生のお笑い草だよ〜!」 「はいはい、気をつけますよーだ」 「ところでエリー、これかr……」 ___バァン…ッ!! 勇者の肉体が空を回る、血を撒き散らしながら地面へと落下する。 「なっ!?」 振り替えると魔族がいた、問いただす必要はない。膨大な魔力が戦場を駆け巡り、支配する。間違いない、魔王その者である。 「貴公よ、汝は我に従うか」 「はっ……??」 冷や汗が背を覆う、混乱がエリルの脳を揺らす。恐らく断れば待つのは死である、分かっている…分かっていたが…… 「あんたの下に付けって?、私はごめんだよ」 ___ズバァン……ッ!!! 魔王から放たれた魔法が地を焼き払い、エリルに迫ってくる。しかし、それを防ぐ者の存在がいた。立ち塞がる勇者と魔法が拮抗し、勇者がそれを弾き飛ばす。酷い火傷を負った勇者だが、浄化の力で何度でも立ち上がる。 「ハァハァハァ、これが魔王…….」 しかし、消耗が激しかった。傷や苦痛を和らげる事は出来ても疲労までは癒す事はできない、浄化の加護と言っても万能ではない。 「貴公ら、何故に我に抗う?」 「おいマリー!、ここは一旦退くぞ!」 「エリー…、そんな事できるわけ……」 勇者は疲労した表情でエリルを見入る、その瞬間に魔王から放出された巨大な魔法の荒波が戦場を駆け巡る。 「まずい!、早く逃げるぞ!?」 「いいえ…、ここは私が…!」 エリルの制止を振り切り、勇者は駆け出す。とっくに限界を越えた肉体を擦り減らしながら迫り来る魔法へと剣を突き立てる。 切先から魔法を包み込む浄化の光、しかし圧倒的なまでの質量の波に勇者は呑まれていった。魔法の勢いは止まらない、迫り来る脅威にエリルは身構えた。 微かな音を感じた、突き抜ける風が魔法を掻き乱し、魔法を打ち消していく。勇者はまだ諦めてはいなかった、魔法に呑まれながらも魔法に抗い、魔法を消し飛ばしたのだ。 吹き荒れる爆風、魔法が消し飛んだ反動で周囲の地面を抉り、生命を吹き荒らす。エリルは耐える、爆風に抗うように、勇者に手を伸ばすように爆風に抗った。 風が止んだ、へたり込んだエリルの眼前、勇者の腑は貫かれていた。魔王の一撃が勇者を貫いていた。エリルは叫んだ! 「マリィィーッッ!!?」 「え…りぃ」 エリルは駆け出す、友を救うべく駆け出した。伸ばす手が間に合わない事を悟りながらも必死に手を伸ばして駆け出した。 「貴公、我に取るに足らず」 魔王は無造作に勇者を投げ捨てる、力無き肉体がエリルに迫り来る、受け止めた時には声はもう届かなかった。 「マリー!、ねぇ!マリー!?」 「貴公、我を満足させられるか?、それとも同じ虫ケラ風情か?」 「‥‥‥‥サ ナイ」 声が震える、怒りで震えている、憎しみが溢れてくる。 「魔王オォーーーッッッ!!!!!」 何も分からない、今はもう憎悪で前が見えない、一心不乱に拳を叩きつけている事だけは分かった。 魔王がなんだ、実力差がなんだ、今は本当にどうでも良かった、ほんとうに……ほんとに、全てがどうでも良かった。 憎しみが世界を廻す、私を廻す、全てを廻す。 鬼気迫る、痛みは感じない、何度も殴りつける度に魔王は驚愕の表情を覗かせる。私は…わたしは魔法では止まらない、決して止まらない。 「マオォーーッ!!!」 何度殴りつけたかは分からない顔面を殴りつける。押し倒し、悲鳴すら聞こえずにひたすら殴る、相手が今どうなってるかなんて知らずに殴り続ける。憎い、今は憎い、相手が憎い、私が憎い、全てが憎い! 降りしきる雨の中、動かない親友を抱きしめたまま私は立っていた。私は呆然と、放心した様子で天を、空をただ見上げていた。 "魔王殺し"エリル・リーカー、その名は帝国のみならず人間や魔族、種族や場所を問わず大陸中を馳せ巡る。 それが、エリルの最後に参加した戦争であり、後の"魔王殺し"の伝承に繋がる。伝承は姿や形を変えて伝説となり、いつしかエリルの存在を口にする者はいなくなった。その事を知る存在は、この世でただ一人。 しかし、それはもう少し後の話である。 「さぁて、辛気臭い話はこれで終わりさ」 エリルは全てを言い切った様子で深い、それは深い溜息をついた。 「私は魔族は好きじゃない、魔王は大嫌いだ!、それは今も変わらない……でもね、」 エリルは、老けて皺だらけになった顔をユティーへと向けて、こう呟いた。 「お前は私にとって特別だ、魔族も悪くはないと思えるぐらいには私の人生においてお前の存在は大きかった……」 エリルは再び深く、それは深い溜息をつく。 「お前はこれから自由だ、魔族の国に帰るなり、人間の世界で生きていこうとお前の勝手さ。だがな、私はお前を信じてる、お前ならきっと戦争を止められる。私が止められなかった、救えなかった何かを、お前ならきっとな……」 「エリー……俺、いや僕は国に帰るよ、そして魔王になって戦争を止めてみせる、きっとエリーが望んだ世界を実現してみせるよ!」 「馬鹿だね!、単なる老婆の戯言として聞き流せばいい事を………まぁ、しかし…それは少し見てみたかったかもしれないね」 エリルは皺だらけの顔で微笑む、亡き親友が好きだった花に縋りつくように始めた花屋。今では寂れた店奥の一角、しかしそこには確かな思い出が残っていた。 私は、憎しみで世界を救ってきた、両親を殺されたあの瞬間、村を燃やされたあの日から、親友と逃げ出したあの記憶に囚われたまま生きてきた。 しかし今、目の前にいる魔族は違う、憎しみではない、悪意でもない。きっと私とは違う、もっと良い方法で世界を救える筈だから…… 私は微笑む、悔い無く笑う、憎しみではない感情が私の心を満たしてくれた。 "さよなら、ユティー……" 新たな魔王の誕生、それは大陸中に轟いた。 魔法に囚われない新たな価値観、憎しみに左右されない誠に馬鹿げた理想論、新魔王による王政がこの先の未来を大きく変えた。 "魔王殺し"エリル・リーカー 改めて、 "魔王の友"エリル・リーカーは笑う、ひたすらに笑う、失われた日々を覆すほどの馬鹿げた魔王との日々を思い返して笑った。 これは…魔王の物語、そしてこれは昔々の物語。 今はただ、静かに眠る英雄の物語。 https://ai-battler.com/character/5823e02a-71a6-4043-bbbb-b41278678204